日銀「追加緩和なし」最多に、想定外の悪化で緩和期待復活も

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物価情勢がおおむね日本銀行の想定 通りに推移していることを受けて、追加緩和の予想時期について「追加 緩和なし」が初めて最多回答となった。もっとも、消費増税の落ち込み が想定以上に大きいとの見方が強まり始めており、今後の展開次第では 再び追加緩和予想が前倒しされる可能性もある。

エコノミスト34人を対象に7月30日から8月1日にかけて行った 調査で、7、8日の金融政策決定会合は全員が現状維持を予想した。 追加緩和の予想時期は「追加緩和なし」が11人(32%)と、これまで 最多回答だった10月緩和を上回った。10月は9人(26%)と1カ月前の 前回調査(35%)から減少。年内の追加緩和予想は12人(35%) と前回調査(38%)から小幅減少した。

6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)は前年 比で3.3%上昇と、ブルームバーグ・ニュースがまとめた予想中央値と 同じだった。日銀は消費増税がフル転嫁されればコアCPI前年比 を2.0ポイント押し上げると試算しており、これを除くと6月は1.3%上 昇と5月(1.4%上昇)を下回った。

日銀の黒田東彦総裁は先月15日の会見で、消費増税の影響を除くコ アCPI前年比上昇率について、夏場にかけて「1%台を割るような可 能性はない」と言明。1%台を割り込んだ場合の政策対応についての質 問に対しては「月々の変動があるので、すう勢をよく見る必要がある。 いずれにしても、1%を割る可能性はないと思っている」と述べた。

追加緩和の可能性は低い

SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは 「一部食料品(乳製品、缶詰)、自動車保険料、旅行代金等で値上げの 秋が予定されており、黒田総裁の発言通り、1%割れの可能性は低いだ ろう」と指摘。「日銀は焦って追加緩和する必要はない」とみる。

RBS証券の西岡純子チーフエコノミストも「企業が価格転嫁を進 めており、公共料金のさらなる引き上げの見込みも物価を押し上げるこ とから、先行きの物価は上振れしやすい」と指摘。このため、「日銀の 追加緩和の可能性は低い」という。

物価についてはこれまで日銀のシナリオ通りに来ているが、景気に ついては誤算も出始めている。日銀が発表している実質輸出は4-6月 が前期比1.1%減と、1-3月(同1.0%減)に続き2期連続のマイナ ス。日銀は以前から輸出の先行きについて「海外経済の回復などを背景 に、緩やかに増加していくと考えられる」としてきたが、こうした期待 は裏切られ続けている。

6月の鉱工業生産(速報値)は前月比3.3%低下と2カ月ぶりにマ イナスとなり、市場予測も下回った。明治安田生命保険の小玉祐一チー フエコノミストは「生産が大方の予想以上に落ち込んでいることを示す 結果となった。7、8月は増産が計画されているものの上昇幅は小幅 で、7月以降安定的なプラスに戻るのかどうか予断を許さない」とい う。

景気は「想定」を超えて悪化か

生産の落ち込みを受けて、13日に発表される4-6月の実質国内総 生産(GDP)成長率は見通しの下方修正が相次ぎ、ブルームバーグ・ ニュースの予想中央値で前期比年率7.1%減と大幅なマイナスが見込ま れている。クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは 「足元の景気は『想定』をはるかに超えて悪化している」という。

SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「10 -12月以降の景気再加速は必ずしも約束されたものとは言えず、株価な ど資産価格動向次第では、いったん後退した追加緩和観測が年内に再浮 上してくる可能性もあるだろう」とみる。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「この先も日 銀が期待するようなインフレのダイナミクスが実現するのは困難とみら れ、2%のインフレ目標が予定通り達成されるとは考えにくい」と指 摘。日銀は今年後半か来年初めに追加の金融緩和に踏み切るとみてい る。

追加緩和は年後半か来年初か

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「過去の円安 と原油高止まりなどの影響からコアCPIは1%超を維持しており、当 分の間、日銀が追加緩和に動く可能性は低い」としながらも、「来年1 月には日銀の見通しと実態がかい離し、物価目標が達成困難であること が判明することから、追加緩和を決定する可能性が高い」としている。

5日の東京株式相場は午後後半に先物主導で下げ幅を広げ、4日続 落した。TOPIXの終値は前日比1%安の1263.53、下落率は5月16 日以来およそ2カ月半ぶりの大きさとなった。債券相場は続伸し、長期 金利の指標となる新発10年物国債の334回債利回りは0.515%に低下し た。午後4時45分現在のドル円相場は102円57銭前後で推移している。

日銀ウオッチャーを対象にしたアンケート調査の項目は、1)今会 合の金融政策予想、2)追加緩和時期と手段や量的・質的金融緩和の縮 小時期および「2年で2%物価目標」実現の可能性、3)日銀当座預金 の超過準備に対する付利金利(現在0.1%)予想、4)コメント-。

