安倍晋三首相がかつてないペースで 諸外国を訪問している。首脳外交を通じて安全保障や経済面で諸外国と の連携を強め、日本のプレゼンスを高めるのが狙いだが、専門家から は2010年に経済規模で日本を抜き去り、国際社会で台頭する中国に刺激 されたとの見方も出ている。

来月初めまでの中南米5カ国訪問で、安倍首相の訪問国数は12年12 月の第2次政権発足以降47カ国に到達。5年5カ月で48か国を訪問した 小泉首相に次いで2番目に多くなる。共同通信は9月上旬にスリランカ とバングラデシュを訪問する方向で調整に入ったと報じているが、これ が実現すれば49カ国となり、就任から1年9カ月で歴代トップに躍り出 る。

中南米には三菱重工業などのべ約70社の企業関係者が首相にあわせ て訪問する。首相は24日、都内で開かれた経団連のフォーラムであいさ つし、官民あげてのトップセールスが功を奏し、日本企業の海外でのイ ンフラ受注額は昨年、一昨年に比べて3倍の9兆円になった、と指摘。 「世界で存在感が薄くなっていた日本が官民一体となった取り組みによ って今、世界の真ん中で輝く国になろうとしている」と語った。

シドニー大学のケリー・ブラウン教授は「これまで長いこと、日本 は経済大国の一つであったにもかかわらず、世界におけるプレゼンスが あまりにも低かった」と指摘。安倍首相が活発に外国訪問を行っている ことについて「中国が最近積極的に外交パートナーを多様化させている ことに刺激された」との見方を示した。

ジャパン・イズ・バック

安倍首相は13年2月に米戦略国際問題研究所(CSIS)で、同年 9月にはニューヨーク証券取引所でそれぞれ講演し、そのどちらでも 「ジャパン・イズ・バック」という言葉を使い、安全保障面でも経済面 でも日本は再び世界で中心的役割を果たす決意を示した。

7月のオーストラリア訪問では日本の首相として初めて国会で演 説。英語で「日本とオーストラリアには、それぞれの同盟相手である米 国とも力を合わせ、一緒にやれることがたくさんある」と連携を訴え た。

安倍首相のスピーチライターを務めた元記者の谷口智彦内閣官房参 与は、安倍政権以前の日本の外交は破綻寸前だったが、安倍首相は国際 社会に対して日本はいまだ健全であり、頼りにできる大国だと発信しよ うとしている、と語った。谷口氏のインタビューは英語で行った。

中南米訪問ではメキシコのペニャニエト大統領と会談。両政府の共 同プレスリリースによると、環太平洋連携協定(TPP)交渉の早期妥 結に向けて参加国に働きかけることなどで一致した。トリニダード・ト バゴでは、14カ国が加盟するカリブ共同体(カリコム)との首脳会合を 行った。

中韓

隣国の中国と韓国とはいまだ正式な二国間首脳会談すら実現してい ない。06年の第1次政権で安倍首相は就任から1カ月足らずの同年10月 に中国、韓国を相次いで訪問したのとは対照的だ。

中国とは尖閣諸島、韓国とは竹島や慰安婦をめぐる問題でもともと 関係がギクシャクしていたが、昨年12月に安倍首相が現職首相としては 7年ぶりとなる靖国神社参拝を行ったことで、溝が深まった。

河野洋平元衆院議長は22日のインタビューで、安倍首相の外交につ いて、「まったく評価しない。周辺国との関係を育てていくことが国の 存続のために極めて重要。一番近い所との関係をこんなままにしておい て、いくら外を回ってもあんまり意味がない」と批判していた。

安倍首相はこれまで「日本側の対話のドアは常にオープン」として 中韓両国に首脳会談を訴えかけてきた。舛添要一都知事は25日、韓国で 朴槿恵大統領と会談し、日韓関係を改善したいとする安倍首相のメッセ ージを伝えた。

木原誠二外務政務官は25日のインタビューで、韓国とはアメリカを 交えてオランダで首脳会談を実現したことに触れ、「当面はやっぱり中 国。APECは中国が主催者。主催者が二国間会談をやるというのは世 の常だ」と話した。安倍首相は14日の衆院予算委員会で、11月に北京で 開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて日中首脳会 談を行いたい考えを示している。

国連

安倍首相の外遊先にはトリニダード・トバゴ、コロンビアなど日本 の首相がこれまで訪れたことのなかった国も含まれる。来年の70周年に 合わせた国連改革や非常任理事国選挙を見据えて支持を集める戦略があ る。

木原外務政務官は、安倍首相が多様な国々を訪問するのは、日本の 国連常任理事国入りへの賛成国を増やす狙いがあると思うかとの質問に 対して「それはあると思う」と答えた。その上で、「もう一つは、非常 任理事国選挙もあるから、二つの意味で、仲間を増やしておくことが大 切だ」と指摘。「国連の場合は大であれ小であれ、一カ国は一カ国だ」 とも話した。

安倍首相は昨年9月の国連総会で、「わが国は常任理事国となる意 欲にいささかも変わるところがない」と表明した。日本、ドイツ、イン ド、ブラジルの4カ国は7月20日、常任理事国入りを目指して東京で外 務省局長級の協議を実施した。

--取材協力:James Mayger、Sam Kim、広川高史.

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