GPIFの新資産構成に51兆円共済が追随、国内債減・日本株

世界最大の年金基金、年金積立金管 理運用独立行政法人(GPIF)による資産構成比率の見直しには、公 務員や大学関係者らが加入する約51兆円の共済年金が追随し、国内株式 市場へのインパクトはより大きなものになると市場関係者はみている。

厚生年金と国民年金の積立金126.6兆円を抱えるGPIFは、国内 債券を減らして日本株式などリスク資産を増やす方向で新たな資産構成 を検討中だ。他の公的年金は来年10月にGPIFと運用を一元化し、利 回り目標やリスク許容度などを共有することが法律で決まっている。 GPIFと共済年金は資産構成を独自に決めているが、一元化に向けて 共通の「モデルポートフォリオ」を作成する方針だ。

国家公務員共済組合連合会(KKR)と地方公務員共済組合連合 会、日本私立学校振興・共済事業団の主要3共済の運用資産は3月末時 点で合計約30.4兆円。このほか、地方自治体の共済年金が合計で約21兆 円に達する。

公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で 座長を務めた伊藤隆敏政策研究大学院大学教授は、GPIFが資産構成 の見直しを今秋に前倒しするため、3共済と共同で策定するモデルポー トフォリオは有名無実化すると予想。GPIFの新資産構成が「事実上 のモデルポートフォリオにもなる」とし、3共済は時間と労力を考慮す れば「GPIFを見習うしかない」とみる。

ブルームバーグ・ニュースが5月に実施した市場調査(中央値)で は、GPIFが国内債の目標値を現在の60%から40%に下げ、国内株 は12%から20%に増やすと回答。外債は14%、外株は17%だった。 GPIFと3共済が計約157兆円の運用資産をこの目標値に移行させる 場合、国内債を26.1兆円減らし、日本株を6.5兆円増やす必要がある。

日本株にインパクト

クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、3共 済の運用一元化に伴う資産構成の変更も含めると「日本株へのインパク トは思ったより大きくなる」と指摘。しかも、地方自治体の小規模年金 も加えた共済年金が日本株比率を平均10%程度から20%に引き上げれ ば、5兆円前後の買い需要が生まれると試算した。

安倍晋三内閣と日銀の黒田東彦総裁が日本経済の活性化を目指す 中、GPIFは金利上昇で評価損を被る恐れのある国内債の比率引き下 げと収益向上を求める圧力に直面。昨年6月には資産構成比率を2006年 の法人設立後、初めて変更した。政府の有識者会議は昨年11月、国内債 偏重の見直しやリスク資産の拡大検討などを求める提言をまとめた。

厚労省が6月公表した5年に1度の年金財政検証を受け、安倍内閣 はGPIFによる資産構成見直しの前倒しを要請した。現在の基本ポー トフォリオは国内債の目標値が60%、国内株は12%、外債11%、外 株12%、短期資産が5%。3月末時点では国内債が55.43%、国内株 は16.47%、外債は11.06%、外株は15.59%だった。

新資産構成は秋までに公表

GPIFが資産構成を変えるには、国内債の満期償還分の再投資抑 制や市場での売却、国内株や外貨建て資産の買い増しなどの手段があ る。国債市場や株式市場は、GPIFの移行ペースに注目している。

4月に就任した米沢康博委員長は先月9日のインタビューで、新た な資産構成は「まだ何も決まっていない」とした上で、国内債が「30 -50%という水準には違和感はない」と発言。見直し結果は「秋までに 公表できる見通しだ」と話した。

GPIFが新たな資産構成を市場関係者が予想する国内債40%、日 本株20%とした場合、3月末時点から国内債を約19.5兆円減らし、日本 株は約4.5兆円増やす必要が生じる。TOPIXは4月11日に付けた年 初来安値から、先月31日の約半年ぶり高値まで16%上昇。GPIFから の資金流入に先回りした買いが膨らんでいる。

高い国内債比率

KKRなど主要3共済の約30.4兆円に上る資産構成の見直しは同様 に、約6.6兆円の国内債圧縮と約2兆円の日本株買いを生む可能性があ る。これに地方自治体の共済年金も追随すれば、国内債減・日本株増は さらに膨らむ見通しだ。

大和証券投資戦略部の塩村賢史シニアストラテジストは、GPIF の資産構成見直しが先行し、3共済とのモデルポートフォリオは「後付 けで」策定される可能性があると分析。3共済の規模は大きく、日本株 へのさらなる資金流入が見込めるが、市場で十分に理解されているとは 言い難いとみている。

主要3共済は資産構成に占める国内債の目標値がGPIFより高 い。政府有識者会議の報告書を受け、KKRは昨年12月に80%から74% に下げ、乖離(かいり)許容幅も上下16ポイントに広げた。地共済は構 成比64%は据え置いたが、許容幅を上下10ポイントに倍増。私学共済 は65%だ。日本株への配分はそれぞれ8%、14%、10%にとどまる。

KKRの運用資産は3月末に約7.6兆円。仮に市場関係者が GPIFに見込む国内債40%・日本株20%の資産構成にKKRも移行し た場合、国内債を2.7兆円減らして日本株を9140億円増やす必要が生じ る。運用資産が約18.9兆円の地共済は国内債を3.3兆円削減して日本株 を7390億円積み増し、約3.8兆円を抱える私学共済は国内債を6310億円 減らして日本株を倍増させることが必要になる。

地方自治体の共済

地共済資金運用部の坂場純平氏はブルームバーグ・ニュースに対 し、一元化後の資産構成はモデルポートフォリオに即して定めるが、モ デルポートフォリオは検討中だと回答。KKRと私学共済はコメントを 控えた。

地共連を所管する総務省によると、独自の資産運用を手掛ける地方 自治体の共済が64団体があり、その合計額は昨年3月末時点で約21兆円 に上る。昨年度分のデータは現時点では未集計だという。

公的年金制度は09年度以降、高齢化で膨張する給付額を保険料や税 金などで賄い切れず、GPIFの運用益や積立金の取り崩しに依存して いる。年金財政への拠出金は今年度、約5.5兆円となる見通しだ。

GPIFが先月公表した13年度の運用状況によると、通年の収益率 は8.64%と過去3番目の高さ。収益額は過去最高の12年度に次ぐ10 兆2207億円に達した。1-3月期は収益率がマイナス0.8%、1兆15億 円の評価損となったが、株安・円高が進んだ3月には国内株2504億円、 外債1671億円、外株2325億円を買い増した。合計6500億円は3資産に昨 年度投じた8752億円の約4分の3に当たる。

ブルームバーグ・セミナー

アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最 高投資責任者は、GPIFに他の年金も追随することで相応の「インパ クトはある」と分析。需給的には下がったら買う作戦とみられるため、 相場を支える形になるとの見方を示した。

ブルームバーグはきょう午後、都内で「GPIF改革と日本経済の 未来」と題したセミナーを開催する。安倍晋三内閣による成長戦略の目 玉の一つであるGPIF改革が金融資本市場だけでなく、企業経営や日 本経済にどのような構造変化をもたらすのかを議論する。

同セミナーでは、自民党の日本経済再生本部・金融調査会合同会議 (事務局長:山本幸三衆院議員)で本部長代行を務める塩崎恭久政調会 長代理が基調講演を行う。その後のパネルディスカッションでは、伊藤 教授と独立系運用会社スパークス・グループの阿部修平社長、日本取引 所グループ(JPX)傘下の東京証券取引所で上場推進・マーケット営 業を統括する小沼泰之執行役員が議論を交わす予定だ。

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