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野村のM&A助言業務が不調、ヤフー大型案件中止が追い打ち

野村ホールディングスの合併・買収 (M&A)助言業務が不調だ。大手銀行グループや外資系投資銀行が攻 勢を強める中、同社にとって今年最大だったヤフー案件が先週、突然中 止となった。これが追い打ちとなり助言ランキングがさらに後退するな ど、証券会社にとって収益の鍵となる業務に異変が起きている。

ヤフーは19日、6月に予定していたソフトバンクが保有するイー・ アクセス株式取得の中止を発表した。ブルームバーグ・データによれば この3000億円規模のM&Aの中止でソフトバンクを助言していた野村の 日本関連の助言ランキングは4位から5位に低下した。この案件は過 去10年間で正式合意後に中止となった中で最大規模となった。

野村は2011年まで4年連続トップだったが、それ以降は三菱UFJ フィナンシャル・グループやモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サ ックス、ドイツ銀行など競合他社に大型案件を譲り首位を逃している。 金融機関にとってM&Aアドバイザリーは企業との信頼関係を示す重要 な業務で、公募増資などその後の資金調達案件の獲得にもつながる。

国内独立系M&Aブティック、カチタスの平井宏治社長は、「メガ バンクや外資の優位と国内証券の苦戦は続くだろう。野村はこのままで いいはずがない」と指摘。今後は「海外の投資銀行と合弁会社設立や緩 やかな提携が必要で、国外の優秀なバンカーを起用するのも選択肢だ」 とし、野村はグローバルで同業務の強化を迫られていると語った。

野村とは対照的に存在感を示しているのは、国内最大手銀行と米国 巨大金融機関との合弁である三菱UFJモルガン・スタンレー証券だ。 三菱UFJモルガンはヤフー側のアドバイザーを務めていた。同案件の 中止にもかかわらず、同社は14年の日本企業関連のアドバイザリー・ラ ンキングで首位を維持した。13年もトップだった。

米ゴールドマンと老舗日本企業

SBI証券投資調査部の藤本誠之シニアマーケットアナリストは、 メガバンクなど大手銀行は素早く大型案件に融資を実行できる。また外 資系証券は海外でのネットワークや外国企業に対する高い分析力を持っ ていると指摘。日本企業はこうした能力を持つ金融機関に助言を求める 傾向にあるという。

野村は08年に米リーマン・ブラザーズのアジアと欧州業務を買収、 グローバル事業の強化に取り組んだが、人件費の増加などが原因でその 後過去最大の赤字を計上した。また、リーマン出身のバンカーの退社や 海外での大幅な人員削減を余儀なくされ、収益面でリーマン買収の成果 が顕在化することはなかった。

「M&Aはよりコンペティティブになってきており、日本企業にと ってはスピードが大切」とSBIの藤本氏は指摘する。「公募増資は時 間がかかり株価も動く。銀行にいったん融資を付けてもらう方がスピー ディーだ。また米企業のことはゴールドマンなど米国金融機関が一番よ く知っているはずで、野村に聞く妥当性はないだろう」と述べた。

米ゴールドマンはミツカングループの海外買収案件でフィナンシャ ルアドバイザー(FA)を務めている。1804年創業のミツカンは5月22 日、「ラグー」などで知られるユニリーバの北米パスタソース事業を約 21億5000万ドル(約2150億円)で買収することで合意したと発表、日本 での今年2番目に大きな案件となった。そこに野村の姿はなかった。

バロメーター

野村がM&Aや財務コンサルティングから得た手数料は昨年度250 億円と12年度から2.3%減少し、株式や債券の引き受けを含む投資銀行 業務手数料全体のうちのシェアは27%だった。野村は14年の引き受け業 務ではエクイティ関連では首位、債券では3位となっている。

UBS証券の伊奈伸一アナリストは、「リーグテーブルはどれだけ 顧客に入り込めたかの強さを示すバロメーターだ」という。「買収はク ライアントにとって重要なビジネスで、そこに入り込むのは経営戦略に 係るということ。FA自体のフィーは小さくても将来、ファイナンスな どのビジネスが付随してくる可能性がある」と述べた。

「サムライバンカー」

野村は今年前半を含め過去4年にわたり、その年の日本企業関連の 最大案件を毎年逃してきた。1月に発表されたサントリーホールディン グスの米ビーム社の買収では、三菱UFJモルガンが日本側のFAを務 めた。買収総額は約160億ドル(約1兆5700億円)に上った。

このほか野村は、13年の東京エレクトロンと米アプライド・マテリ アルズとの統合案件、12年のソフトバンクによる米携帯電話会社スプリ ントの巨額買収、11年の新日鉄と住友金属の統合案件と、それぞれその 年の最大案件の助言に携わることはできなかった。

三菱UFJの証券子会社で企業情報部の部長だったカチタスの平井 社長は「昔は特殊で大きなディールは野村だという神話があったが、ス キルの優位性が崩れた」とし、今は「融資を付けられる銀行が優位だ」 と指摘。「野村には無から有を生むディールを創造でき企業トップにも 物を言えるサムライバンカーがいたが、今は少なくなりクリエーション よりエグゼキューション中心になってきたように見える」という。

野村の取り組み

野村でグローバルM&Aを統括する角田慎介(47)氏は、「独立系 としての優位性を生かし信頼されるアドバイザーとしてお客様をサポー トしていく」とブルームバーグ・ニュースの取材に答えた。また「昨年 度からクロスボーダー案件の開発に重点的に取り組んでおり、足元の相 談は増えているため今後のビジネス拡大を期待している」と述べた。

野村の奥田健太郎常務は12月のインタビューで、米国で新たにバン カー20人程度を採用し、米企業同士のM&Aのほか、日本関連のクロス ボーダー案件の助言を強化することを明らかにした。企業買収に際し融 資するレバレッジドファイナンスや、KKRなどプライベートエクイテ ィー、不動産・ホテル、さらにカジノ・ゲーム業界などのカバレッジ体 制を強化すると述べた。

野村は昨年12月、2日間にわたるオフサイトミーティングを東京で 開催。世界各地からマネジングディレクター、地域統括者、各業界担当 の責任者や日本のバンカーら約50人を集め、今後の戦略について議論し た。日本企業のM&A強化に焦点を絞ったミーティングはここ3年間で 初めてのことだ。

SBIの藤本アナリストは、M&A助言をめぐる今後のビジネス機 会について「金融緩和による円安進行で、海外企業が日本企業を買いに 来るケースが増えてくる」と分析。このため「日本企業の資産査定が必 要になり、野村や国内金融機関にとってチャンスだ」と指摘した。

証券業界、再編も

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、業績や 資金調達環境の改善などから、国内企業による海外M&Aは今後も増加 すると予想。その上で、証券業界でも「国内だけでは情報が足りず、日 本の証券会社がM&Aなど、海外に活路を求める動きが出てくる可能性 がある」と述べ、業界再編もあり得るとの考えを示した。

ヤフーは3月27日、携帯電話・データ通信会社イー・アクセス株式

99.68%のソフトバンクからの取得(3240億円)を取締役会で決議、譲 渡契約を締結し社長による記者会見も開いた。しかし、ヤフーとソフト バンクは5月19日、「協議を重ねた結果」これを中止すると発表。ブル ームバーグ・データによれば、日本関連のM&Aでは過去10年で325件 が中止されたが、契約締結後の破談では最大規模となった。

不運にも見舞われた野村。M&Aアドバイザリー業務はいつ復活す るのか。新たな挑戦に熱い視線が注がれている。

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