「神」からサムスン帝国継承の次期皇帝-低姿勢で手腕未知数

韓国サムスン電子の李健熙(イ・ゴ ンヒ)会長が自社工場を視察しようとすると、その準備は国家元首並み になる。

汚れた自家用車が李会長の目に触れないよう、社員は工場裏に駐車 するよう命じられ、誰かが持ち込んだキムチの臭いを消すため洗面所に はミントが置かれる。警備担当者は李会長の乗るリムジンにあいさつす るため道路脇に勢ぞろいし、長いレッドカーペットが敷かれる。さら に、窓から李会長を見下ろしてはならないと社員はくぎを刺されるとい った具合だ。

首都ソウルに近い水原にあるサムスンのビデオカメラ工場に勤務し たことのあるソニーから移籍の日本人エンジニア小黒正樹氏は、文字通 り会長を見下ろすことは許されなかったと語る。サムスンは「宗教」で あり、「李会長は神」なのだという。

スマートフォン・テレビ生産で世界最大手のサムスンは近く、その リーダーシップをもっと神格性の薄い人物に託すことになりそうだ。5 月に心臓発作に見舞われた72歳の李会長は以後、入院を続けており、そ の後継者と目されているのが李会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨ ン)副会長だ。これまで目立たない姿勢を貫いてきた46歳の李副会長が 正式なインタビューに応じた記録はない。

李副会長の人柄は今のサムスンに適したものかもしれない。謙虚で 親しみやすく、3カ国語に堪能。サムスンがハードウエアからソフトウ エアやコンテンツ、世界のパートナーとの協力重視に軸足を移すことに こうした性格が寄与するかもしれない。スマホ市場で激しく競う米アッ プルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏との関係を築いたのも李 副会長だ。この関係がメディアプレーヤー「iPod」などのアップル 製品向けの部品をサムスン電子が供給する契約に役立った。

父親への敬意

だが「ソニーvsサムスン」という著書もある張世進・シンガポー ル国立大学教授は、李副会長の経営手腕は未知数だと指摘する。祖父が サムスンの企業群を創業し、父親がそれを韓国最大の企業グループに育 て上げたが、李副会長には社外から見える業績はほとんどない。

張教授は「李副会長に何ができるのか本当に分からない。誰もが常 に次の皇帝は李副会長だと認識しており、李副会長はこれまで自ら立証 する必要がなかった」と話す。

サムスングループは李副会長のインタビューに応じていない。事情 に詳しい関係者が私的な問題だとして匿名を条件に述べたところによれ ば、李副会長は韓国の慣習に従い父親に敬意を表して目立つことを避け ている。

ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、李会長の純資産は8 月26日時点で116億ドル(約1兆2100億円)と、韓国一の富豪だ。李副 会長の純資産は44億ドル。その大半がサムスングループ傘下企業の持ち 分だ。

原題:Samsung Low-Profile Heir Poised to Succeed Father Seen as ‘God’(抜粋)

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