ドラギ総裁:地政学的リスク増した、ユーロ圏への影響見極める

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総 裁は7日、ウクライナなどでの紛争がユーロ圏の景気回復を損ねるリス クは増しているとの認識を示した。

総裁は政策決定後の記者会見で「地政学的リスクの高まりと新興市 場国・地域および国際金融市場の動向が、経済環境に悪影響を与える可 能性がある」と述べた。ECBはこの日のフランクフルトでの会合で、 政策金利を据え置いた。総裁は「中長期的なインフレ期待を確実にしっ かりと安定させることを強く決意している」と言明した。

イタリアがリセッション(景気後退)に逆戻りし米欧とロシアの間 の対立が深刻化する中で、ユーロ圏経済への逆風は強まっている。総裁 はこれまでに、インフレ見通しを悪化させるような経済への外的ショッ クは大規模な資産購入の引き金となり得ると述べている。

会見では「インフレに関するわれわれの中期的見通しに変化が生じ た場合は、資産担保証券(ABS)購入や量的緩和(QE)などの非伝 統的な政策手段を活用する決意において政策委員会は全会一致だ」と述 べた。「地政学的リスクと為替相場の動向が及ぼし得る影響をECBは 注視する」と表明した。

ECBはこの日、短期金利の調節手段である短期買いオペ(売り戻 し条件付き債券買いオペ=レポ)の最低応札金利を0.15%で据え置くこ とを決めた。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト調査 で57人全員が予想していた通りだった。ECBは中銀預金金利もマイナ ス0.1%で維持、限界貸出金利も0.4%に据え置いた。

ドラギ総裁はまた、6月の政策パッケージ発表後に市場ファンダメ ンタルズはユーロ安方向に傾いたとして、ユーロ圏と米国の金融政策は 乖離(かいり)していく流れが「長期にわたる」と述べた。

地政学的リスク

ロシアは同日、米国や欧州などからのさまざまな食料品の輸入禁止 を発表した。対ロ制裁を発動または支持している国への報復措置で、対 象には米国と欧州連合(EU)のほかカナダ、オーストラリア、ノルウ ェーも含まれる。

ドラギ総裁は「今世界を見回すと、地政学的リスクが世界中で高ま ったことには疑いの余地がない。ロシア・ウクライナ危機があり、イラ ク、ガザ、シリア、リビアもある」と語り、「中でもウクライナ・ロシ ア情勢などは、ユーロ圏に対する影響が世界の他の地域に対するものよ り大きいだろう」と指摘した。

その上で、ユーロ圏とロシア・ウクライナ問題の関連性は一見した ところは限定的とみられるとし、「危機の初期段階で影響を評価するの は難しい」と付け加えた。

総裁はまた、最近の経済指標は期待外れで、「弱く脆弱(ぜいじゃ く)でまだら模様」の回復を示唆していると指摘。「ここ2、3カ月の データから兆候を読み取るとすれば、それは成長の勢いの減速だ」と述 べた。ただし、ユーロ圏経済はまだら模様ながらも、緩やかな回復の軌 道から外れてはいないとの認識も示した。

ABS購入への準備

ドラギ総裁は来月開始予定の目的を絞った長期リファイナンスオペ (TLTRO)に言及。銀行が最大8500億ユーロ(約116兆円)を借り 入れるとの試算もあり、実体経済への与信拡大につながるはずだと述べ た。

総裁はまた、ABSの購入につながるようなプログラムの開発を進 めているとし、近くそのためのコンサルタントを採用すると述べた。 「この分野で行動するという想定の下に作業を進めている」と語った。

ダンスケ銀行のチーフアナリスト、イェンス・ペーター・ソエレン セン氏やマーケット・セキュリティーズのチーフエコノミスト、クリス トフ・バロード氏は、総裁が会見で景気の弱さや地政学上のリスクを認 識する発言をしたわりには、全体的にはやや期待外れの内容だったとの 見方を示した。

原題:Draghi Sees Heightened Conflict Risks to Euro-Area Recovery (2)(抜粋) Draghi’s Dovishness Falls Short of Expectations, Analysts Say

--取材協力:Zoe Schneeweiss、Catherine Bosley、Alexander Kell、Angela Cullen、Nicholas Comfort、V. Ramakrishnan、Stefan Riecher、Jennifer Ryan、Emma Charlton、Tom Kohn、Deborah L Hyde、Jillian Ward.

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