フォークやナイフの原料鉱石「異常な急騰」、日本企業も打撃-禁輸で

フォークやナイフなど日常生活でも 身近なステンレス製品。このステンレスを生産する原料となるニッケル 鉱石の価格が急騰している。引き金は最大産出国インドネシア政府によ る鉱石の輸出禁止。需給ひっ迫を招き、価格は最高値を付けた。原料費 負担増から、国内ニッケルメーカーの業績を直撃する事態も出てきた。

「4-6月の鉱石価格では世界中のニッケルメーカーがやっていけ ない水準だ」。ステンレス鋼の主原料となるフェロニッケル生産で世界 3位の大平洋金属の12日の決算会見。菅井一之・取締役常務執行役員は 鉱石価格のあまりの高騰ぶりを嘆いた。同社は輸入したニッケル鉱石を 製錬し、フェロニッケルを生産している。

同社は当初、今期(2015年3月期)の営業損益を17億円の黒字と見 込んでいたが、14億円の赤字へと下方修正した。主因はニッケル鉱石の 高騰。これまで積み増していた在庫の鉱石使用などで、4-6月は増益 を果たしたが、5月以降に鉱石価格が急騰したとして通期の下方修正を 迫られた。菅井氏は「このような経験は初めて。異常なケース」と話し た。

インドネシアは自国産業を育成する狙いで未加工の鉱石輸出を1月 から禁じた。日本はそれまでニッケル鉱石輸入の約半分をインドネシア に依存。同鉱石の産出国は限られており、フィリピン、ニューカレドニ アを加えた3カ国からしか輸入実績はない。禁輸によりフィリピンやニ ューカレドニアからの調達を増やして対応。ところが中国もフィリピン からの調達を増やしたため、同国産鉱石の価格上昇を招いた。

フェロニッケル国内3位の日本冶金工業によると、フィリピンのニ ッケル鉱石の価格は禁輸前の1月には1ウェット・メトリックトン (WMT)当たり30ドル台だったが、6月には140ドル弱にまで急騰。 足元でも100ドル弱と高水準にある。

鉱石価格は3倍弱

日本冶金工業で原料部門を担当する長谷川正常務執行役員は「さす がに100ドルを超えるとどこも採算は苦しい。買うという判断はできな い」と語る。ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格(3カ月) の年初からの上昇率は3割超。これに対してフィリピン産のニッケル鉱 石の価格は3倍弱に高騰している。

フェロニッケル国内2位の住友金属鉱山も禁輸後、フィリピンやニ ューカレドニアからのニッケル鉱石の調達を増やした。広報担当の青野 祥紀氏は「鉱石の調達価格の上昇でフェロニッケル事業の損益への影響 は避けられない」と話す。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の黒坂 慶樹シニア・アナリストは、鉱石価格の上昇や品位低下による影響など で今期に30億円程度の利益押し下げ要因につながると試算する。

フェロニッケルに影響

ただ、住友鉱はフェロニッケルとは別の種類の電気ニッケルが主 力。電気ニッケルは鉱石ではなく、ニッケルマットという中間製品を輸 入して製錬する。そのため電気ニッケルでは禁輸の影響を受けない。鉱 石価格の上昇は、フェロニッケルが主力の大平洋金の業績により大きな 影響をもたらす。

中国企業などはインドネシアに製錬所を建設することで、禁輸政策 の影響を乗り越えようとしている。しかし、製錬所建設には巨額の資金 も必要。大平洋金の菅井取締役は製錬所建設の可能性について「選択肢 としては考えているが、今のところ机上には上がっていない」と語る。

一方、鉱石価格については「中国メーカーが今の価格で輸入して採 算性を持って中国内で生産できるのかは疑問」として「価格は天井を打 ったと判断しており、今後は一定のレベルに落ち着いていくことを期待 している」。日本冶金の長谷川常務も「今の価格では中国メーカーでも 採算は合わない。高値での買いは一服していく」とみる。

インドネシアでは10月にジョコ・ウィドド氏が次期大統領に就任す る。独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) の山本耕次ジャカルタ事務所副所長は「新政権後も現在の禁輸政策は継 承される可能性が高い」との見方を示す。価格上昇や品質の低下などか らニッケル鉱石の安定調達に支障を来しかねないとして、日本鉱業協会 は世界貿易機関(WTO)への提訴を4月に日本政府に要請したが、解 決の糸口は見つかっていない。

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