高齢者マネー動かすNISA、子供版登場でも親世代には壁

株価が低迷を続けた「失われた20 年」とともに生きてきた世代が、株式投資に向かうには何が必要か- -。

今年からスタートした少額投資非課税制度(NISA)を利用する 若者の出足が鈍い。金融庁は来年度から、20歳未満を対象とした子供版 NISAを創設したり、一般向けの非課税枠を拡大したりする要望を財 務省に提出するが、投資家のすそ野を広げるには課題も多い。

背景の一つがバブル崩壊の経験だ。日経平均株価は1989年末に終値 ベースで史上最高値の3万8915円87銭を付けた後、約20年後の2009年3 月10日には7054円98銭とバブル後最安値まで下落した。現在の30歳 代、40歳代はこの時代を目の当たりにしてきた。

ニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は、日本の投資家は「株を持 っていれば多少変動しても長期的には必ずもうかるという確信」が持て ない話す。政府の立場からは、株式など「インフレに強い資産を持って いてもらわないと息の長い成長はできない」が、現実には個人資産の動 きが不足していると指摘する。

投資に回せる資産も年配者より少ない。総務省の家計調査で世代間 の富の分布をみると、2人以上の世帯のうち約5割を占める世帯主が60 歳以上の世帯が、貯蓄の約7割を保有する。金融広報中央委員会の調査 よると、2人以上世帯で約3分の1は金融資産を保有していない。

「結構な金額」

三井住友アセットマネジメントの浜崎優シニアストラテジストは、 NISAの年間非課税枠100万円を月に平均すると8万円程度になる が、これも「結構な金額」と述べ、こうした規模の投資をできる貯蓄形 成層は「あまりいない」とみる。「基本的にはリスクの多い商品には投 資したくないというのが根底にある」と話す。ことしの株式市場で TOPIXは年間で51%上昇した昨年末の水準をまだ回復できていな い。

金融庁が6月23日に公表した調査結果によると、3月末時点の NISAの総口座数は650万3951件で、総買い付け額は1兆34億円。投 資総額のうち40歳未満は全体の9%弱にとどまり、60歳以上は65%を占 める。

事情に詳しい関係者によると、金融庁は家族が子供名義の口座で年 間80万円までの投資を可能にする子供版NISA制度の創設や、従来の 一般向けNISAの年間非課税枠を現行の100万円から120万円に拡大す ることを、来年度税制改正要望や予算要求に盛り込む。政府は例年、翌 年度の税制改正案や予算案を年末に決定する。

現行制度では、年間元本100万円までの株式や投信を新規購入した 場合、値上がり益や配当が5年間課税されない。口座は2014年から23年 までの10年間に開設でき、同期間に非課税投資枠を最大5つ、計500万 円の枠を持つことが可能だ。5年の非課税期間終了時に評価額で100万 円までを翌年の非課税投資枠に繰り越し、1つの非課税投資枠を最長10 年まで継続させることもできる。

500万円

財務省主税局の住沢整税制第一課長によると、証券取引をしている 投資家のうち、証券保有額が500万円以下の投資家が全体の約4分の3 を占める。住沢氏は、株式投資に親しみのなかった人に導入を促す制度 だと考えると、累積500万円は「十分な枠になるのではないか」と話 す。NISA始動により15年3月期には約260億円の税収減を見込んで いるという。

日本証券業協会の小柳雅彦常務執行役政策本部長は、若者の社会保 障負担が上の世代よりも増えることに触れ、「若い世代は投資する期間 も長いので、早く少額で積み立てでも投資をしていって、今後の豊かな 生活のためにも資産形成をしていただきたい」と言う。子供版NISA 制度の創設は世代間の資産シフトを手伝うとみる。

長期計画

日本の預貯金を「世界最大の眠れる資源」と評するのは独立系投資 信託会社のさわかみ投信の沢上篤人会長。株式投資に個人の資金が向か ないと、市場は安定性を欠き、現在売買代金の約3分の2を占める外国 人投資家の影響下にあり続ける、という。

7月のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで同氏は、日本 の個人投資家はもっと主体性を持つべきだと話し、「個人の預貯金マネ ーが来ないなら、誰が日本企業を応援するのか」と述べた。

日本証券業協会は、NISA制度の恒久化を求めつつ、会社員の給 与から毎月一定額を積み立て投資できるような「ワークプレイス NISA」を企業側にも勧めている。それでも若者が株式市場に投資す るようになるまで意識改革の先は長いと小柳氏はみる。

小柳氏は、「NISAを入り口とした金融リテラシーの普及が必 要」だが、金融教育に関する努力はすぐ実を結ぶわけではなく、10年 や20年は「ずっと続けていくもの」と話す。

東京証券取引所は1995年から学生向けの金融経済教育プログラムを 開催している。今年8月4日には、約140人の親子が東証の夏休み経済 教室に参加し、子供たちは200万円の仮想資金を使って株式投資を体験 した。

14歳の二木翔太郎君はニュースのヘッドラインが正面のスクリーン を流れるのを見つめる。円安と消費税増税、米国経済堅調という材料か ら判断して3つの銘柄に投資。1時間半で資産は約6倍の1170万円に達 し、テーブルではトップの成績となった。父親が株に投資している二木 君は、「やってみると面白かった」と言い、大人になったら本当の株も 買ってみたいと話した。

同時に「今日はゲームだったから良かった」といい、「下がったら 株をやめると思う。お金がなくなって怖いから」とも話していた。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE