日銀が14年度成長率を下方修正へ、4回連続-追加緩和の公算も

日本銀行は2014年度の実質国内総生 産(GDP)見通しを4回連続で下方修正する可能性が浮上している。 期待していた輸出の回復が遅れていることで、消費税率引き上げ後の個 人消費の落ち込みをカバーできず、4-6月の実質成長率が大幅に落ち 込んだことが背景にある。関係者への取材で明らかになった。

日銀の現在の14年度実質成長率の見通し(政策委員の中央値)は1 月に1.5%から1.4%へ、4月に1.1%へ、7月に1.0%に下方修正され た。関係者によると、10月31日に新たに策定する展望リポートで4度目 の下方修正となる可能性がある。

実質成長率見通しがさらに下方修正されれば、日銀が2%の物価目 標の実現に向けて重視している需給ギャップの面から物価を押し上げる 力が弱まるため、黒田日銀が追加緩和に追い込まれる可能性が高まって くると市場関係者はみている。

モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストは13日の リポートで、14年度実質成長率の日銀見通し(1.0%)を達成するため には、残り3四半期で平均前期比年率4.4%程度の高成長が必要で、 「もはや非現実的」と指摘。再度の下方修正は不可避だろうとした上 で、「10月緩和の可能性を過小評価すべきでない」としている。

黒田東彦総裁は8日の会見で、「中長期的に物価上昇を決定してい く大きな要因としては、需給ギャップの動きと人々の予想物価上昇率の 動きの2つが非常に重要であるということは、いろいろな研究で示され ている」と指摘。「2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現する という政策を考える上でも、この2つに注目している」と述べた。

日銀のシナリオに逆風

日銀は需給ギャップ改善と期待インフレ率上昇を背景に、15年度を 中心とする時期に物価安定目標の2%に達するとしている。三菱UFJ モルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミスト は、成長率見通しが一段と下方修正されれば、「日銀のシナリオに逆風 だ」と語る。

六車氏はさらに、「日銀は展望レポートでゼロ%台に成長率の見通 しを下方修正することとなろう。そうなると、物価見通しの根拠の1つ である『需給ギャップ改善』は滞る」と指摘。「その時点でコアCPI が鈍化したままで再加速の気配がみられていなければ、日銀は追加緩和 を検討せざるを得なくなってくる」という。

黒田総裁は8日の会見で、「私どもの見通しでは潜在成長率を上回 る成長が14年度、15年度、16年度と続く見通しであり、需給ギャップは 引き続き改善し、プラス幅をさらに拡大していくとみている」と指摘。 また、「物価に重大な影響を与える要因に動きがあり、目標達成にリス クが生じることがあれば、当然、金融政策の調整は行う」と述べた。

「潜在成長率下回る可能性あまりない」

展望リポートで14年度の成長率を一段と下方修正し、0.5%前後と みられている潜在成長率近辺まで成長率が下がった場合、ちゅうちょな く調整を行うのか、という記者の質問に対し、黒田総裁は「0.5%前 後、あるいはそれ以下と言われている現在の潜在成長率を下回る可能性 はあまりないと思う」と言い切った。

4-6月のGDPの発表を受けてブルームバーグ・ニュースが13日 から14日にかけて実施したエコノミスト調査では、14年度の実質成長率 見通しは平均で0.4%増まで低下した。

日銀が重視している需給ギャップ改善と期待インフレ率上昇のうち 前者に疑問符がつき始めているが、後者も決して盤石ではない。黒田総 裁は「予想物価上昇率は全体として上昇している」と繰り返している が、日銀内では期待インフレ率はほとんど動いていないとの声もある。

関係者によると、コアCPIの伸び率が目先1%台前半まで鈍化す ることで、期待インフレ率はむしろ低下するのではないかと懸念する向 きもある。

異なる2つのチャート

7月14、15日に開かれた金融政策決定会合の議事要旨によると、あ る委員は「各種アンケート調査における家計や市場参加者の予想物価上 昇率をみると、分布の上方シフトがみられる一方、平均値は明確には上 昇していない」と指摘した。

市場のインフレ予想について、黒田総裁と木内登英審議委員が最近 の講演で示したチャートが市場の一部で話題となっている。総裁が引用 した物価連動国債から導かれるBEI(ブレーク・イーブン・インフレ 率)は上昇しているように見えるが、木内委員が示した新物価連動債の BEIとインフレ・スワップ・レートはほぼ横ばいにとどまっている。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは総裁のチャート について「過去に物価連動国債の発行が中断されていたこともあり、旧 物価連動国債の残存年限は5年を下回っているほか、市場が極端に薄い こともあって需給で価格形成が行われる傾向が強く、期待インフレ率と は異なるというのが市場での平均的な見方だ」と指摘。

一方で、木内委員のチャートを見る限り、「過去1年間の市場で計 測される期待インフレ率はおおむね横ばい圏内であったことが分かる。 木内委員の添付チャートの方が適切に思える」という。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは成 長率の大幅な落ち込みで「年度後半以降の物価上昇加速のためのハード ルは一層切り上がった」と指摘。シティグループ証券の村嶋帰一チーフ エコノミストは「市場では追加緩和はもう見込めないとの見方も増えて きたが、むしろその可能性は高まったように思われる」としている。

--取材協力:James Mayger.

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