大手生保は28日までに責任ある機関 投資家としての規範を定めた「スチュワードシップコード」の行動方針 を公表した。投資先企業との対話を重視し、中長期的な視点から資本効 率など企業価値の向上を促すのが狙いだ。日本での投資家と企業との関 係に風穴を開けることにつながると期待する声もある。

第一生命保険は、株主総会での議案ごとの議決権行使結果を公表す る。判断基準は、1)監査役への新株予約権の付与などは基本的に反対 する、2)取締役の選任や報酬額改定、第三者割り当て増資などは企業 との対話などを通じて判断するなど。今年4-6月に開催された総会で は国内上場1750社のうち124社の会社提案議案に反対した。

日本生命保険は、ROE(株主資本利益率)や配当性向が一定水準 以下だったり、黒字なのに無配の企業があれば説明を求めた上で議案の 賛否を判断する。具体的な判断事例を公表し、判断の過程や理由を説明 し投資家としての考え方を企業側に理解してもらう方針だ。明治安田生 命保険や住友生命保険も議決権行使の判断基準などを設けた。

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科の北川哲雄教授は「こ うした形で日本を代表する長期投資家が積極的な姿勢を打ち出し、それ が外部評価にさらされることには大きな意義がある」と評価する。

市場の判断材料にも

長期的な主要株主となって友好的に企業価値向上を目指すファンド を運用するあすかアセットマネジメントの光定洋介チーフファンドマネ ージャーは、「議決権に反対しない安定株主だと思っていた生保が受け 入れを表明したことは、投資先企業の資本効率改善や成長模索に潜在的 圧力をかけることにつながる」とみている。

東京証券取引所によると、26年3月末時点で生保が保有する上場株 式は市場全体の3.7%に当たる16兆6000億円。最大手の日本生命は全上 場企業の約2割に相当する648社で10位以内の大株主になっている。

スチュワードシップコード導入はアベノミクスの一環で、投資環境 の改善に向けたコーポレートガバナンス改革の一つ。コードの受け入れ は強制ではなく、公表した方針を守らなくても罰則はないが、守らない 場合はその理由を説明する必要がある。

保険会社や運用会社など機関投資家の行動は、その個人契約者など がチェックできる立場にはある。しかし、元金融庁長官で西村あさひ法 律事務所の五味廣文顧問はコード導入で「株式市場そのものにも審判さ れることになる」と指摘する。筆頭株主の投資先企業に対する姿勢が分 かるためで、その他投資家の投資判断の基準にもなり得るとみている。

企業価値向上

株式の発行企業もその投資家も持続的な企業価値の向上は共通目標 だ。ただ、日本では生保などの機関投資家はこれまで株式持ち合いや営 業活動の一環として政策的に保有する「物言わぬ投資家」だった。その 一方で短期的に利益の極大化を狙う「物言う株主(アクティビスト)」 は警戒してきた。

五味氏は「日本では固有の株式保有形態とアクティビストのトラウ マで株主によるガバナンスがどの程度、資本市場に効いているのか不透 明だった」と指摘する。政策保有などのためではなく、中長期的に企業 価値を高めていくという視点になれば、コードを導入した生保などの投 資先企業への対応は「格段に進歩する」とみている。

青山学院の北川教授は、政府主導の側面はあるが、コード導入によ り「つい2年前には100年経っても変わらない」と思っていた日本のコ ーポレートガバナンスの変革が進み、「一気に世界の最先端に躍り出る 可能性がある」と期待する。ただ、そのためには成果としての企業価値 向上の推移を「検証していくことが重要だ」とみている。

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