日銀に一抹の不安、輸出と生産で下方修正も-関係者

日本銀行内で消費税率引き上げ後の 景気の先行きに一抹の不安を指摘する声が出始めている。

関係者によると、日銀は7、8日に開く金融政策決定会合で、輸出 の判断をこれまでの「横ばい圏内の動きとなっている」から下方修正す るかどうか議論する。生産についても、6月の鉱工業生産指数が落ち込 んだことを受けて、「振れを伴いつつも、基調としては緩やかな増加を 続けている」としていた判断を弱めるかどうか討論する。

輸出が下方修正されれば3月以来5カ月ぶり。輸出と生産いずれも 下方修正なら、白川方明前総裁の下で景気後退局面にあった2012年11月 以来となる。SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノ ミストは「仮に意図せざる在庫がさらに積み上がれば、生産調整が本格 化するリスクがある。国内統計に霧が立ち込めているようだ」という。

関係者によると、日銀は足元の景気については「基調的には緩やか な回復を続けている」という情勢判断は据え置く見込み。個人消費につ いても「底堅く推移している」という基調的な判断は変えない方針だ。

しかし、黒田東彦総裁が1日の講演で「消費税率の引き上げに伴う 実質所得の押し下げが徐々に影響を与える可能性もあるので、引き続き 注意深く点検していきたい」と述べるなど、物価が賃金を上回る伸びを 続けていることの影響を日銀は注視している。

13日に発表される4-6月の実質国内総生産(GDP)成長率はブ ルームバーグ・ニュースの予想中央値で前期比年率7.1%減が見込まれ ている。大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは「輸出が上向く気 配が見えず、生産も弱含んでいる。消費の持ち直しも勢いに欠けてお り、実質賃金の大幅減が足かせとなっている様子がうかがえる」とい う。

在庫の増加が懸念材料

6月の鉱工業生産(速報値)は前月比3.3%低下と2カ月ぶりにマ イナスとなり、市場予想も下回った。低下幅も東日本大震災があった11 年3月以来の大きさで、経済産業省は「総じてみれば、生産は弱含みで 推移している」に判断を下方修正した。在庫指数が前月比1.9%上昇と 2カ月連続で上昇したことも懸念材料だ。

シティグループ証券の道家映二チーフJGBストラテジストは「メ ーカーは生産を抑えたが、それ以上に出荷が弱かったとみられ、企業経 営者が需要を読み違えた可能性もある」と指摘。「消費税率引き上げ前 の駆け込みによる反動減を想定した場合、需要見通しに対し強気な生産 は在庫増につながるリスクがある」という。

一方、日銀が発表している実質輸出は4-6月が前期比1.1%減 と、1-3月(同1.0%減)に続き2期連続のマイナスとなった。 SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは「輸出停滞 が続けば、増税後に急速に積み上がった在庫の調整に時間がかかること も予想される」と指摘する。

実質所得の減少も懸念材料

ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストも「7 -9月は、前期比ベースでは景気は数字上回復するように見えるだろう が、消費も生産も基調としては弱く、さえない状態が続く可能性が高 い」と指摘。「消費は実質可処分所得の大幅減が、生産は在庫の積み上 がりが足かせとなる」という。

実質所得の減少も懸念材料の1つだ。石田浩二審議委員は先月29日 の講演で、家計の実際の消費支出に対応し賃金などの実質化に使用され る物価指標である『持家の帰属家賃を除く総合』指数に言及し、「足元 6月の伸び率は4.4%とコア指数よりも1%以上高い水準にあり、それ が最近の実質賃金の大幅減少につながっている」と指摘した。

黒田総裁は1日の講演で、消費者物価指数(除く生鮮食品、コア CPI)前年比について、しばらくの間1%台前半で推移した後、「本 年度後半から再び上昇傾向をたどり、16年度までの見通し期間の中盤ご ろ、すなわち15年度を中心とする期間に、2%程度に達する可能性が高 い」との見方を繰り返した。

10月に追加緩和予想

しかし、馬場氏は「日銀が想定する賃金増加から物価へのパスはマ クロ的には限定的で、むしろ内需の弱さが企業プライシングを弱気化さ せる可能性もある。エネルギー価格の再上昇などがない限り、物価は夏 場にかけて弱含み、秋口以降も1%前後で一進一退とみている」と指 摘。10月31日の金融政策決定会合で追加緩和があると予想する。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「日銀が掲 げるシナリオが徐々にぐらつき始めている」と指摘。「日銀が掲げてい る物価シナリオと現実のギャップが誰の目にも明らかになり、それを日 銀が早ければ10月末の展望リポート、遅くとも来年1月の中間評価で素 直に認めることになれば、追加緩和が行われるだろう」とみている。

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