JPX日経に4:4:2の妙、開発者が求めた理念と実用性

資本効率を重視する新指数としてこ としデビューした「JPX日経インデックス400」が順調に存在感を高 めている。指数の生みの親である田中大介氏(40)が使われるインデッ クス作りに最も心を砕いた結果、日本企業の行動にも影響を与える指標 が完成した。

東京証券取引所・情報サービス部商品企画運用グループの田中グル ープ長は1997年に当時の債券部に入社。2004年に情報サービス部へ異動 となり、4年前からインデックス作りに携わってきた。TOPIXレバ レッジ指数など5、6ほどの指数を手掛けてきた中でも、JPX日 経400は白紙からスタートしたとあって、苦労が多かったという。

JPX日経400は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が パッシブ運用のインデックスの一つとして選定。田中氏によると、上場 投資信託(ETF)4本や公募投信約20本などに採用が広がっている。 指数算出から半年あまりの時間での採用ペースとして、田中氏は「簡単 にある話ではない」と語る。

JPX日経400の構想が具体化してきたのは12年夏ごろ。アベノミ クス前で長期低迷していた日本株の課題を東証の営業部隊が海外投資家 にヒアリングした際、「欧米に比べて資本効率性への意識が若干低いの ではないかという声が多かった」と田中氏は振り返る。

4:4:2

指数作成に当たっては、「日本の会社の中にも資本効率を意識して いる会社があることをアピールできればと作り始めた」と田中氏。組み 入れ銘柄を選ぶ際の基本として、「資本効率を意識しつつ、どうしたら 実務的に使えてコンセプト的にも整合性のある組み合わせになるか」を 考慮した。

JPX日経400では定量的な総合スコアを算出する際、3年平均の 株主資本利益率(ROE)と3年累積営業利益に各40%、選定基準日時 点の時価総額に20%のウエートを配分。さらに「独立した社外取締役の 選任(2人以上)」など定性的要素も勘案、組み入れ銘柄を決定する。

銘柄選びのベースとなる定量項目では、資本効率と本業での稼ぎに それぞれ中期的な側面を考慮し、株式市場の評価も加えた。ROEの割 合が高いと入れ替えが激しくなる面もあり、「理念的な部分と実務的な 部分のバランスをみながら1500以上のシミュレーションを行い、4対4 対2という割合がちょうど良さそうだというところで落ち着いた」と田 中氏は述べた。

ただ、基本コンセプトである資本効率性を表すためにROEを高い 順に並べてしまうと銘柄が安定せず、「ことしと去年の顔ぶれが全然違 ってしまう」欠点があった。毎年の入れ替えが激しければ、連動して運 用するポートフォリオの入れ替えに伴うコストもかさみ、「それが連動 運用のコストに直結し、使われないという悪循環になってしまう」と田 中氏は指摘する。

足元の市場の評価も勘案

ROEを改善するには、利益率を向上させるなどのほか、借入金を 増やして財務レバレッジを高める方法もある。田中氏は「単にレバレッ ジをかければ良いみたいな話もなくはないので、営業利益を入れてある のは本業で稼いでいるところをみる」ためと説明する。また財務数値は 過去の実績であることから、「何らかの形で財務数値に表れない市場の 評価を反映させる観点で時価総額を入れてある」と述べた。

一方、指数を構成する銘柄数が400になったことについて、「シミ ュレーションした結果、300に近いと座席が少ない分、入れ替えの影響 が大きくなる。一方で500は入れ替えの影響は下がるが、銘柄が多くて 選んでいる感じがない」と、田中氏は述べる。

JPX日経400の登場後、指数への採用・非採用を問わず企業側に も資本効率を重視した取り組みが目立っている。積極的な自社株買いや 配当など新たな資本政策を打ち出したアマダ、17年3月期までにROE の20%超への引き上げを目指すミネベアなどだ。田中氏は「この指数が 資本効率に目を向けるきっかけになれば良い」と言う。

実務性ゆえの批判

もっともJPX日経400は投資家に使われる実務的な指数作りを目 指したが故に、それが逆に一部で批判を招く原因ともなっている。 CLSAの日本担当ストラテジスト、ニコラス・スミス氏は、ROEベ ースの指数にもかかわらず、企業規模を重視するあまりROEの低い企 業が入る可能性があるほか、データ期間も約7年のビジネスサイクルに 比べて3年と短いことから株価が割高な時に指数に入りやすいと分析す る。

ROEと営業利益について、3年平均や3年累計という「3年」に こだわった理由として田中氏は、「中期的なスパンでみることで、会社 が自力として持っているものをうまく拾いたいという発想」を挙げる。 スミス氏が主張するように期間が長過ぎると、「実際の構造変化があっ たときの反映が遅くなる」と反論する。

初の銘柄入れ替え

数々のバランスに配慮したこうした設計が試された機会の一つが、 8月7日に発表された初の銘柄入れ替えだ。入れ替えは31銘柄で、パナ ソニックやカシオ計算機などが新規採用となり、ソニーや東京エレクト ロンなどは除外となった。実施日は29日。

新規採用で選ばれた中には、3年平均ROEがマイナスのパナソニ クのほか、カシオやリコーなど、CLSAのスミス氏などが指摘するよ うなROEが相対的に低い企業も入った。それについて田中氏は、 「ROEだけで見ているインデックスではない。市場からも評価され、 運用実務に配慮したというパッケージをみてほしい」と話していた。

初の銘柄入れ替えでは、入れ替え前後の各構成銘柄にかかる時価総 額ウエートのプラス(またはマイナス)変化分の合計である回転率 は6.2%となった。田中氏によると、「回転率は公表時点で平均7%と 説明していた。TOPIXの2%に対し、一般に財務数値を使って入れ 替えを行うインデックスでは6.2%は大きくない」という。

JPX日経400の年初来騰落率は27日時点でマイナス0.7%。下落は しているものの、TOPIXのマイナス1.3%、日経平均株価のマイナ ス4.6%をアウトパフォームしている。「使ってもらうにはパフォーマ ンスが良いに越したことはないため、良かった」と、田中氏は述べた。 JPX日経400の27日終値は前日比1.34ポイント(0.01%)安の1 万1686.28。

JPX日経400は東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの各市 場から市場流動性などによるスクリーニングでまず1000銘柄に絞り、定 量的な総合スコアを算出。さらに「独立した社外取締役の選任(2人以 上)」や「IFRSの採用・採用予定」など定性的要素も踏まえ、スコ アの高い順に最終的に400銘柄を選定する。

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