加納裕三氏は米ゴールドマン・サッ クス・グループを2回退社した。最初は同業他社に移るため、2回目は 仮想通貨ビットコインの取引所を設立するためだった。

加納氏(38)が昨年12月にデリバティブ・転換社債トレーダーの仕 事を辞めた時、ビットコインの価格は過去最高水準の1151ドル(現在の レートで約11万7000円)になっていた。しかし3カ月後に価値は半減。 一時は世界最大のビットコイン取引所だったマウント・ゴックスが5 億3000万ドル相当の窃盗に遭い破綻したからだ。

東京を本拠としていたマウント・ゴックスの破綻について加納氏は 「コンペティターが少なくなるというのはポジティブだと思うが、ビッ トコインについて特に日本人にかなり悪い印象を与えたのは非常にネガ ティブ」だったと今月17日のインタビューで話した。「ここからわれわ れが立て直さないといけないと思った」と続けた。同氏はビットコイン 取引所のビットフライヤーを立ち上げていた。

2月にマウント・ゴックスが取引を停止した後は、日本でビットコ インを買うには東京で唯一のビットコインATM(現金自動預払機)に 行くか、相対で売買するしかなかった。ビットフライヤーのウェブサイ トは、日本の銀行に口座を持つ人なら誰でもビットコインを売買するこ とを可能にした。4月にサービスを開始したビットフライヤーは他の取 引所が採用していた取引オプションを排し、初心者が使いやすいシンプ ルなインターフェースを採用したと加納氏が述べた。利用者数は明らか にしなかった。

報道で日本人が敬遠

東京在住のフランス人が運営していたマウント・ゴックスは主に外 国人が利用していたが、その破綻については国内メディアが大々的に報 じた。このため、もともとリスク回避志向が強い日本の個人投資家はビ ットコインの取引をますます怖がったと加納氏は指摘する。しかし政府 はそうではなかった。安倍晋三首相が掲げる起業促進につながるとの考 えから、与党自民党は仮想通貨について事実上放任する方針を決めた。 同党の特別委員会が6月に示した報告書が示している。

加納氏は日本のベンチャーキャピタルから1億6000万円を借り入れ ビットフライヤーを設立した。国内でのビットコイン関連投資として今 までの最高額だという。年内に海外向けサービスも提供できるよう、現 在は海外ファンドからの資金調達を目指していると同氏が述べた。

「マウント・ゴックスのような問題がもう一度起こったらゲームオ バーなので、そうならないためにモニターしなければいけないと思って いる」と加納氏は話す。

ビットフライヤーは、ビットコイン事業者である米クラーケン(サ ンフランシスコ)の日本部門やコインパスとともに設立した業界団体 「日本価値記録事業者協会」を通じ、安全基準や個人認証の指針などを 設定することを目指している。

参入者

マウント・ゴックスが残した空白を埋めようとする企業の登場によ って、ビットコイン取引は拡大するかもしれない。中国の新興企業ビッ トオーシャンは米アトラスATSと共同でマウント・ゴックス資産の買 収案を出し、両社は8月までに日本でビットコイン取引所を開く予定。 ビットオーシャンのナン・シャオニン最高経営責任者(CEO)が15日 のインタビューで述べた。

クラーケンも円とビットコインの取引のための日本語のウェブサイ トを開設する計画だと、ジェシー・パウェルCEOが共同通信とのイン タビューで3月に述べている。クラーケンは現在、米ドルとユーロ、韓 国ウォンを受け付けている。

コインデスクの指数によれば、東京時間23日午前9時13分現在のビ ットコイン価格は618.71ドル。

買い手と売り手をマッチングする他の取引所と異なり、ビットフラ イヤーは買い手、売り手、双方の取引相手方となる。これによって取引 が直ちに成立し、初心者に二の足を踏ませる複雑な価格設定メカニズム を排除できると、加納氏は説明した。

同氏はそれがビットフライヤーの「大きなアドバンテージ」だが、 そのために自社でリスクを取ることになるとし、「リスクコントロール は経験がないとできない」と述べた。

加納氏は流体力学を専攻し東京大学の修士課程を終えた後2001年に ゴールドマンに入社した。液体や気体の動きを研究することで、複雑な システムの理解や動きをシミュレートするためのプログラミングの能力 を身に着けた。3年半の間アナリストを務めた後、トレーディングを学 ぶためBNPパリバに移籍。ゴールドマンに戻った後6年半勤めた。

「ゴールドマンにいる限り安定性がない」し、自分で事業をすれば 伸びる余地が大きいと同氏は話す。「複雑なシステムが好きなのでデリ バティブトレーダーになった。それが今はビットコインだ」と語った。

(更新前記事は10段落のクラーケン取り扱い通貨を「ユーロ」に訂正)

--取材協力:Jason Clenfield.

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