2つの悲劇に見舞われた国の壮大な野望、実現の鍵は投資

株式市場で富を築いたマレーシア富 豪のチュア・マ・ユ氏が運営するCMYキャピタルは2008年、48階建て のビル「セントレジス・クアラルンプール」を建設することで複数のパ ートナー企業と合意した。同氏は当時、このビルの将来性について壮大 な野望を抱いていた。

同ビルはマレーシア初となる6つ星ホテルの客室と、住居部分を擁 する予定だった。ところが、2年が経過しても、チュア氏はまだ着工に 向けた書類手続きにてこずっていた。ブルームバーグ・マーケッツ誌9 月号が報じている。

チュア氏(61)はそんな時、イドリス・ジャラ氏(55)と会った。 ジャラ氏は、マレーシアのアジア有数の富裕国入りを目指すナジブ首相 (61)の政策を中心となって遂行する立場にある人物だ。同氏はセント レジスを観光業での支出拡大の一つの起爆剤とみなしていると語った。 観光はナジブ首相が優遇税制や認可手続き迅速化の対象としている12分 野のうちの1つ。ジャラ氏は書類手続きがスムーズに進むよう手助け し、チュア氏はその2週間後に認可を取得した。

首相府の業績管理・実施局(PEMANDU)の経済変革プログラ ムを統括するジャラ氏は「投資は経済成長につながる。投資がなければ 新規雇用も成長も生まれない」と語った。

変革の必要性

ナジブ政権は同経済プログラムに着手した10年以降、既に幾つかの 目標を達成しているが、それ以外は実現には程遠い状況だ。今年1-3 月(第1四半期)には国内総生産(GDP)が前年同期比で6.2%増加 し、ナジブ首相が20年にかけて達成を望む年間平均成長率6%を上回っ た。1人当たりの国民総所得(GNI)は昨年、1万60ドル(約103万 円)に増加し初めて1万ドルを超えた。

ただ、世界銀行が高所得と定義する最新の水準1万2746ドルと、首 相が20年までに到達を目指す1万5000ドルには届いていない。

3月に消息を絶ったマレーシア航空370便をめぐり政府の対応が混 乱状態に陥っていたとの見方も変革の必要性を高める一因となってい る。そして7月半ば、同社を2つ目の悲劇が襲う。乗客283人と乗員15 人を乗せたマレーシア航空17便がウクライナで墜落、乗客・乗員全員が 死亡した。

ナジブ首相は今月8日発表した声明で、4カ月間で2つの悲劇に見 舞われたマレーシア航空について、事業の包括的な見直しに向け厳しい 取り組みが必要だと述べた。マレーシア航空の株式の69.4%を保有する マレーシアの政府系投資会社カザナ・ナショナルは同社を非上場企業と するため未保有株を13億8000万リンギ(約440億円)で取得することを 提案。多額の債務を抱える同社への信頼を取り戻すため、株式の上場廃 止を計画している。計画の詳細については8月末に発表する予定だと、 同首相は述べた。

徹底的な見直し

「ナショナルキャリア(国を代表する航空会社)の刷新が必要だと 考えている。事業の徹底的な見直しを通じてのみ、マレーシア航空は真 に力強く持続可能なナショナルキャリアとなり得る」とナジブ首相は語 った。

現在、ジャラ氏はナジブ首相の数十の経済改革構想について、その 進捗(しんちょく)状況を示すために信号の「赤・青・黄」を用いて管 理している。13年は小売売上高については目標を達成したものの、固形 廃棄物管理は「赤」の状態だった。

同氏は、そうした改革に向けた対策を明確にし、その軌道を維持す ることが自らの責務だと説明した。

ジャラ氏の後押しで認可手続きが進んだセントレジスはクアラルン プールの空に銀色の姿を見せ始めており、15年11月にオープンの予定 だ。チュア氏は「多くの障害が取り除かれ、投資が容易になっている」 と語った。

原題:Malaysia Booms as Najib Beats Growth Goal Luring New Investment(抜粋)

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