1)日銀はいつ追加緩和に踏み切るか?             
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調査機関数                                            34          100%
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2014年9月                                              0            0%
2014年10月7日                                          1            3%
2014年10月31日                                         8           24%
2014年11月                                             2            6%
2014年12月                                             1            3%
来年1月                                               4           12%
来年2月                                               1            3%
来年3月                                               0            0%
来年4月以降                                           6           18%
追加緩和なし                                          11           32%

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2)追加緩和の具体的な手段                      
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調査機関数                                     
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A) マネタリーベースの増加ペースの引き上げ                           14
B) 長期国債の買い入れペースの引き上げ                               16
C) ETFの買い入れペースの引き上げ                                    17
D) J-REITの買い入れペースの引き上げ                                 13
E) 付利の引き下げ                                                   4
F)その他                                                             5
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3)日銀が2%の「物価安定の目標」が安定的に持続すると判断し、
量的・質的金融緩和の縮小を開始する時期はいつ?  
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調査機関数                                            34
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 2014年下期                                            0
 2015年上期                                            0
 2015年下期                                            0
 2016年上期                                            2
 2016年下期                                            3
 2017年上期                                            4
 2017年下期                                            0
 2018年以降                                            8
見通せず                                              17
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4)日銀は生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI、消費増税の影響を
除く)前年比が2016年度の「見通し期間の中盤頃に2%程度に達する
可能性が高い」としてますが、この見通しは実現しますか。
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                                                   はい         いいえ
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見通しが実現する                                       4            29
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5) 日銀は昨年4月、消費者物価の前年比上昇率2%の物価安定目標を
「2年程度の期間を念頭に置いて」できるだけ早期に実現すると宣言
しました。また、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因
を点検し、必要な調整を行うとしています。いつまでに2%を達成
すれば日銀は公約を達成したと言えるのか、言い換えれば、
いつまでに2%を達成すれば追加緩和は必要ないのか?
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調査機関数                                            32
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2015年4月                                      6                   19%
2015年5月                                      0                     -
2015年6月                                      2                    6%
2015年7月                                      0                     -
2015年8月                                      0                     -
2015年9月                                      3                    9%
2015年10月                                     2                    6%
2015年11月                                     0                     -
2015年12月                                     4                   13%
2016年1月                                      0                     -
2016年2月                                      0                     -
2016年3月                                      4                   13%
2016年4月                                      0                     -
2016年5月                                      0                     -
2016年6月                                      0                     -
2016年7月                                      2                    6%
2017年8月                                      0                     -
2017年9月                                      0                     -
達成時期に関わらず追加緩和は必要ない           9                   28%

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問1に対しての回答の詳細                        
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メリルリンチ証券、 吉川雅幸                             2014年10月31日
バークレイズ証券、 森田京平                             追加緩和なし  
BNPパリバ証券、 河野龍太郎                              追加緩和なし  
キャピタルエコノミクス、 Marcel Thieliant                         追加緩和なし  
シティグループ証券、 村嶋帰一                           2014年10月31日
クレディ・アグリコル証券、 尾形和彦                             追加緩和なし  
クレディ・スイス証券、 白川浩道                         2014年11月    
第一生命経済研究所、 熊野英生                           追加緩和なし  
大和総研、 熊谷亮丸                                     来年1月      
大和証券、 野口麻衣子                                   来年4月以降  
ゴールドマン・サックス証券、 馬場直彦                            2014年10月31日
HSBCホールディングス、 デバリエ・いづみ                       来年4月以降  
ジャパンマクロアドバイザーズ、 大久保琢史                       来年4月以降  
日本総合研究所、 山田久                                 来年4月以降  
JPモルガン証券、 菅野雅明                               追加緩和なし  
明治安田生命保険、 小玉祐一                             来年4月以降  
三菱UFJモルガンスタンレー証券、 六車治美                        2014年10月7日 
三菱UFJモルガンスタンレー景気循環、 景気循環研 嶋中雄二         追加緩和なし  
三菱UFJリサーチコンサルティング、 小林真一郎                       2014年10月31日
みずほ総合研究所、 高田創                               2014年11月    
みずほ証券、 上野泰也                                   来年1月      
ニッセイ基礎研究所、 矢嶋康次                           来年1月      
野村証券、 松沢中                                       追加緩和なし  
農林中金総合研究所、 南武志                             2014年10月31日
岡三証券、 鈴木誠                                       2014年10月31日
RBS証券、 西岡純子                                      追加緩和なし  
信州大学、 真壁昭夫                                     来年2月      
SMBCフレンド証券、 岩下真理                             追加緩和なし  
SMBC日興証券、 森田長太郎                               2014年12月    
ソシエテジェネラル証券、 会田卓司                       来年4月以降  
三井住友アセットマネジメント、 武藤弘明                          来年1月      
東海東京証券、 佐野一彦                                 2014年10月31日
東短リサーチ、 加藤出                                   2014年10月31日
UBS証券、 青木大樹                                      追加緩和なし  

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--取材協力:藤岡徹

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