孫ソフトバンク社長、米市場で苦い教訓-米社買収協議終了

ソフトバンク傘下の米携帯電話会社 スプリントが、TモバイルUS買収協議を打ち切ったことは、買収によ って会社を大きくしてきた孫正義社長にとって、苦い教訓となりそう だ。協議打ち切りの報道を受け、株価は下落した。

協議打ち切りは事情に詳しい関係者1人が匿名で明らかにした。関 係者によると、米携帯3位のスプリントによる同4位のTモバイル統合 で見込まれるプラス効果よりも、規制当局からの承認獲得をめぐる懸念 が強いとし、協議打ち切りの判断を下した。

ソフトバンクは2013年7月にスプリントを約1兆8000億円で買収、 米通信市場に参入した。しかし、上位のライバル企業、ベライゾン・コ ミュニケーションズやAT&Tと競争するには企業規模を拡大する必要 があると判断。孫社長は規模が拡大できれば、価格を引き下げ、通信品 質を向上させると、米側にメリットを訴えてきた。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「孫社長のア メリカでの戦略が頓挫する」と指摘。「スプリントだけでいけるのか」 と疑問を呈した上で、「次の戦略を出さないと株価は下がる」とし、早 急に米市場戦略を示す必要があると述べた。ソフトバンクの広報担当、 マシュー・ニコルソン氏はコメントを避けた。

ソフトバンク株は協議打ち切りが伝えられた6日、一時約3カ月ぶ りの下落率となる4.8%安まで下落した後、3.5%安の6972円で取引を終 了。7日も一時、1.7%安まで売られた。

てこ入れ必要なスプリント

孫社長は6月の株主総会で、米国市場について、人口も国内総生産 (GDP)も伸びており、「挑戦したい」と述べた。米国の通信速度が 遅いことや割高な料金実態を説明し、「競争することが一番の解決策」 と話した。

しかし米司法省や連邦通信委員会(FCC)など規制当局は、ソフ トバンクが買収した同3位のスプリントに続いてTモバイルを傘下に収 めれば、米国の大手携帯電話事業者は4社から3社に減り、競争が損な われるとみており、FCCのウィーラー委員長は6日、「全米で4社の 携帯電話サービス会社は米消費者にとって好ましい」とのコメントを電 子メールで発表。「スプリントはこれから強力な競争への取り組みに注 力する機会を得る」と指摘した。

スプリントが7月30日に発表した4-6月期決算によると売上高が 約87億9000万ドルとアナリストの予想を上回ったものの、同期間に契約 者数は24万5000人減少している。SMBC日興証券の菊池悟アナリスト は、ソフトバンクの課題は米市場の「てこ入れ」とした上で、今回の協 議終了によって、「戦略や方向性が変わるかもしれない」と話した。

CEO交代

ソフトバンクは6日、子会社の米携帯電話卸売会社ブライトスター の創業者のマルセロ・クラウレ氏がスプリントの最高経営責任者 (CEO)に就任すると発表した。クラウレ氏は同日の株主総会で、コ ストについて「大規模に」見直すとした上で、ネットワークの改善を続 けなければならないと話した。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真CEOは協議打ち 切りとなったことについて「致命的な失敗ではない」と述べるととも に、「孫社長はスプリントの再建に専念するだろう」と指摘。あまり拡 大を急がず、地に足を付けた形で取り組むのがよいと述べた。

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