【クレジット市場】安倍期待低下を鏡写し、長期0.2%台予想は健在

安倍晋三政権の支持率凋落の鏡写し のように、国債市場の長期金利見通しが低下している。アベノミクスが 掲げる物価目標で金利が上昇するとみていた市場関係者にとっては逆風 が吹いている。

ブルームバーグ・データによると、現在の市場金利から2年後の10 年債利回りを算出したフォワード金利は今週、一時0.83%と日本銀行の 異次元緩和導入後に付けた昨年4月9日以来の低水準を記録した。景気 回復への期待が薄れ、市場の金利先高観が後退している。

JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「景気 が回復している感じではない。コアCPI(生鮮食品を除く全国消費者 物価指数)もプラス1%近辺に伸び率が落ちる見通し。そこから先、プ ラス2%を望める感じでもない」と述べ、「国内投資家は、日本国債に 資金を戻しており、金利が低下している」と指摘した。

黒田東彦日銀総裁は前月、2%物価目標の実現まで道半ばとしなが らも、物価は2016年度末までの見通し期間の中盤ごろに「2%に達する 可能性が高い」との見方を示した。

日本経済新聞によると、7月25-27日実施の世論調査では、安倍内 閣の支持率が48%と2012年12月の第2次安倍内閣発足以来、最低となっ た。共同通信は、安倍首相が訪問先のチリで同行記者団に対し、内閣改 造と自民党役員人事の9月第1週断行を明言したと報じた。

今秋に長期金利0.2%台

長期金利が13年度中に過去最低を試すとの予想を的中させた、東海 東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、「フォワード金利が やっと私の予想に追いついてきた。今秋に長期金利が0.2%台を目指す との従来予想は変わっていない」と話す。「内閣支持率が落ちているこ とは、経済・金融政策への思惑を強めることになるだろう」と言い、今 年度下期の長期金利のレンジは0.25-1.25%と想定している。

10年物の固定利付国債と物価連動債の利回り格差で市場の予想イン フレ率を示すブレークイーブンレート(BEI)は前日終値が1.24%と 、6月4日に過去最高水準の1.395%を付けた後から下落している。

総務省によると、6月のコアCPIは前年比3.3%上昇だった。も っとも日銀は4月からの消費増税がフル転嫁されればコアCPIを2.0 ポイント押し上げると試算しており、この押し上げ分を除くと1.3%上 昇となり、5月(1.4%上昇)を下回っている。

黒田総裁率いる日銀が物価上昇を目標に「量的・質的金融緩和」を を発表した昨年4月4日の翌日には、長期金利が過去最低の0.315%を 付けた。フォワード金利はその翌週の4月8日に1.40%と、07年以降で 最低水準を記録した。

長期金利の指標となる新発10年国債利回りの前日終値は0.53%。7 月18日には一時0.51%と、13年4月9日以来の低水準を付けた。ブルー ムバーグの予測調査の中央値では、7-9月期末は0.65%程度、年末は

0.72%程度が見込まれている。

追加緩和観測

市場では、秋口以降の物価動向次第で、追加緩和観測が強まる可能 性があるとの声が出ている。

損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの平松伸仁シニアイン ベストメントマネジャーは、「日銀は、コアCPIが秋口に下がった後 に、年末にかけて持ち直し、来年中旬ごろには2%まで上昇すると言っ ている。この前提なので、秋口以降もずるずるとコアCPIの伸びが低 下していけば、追加緩和観測が高まりやすい」と説明。「追加緩和を織 り込んだら、一段と金利が下がるだろう。長期金利は0.5%割れがある と思う」と述べた。

ブルームバーグが7月初旬に実施した調査によると、追加緩和の予 想時期は10月31日が32%と最多だった。日銀は7、8日に次回金融政策 決定会合を開催する。

円安効果

外国為替市場では、円相場は対ドルで昨年18%下落し、輸入物価関 連の上昇圧力になった。しかし、今年に入って円は2.3%程度上昇して いる。

モルガン・スタンレーMUFG証券の河野研郎チーフ債券ストラテ ジストは、「市場はコアCPIが2%に向けて上昇するとは信じていな い」としながらも、「円安になれば上昇余地はあると思う」と述べた。

白井さゆり日銀審議委員は7月23日、シンガポールで講演し、「物 価安定目標の2%を達成した上で、その後は2%を安定的に維持する道 筋を実現していくことは可能」と述べ、今後も金融政策によって景気回 復を下支えすることが重要と話した。

マイナス成長

ブルームバーグ調査によると、内閣府が13日に発表する4-6月期 の実質国内総生産(GDP)の予測中央値は前期比1.8%減少、年率7.1 %減少と、大幅な減少が見込まれている。1-3月期は前期比1.6%増 加、年率6.7%増加だった。マイナス成長は12年7-9月期以来だ。

UBS証券の青木大樹シニアエコノミストは7月30日付のリポート で、4-6月期の実質GDP予測を下方修正し、前期比2.1%減少、年 率8.2%減少に引き下げた。従来予想は前期比1.1%減少、年率4.3%減 少だった。

損保ジャパン日本興亜アセットの平松氏は、「4-6月期の実質G DPは悪い数字が予想されているが、予想以上に悪化すれば、金利抑制 要因になる」と指摘。ただ、「4-6月期GDPが落ち込んでも、7- 9月期の切り返しがどうなるか次第でもある」と述べた。

政府は、消費税率を4月に5%から8%へ引き上げた。しかし15年 10月に10%まで引き上げるかに関しては最終判断を下していない。

(更新前の記事はフォワード金利の数値が間違っていたため訂正済みで す)

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