【M&A潮流】ソフトバンク、買収断念で次の狙いに百家争鳴

ソフトバンクは米TモバイルUS買 収を断念したが、これは国内で最も買収に積極的な経営者、孫正義氏の 次のターゲットはどこかという議論の始まりに過ぎない。

ソフトバンク傘下のスプリントは、TモバイルUSの買収に米規制 当局が難色を示す中、今月6日までに協議を打ち切った。直後の8日に 孫社長はアナリスト向け電話会議で、引き続き事業拡大チャンスに前向 きだと語り、さらに18日には4000億円の社債発行計画を発表。資金使途 には将来への投資も含まれる。

市場関係者は次のターゲットとしてネット企業のほか、音楽やゲー ムなどコンテンツ関連企業などを予想する。ブルームバーグの集計デー タによると、ソフトバンクが過去5年間で買収に投じた総額は509億ド ル(5.2兆円)で、これに次ぐ新日鉄住金の約2倍の規模で国内最大。

ジャパンインベストのアナリスト、ニール・ジュギンス氏は「孫氏 にとって、通信よりもコンテンツに取り組むのが合理的だ」と話す。日 米にまたがる大勢の端末契約者の関心を引くものが必要だと言う。最新 の決算資料によると、ソフトバンクの契約数はワイモバイルを含めて 約4650万、スプリントは約5450万で、合計で1億を超える。

ソフトバンクの広報担当、小寺裕恵氏は同社の買収ターゲットにつ いてコメントを控えた。

米ヤフーの可能性も

アトランティス・インベストメント・リサーチのエドウィン・マー ナー氏は、孫氏には日本は手狭だと指摘。「彼は世界を考えている」と 言い、米ヤフーを買収する可能性もあると述べた。

孫社長は20日、都内の本社で記者団からTモバイル買収断念後の次 の一手について聞かれ「頭を冷やして考えます」と答えた。筋肉が徐々 に動かなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の啓発キャンペー ンとして氷水を頭からかぶった後のコメント。氷水をかぶる様子などの 動画をネット上で公開し、次の候補者3人を指名するのがルール。孫氏 は富士康科技集団(フォックスコン)の郭台銘会長から指名された。

通信分野を拡大したい孫社長の願望に対しては、衛星テレビ米国2 位のディッシュ・ネットワークが選択肢になる可能性があると、米調査 会社アベリアンリサーチの創立者、チャールズ・ゴルビン氏はみてい る。有料テレビの買収により家庭用ブロードバンド分野を拡大させ、光 ファイバーネットワーク「U-verse」を運営するAT&Tや、 「Fios」を持つベライゾン・コミュニケーションズと張り合えると している。

選択肢は「たくさんある」

SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストは、ソフトバンクの次 の狙いとして、ゲーム以外のエンターテインメント、メディアなど選択 肢は「たくさんある」と言う。同社は「ITを総合的にやりたい」会社 であり、「ゲームでないものの方が新しい展開で望ましい」と述べた。

ソフトバンクは昨年、フィンランドのモバイルゲーム会社、スーパ ーセルを買収し、子会社のガンホー・オンライン・エンターテイメント とともに「コンテンツ分野のけん引役」と位置付けている。

ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントによると、韓国ネ イバーが親会社のスマートフォン向けチャットアプリを運営する LINEも選択肢としている。

バークレイズ証券の米島慶一アナリストは、Tモバイルが買収でき なかったことで「ネットワークを整え販売攻勢をかける元のプランに戻 った」と話す。その買収に費やす予定だった資金が手元に残ることで財 務的に「ちょっと余裕が出て買収はやりやすくなった」という。「ネッ ト企業もメディアもあり得ると思う」と述べた。

ソフトバンクの財務部長、後藤芳光氏は昨年11月のブルームバー グ・ニュースのインタビューで、ゲーム、動画、音楽のコンテンツ分野 での買収に関心を寄せていた。仏メディア企業ビベンディに対し、傘下 のユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)を85億ドルで買収 する提案をしたことも明らかになっている

岩井コスモ証券の川崎朝映アナリストは「しばらくはスプリントの 立て直しでアメリカ事業を改善」するとみる一方、「期間をおいて買収 を提案できる機会があれば、再びTモバイル買収関連の話が出てくる可 能性」もあると言う。アメリカでの事業を成長させるために、ゲームや 電子商取引での「有望企業」を選択肢として挙げた。

アリババと組む可能性

SBIアセットマネジメントの取締役運用本部長の木暮康明氏は、 コンテンツ強化のために、傘下の中国最大の電子商取引会社アリババ・ グループ・ホールディングと組む可能性を指摘する。「中国とアメリカ の方が、日本とアメリカよりは似ているところが逆にある」ため、米国 戦略に利用できるという。

米ヤフー、米ディッシュ、中国アリババの米国広報担当はソフトバ ンクの買収についてコメントを避けた。国内のLINEの広報担当にコ メントを電話で求めたが、返事が得られていない。

ソフトバンク広報担当の長田真理子氏は、18日に発表した4000億円 の社債発行の目的について「資金の用途は借入金と社債の返済、将来へ の投資資金だ」とし、「現時点で特定の買収を目的としたものではな い」と説明した。

--取材協力:Rin Ichino、宮沢祐介.

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