【クレジット市場】野村系など買収資金ファンドが攻勢、調達を活発化

金融危機で減少していたプライベ ートエクイティ(PE)ファンドによる企業買収件数が少なくとも2002 年以降で最高水準まで回復する中、野村ホールディングス系などの買収 資金ファンドが調達を活発化させている。買収案件への銀行融資を補完 し、劣後ローンなどで10%強の利回りを目指している。

日本銀行によると、銀行の貸出約定平均金利(長・短期含む)は6 月で0.905%。一方、投資家から資金を集めPEファンドによる企業買 収案件に劣後ローンや優先株などで投融資する野村ICGは、投資利回 りが8-12%と高い。同社は総額で400億-500億円を調達するほか、東 京海上日動傘下の東京海上メザニンも同300億円以上の資金を集める。

昨年以降、パナソニックのヘルスケア事業売却やソニーのパソコン 事業VAIO売却、NECのビッグローブ売却など電機業界を中心に非 中核部門分離による事業再編が相次いでいる。これに伴い今年上半期の PEファンドによる国内M&Aは47件と、半期ベースとしてブルームバ ーグ・データが遡れる02年以降で最高。買収資金を供与するファンドと して、野村ICGや東京海上メザニンが昨年末に相次ぎ発足した。

PEファンドのインテグラルの佐山展生パートナーは、金融危機直 後は買収金額が低下していたため、ファンドの出資以外に銀行融資だけ でも買収資金を調達できたと指摘。現在は景気回復に伴い、買収金額が 対EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)比で平均 約10倍まで上がっているため、「銀行のローンだけで賄えない時に劣後 ローンや優先株などが必要」になってきているという。

メザニンファンド

野村ICGや東京海上メザニンが投融資する劣後ローンや優先株は メザニン(中二階)ファイナンスと呼ばれる。返済順位が低い分、リス クは高くなるが、通常の銀行融資よりも高い投資リターンが得られる。 財務省も経済財政諮問会議で企業の買収や海外展開の資金提供を増やす ために、その活用を推進している。

野村ICGのファンドには、野村HDと合弁パートナー英ICGが 計200億円を拠出済みで、残る200億-300億円を投資家から集める。野 村HDは従来、子会社を通じて買収資金のアレンジ中心に取り組んでき たが、英社と提携し「第三者のお金も集まればよりオポチュニティも拡 大していく」と、野村ICGの船山浩一代表取締役は語る。

また、東京海上メザニンも親会社の東京海上日動などから250億円 のコミットメントを受けており、50億円以上の追加募集を予定。米カー ライルによるSBIモーゲージの買収資金の一部として優先株50億円を 引き受ける。

大和総研の菅野泰夫シニアエコノミストは、現在のカネ余りを背景 に「スプレッドが取れるもの、もしくは期待リターンの高いもの」に対 する機関投資家のニーズが高まっていると指摘。メザニンファンドなど を通じて資金が流入しており、昨年からPEファンドの動きが活発にな っていると語り、この市場環境は「もう1、2年は続き、それに連れて メザニンが拡大していく」との見方を示した。

銀行は苦戦

企業買収増加を背景に、PEファンドの設立件数と調達金額は13 年、それぞれ12件と3201億円(日本バイアウト研究所調べ)となってお り、08年のリーマンショック後で最高を記録した。

PEファンドに対して、銀行はローンを供与するが、競争が激化し ている。新生銀行の牧角司執行役員は、企業買収のための融資では「メ ガバンクとの金利のスプレッド競争はきわめて厳しい」と指摘。LBO (買収先企業の資産を担保にした融資)関連残高は落ちてきていると語 った。

一方、同じく買収資金を提供するメザニンファンドはスプレッドの 低下はあまりなく、東京海上メザニンの山藤憲幸代表取締役は、金利は 「8%から10%」程度だと明かした。ファンドは投資家にリターンを返 すことを求められており、値下げ競争にならないことを理由として挙げ た。

大和総研の菅野氏は、メザニン投資をする上での注意点として、最 近買収のレバレッジが上がっているためリスクも上昇していることなど を挙げた。劣後債などは全額償還されないリスクもあり、償還を前提と するクレジット投資家は注意が必要だと述べた。

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