円全面高、ウクライナや中東の地政学的リスクを警戒

東京外国為替市場では円が全面高。 ウクライナ危機や中東情勢をめぐる地政学的リスクの高まりを警戒し、 円を買う動きが強まった。

ユーロ・円相場は1ユーロ=136円ちょうどを割り込み、一時135 円73銭と昨年11月21日以来の水準まで円高が進行。日本時間午前10時半 にオバマ米大統領がイラクでの空爆承認を発表したことがきっかけだっ た。午後3時31分現在は135円91銭前後。ドル・円相場も1ドル=102円 台前半から一時101円60銭と7月24日以来の水準まで円高に振れ、同時 刻現在は101円64銭前後となっている。

三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチの内 田稔チーフアナリストは、「もともとユーロが少し安くなっていて、ユ ーロ・円の136円割れというところでクロス円を中心に円高が加速して いたちょうどそのタイミングで、米国がイラク空爆にゴーサインを出し たということで一気に地政学リスクの株安・円高材料としてのしかかっ てきた」と説明した。

日本銀行はこの日、金融政策の据え置きを決めた一方、輸出と生産 の判断を下方修正した。朝方発表された8月の経常収支は5カ月ぶりに 赤字となり、赤字額は市場予想を上回った。黒田東彦総裁は午後3時半 から会見を行う。

内田氏は、黒田総裁の会見について、「7月の中間評価も一応4月 の展望レポートを追認するような評価で終わっているので、1カ月でそ れほど大きくトーンが変わることはないと思う」と指摘。もっとも、追 加緩和に対する慎重姿勢をあらためて示せば、「地合いが地合いだけ に、株安・円高に一瞬振れる可能性は警戒しておく必要がある」と語っ た。

ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.33ドル台半ばを中心にもみ合い。 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は7日、ウクライナなどでの紛争 が景気回復を損ねるリスクが増しているとの認識を示した。ウクライナ 問題をめぐる米欧とロシアの対立が深刻化する中、ユーロは今週1.3337 ドルと昨年11月8日以来の安値を付けた。

地政学リスク

オバマ米大統領は米国時間7日、イラクのイスラム過激派に対する 空爆を承認し、イラク市民への食料と飲料の投下のために米軍機を派遣 したと発表した。同大統領は武装組織「イスラム国」がクルド人自治区 の主要都市であるアルビルに侵攻すれば、過激派を攻撃すると述べた。 アルビルには米国の外交当局者が駐在している。

また、パレスチナ自治区ガザでの3日間の停戦失効の前後に、イス ラエル南部へのロケット弾攻撃が続いた。アルアラビーヤはハマスが停 戦延長を拒否したと報じた。

地政学リスクを警戒し、8日の東京株式相場は大幅下落。日経平均 株価は約2カ月ぶりに1万5000円を割り込み、前日比454円安で引け た。また、逃避需要の高まりから米10年債利回りはアジア時間に2.4% を割り込んで、昨年6月以来の水準まで低下。外国為替市場では、円や ドル、スイス・フランなどの買いが強まった。

JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジスト は、「リスクオフの典型的なパターンでドルも円も買われているが、日 米金利差が縮小する中で円の方がドルよりも強くなり、ドル・円は下が っている」と説明。そうした中で、日銀が鉱工業生産や輸出の評価を下 方修正しながらも、全体的な景気、物価に対する見方を変えなければ、 「円ショート(売り持ち)の巻き戻しが一段と加速する可能性は十分あ る」と話していた。

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