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韓・中国勢が「鉄」で日本市場侵食-高まる警戒感、対抗措置も視野に

韓国や中国などから日本への鋼材輸 入が急増している。1-3月期の輸入量は前年同期に比べて47%増と 約17年ぶりの高水準に達した。国内市場の需給悪化を招くほか、安値で 輸出されている可能性もあるとして鉄鋼関係者は警戒を強めている。

「現状の為替水準で採算面を考えれば、これだけ大量に日本に持っ てくるのは考えづらい」。日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金副会 長)は4月の記者会見でこう疑問を呈した。特に注視するのは高付加価 値製品で日本の鉄鋼メーカーと競合する韓国からの輸入。1年前と比べ て韓国ウォンが円に対して約1割強高い水準で推移する中、輸入の急増 は不自然との見方を示した。

鉄連によると3月の普通鋼鋼材の輸入量は47万3000トンと前年同月 比58%増。昨年11月から前年同月比での増加が続いている。韓国からの 輸入は30万5600トンと43%増。1-3月の鋼材出荷に占める輸入鋼材の 比率は9.7%と1割に迫った。前年同期は7.4%。輸入鋼材のシェアが1 割を超えたのは年度ベースで見ると10.6%を付けた1957年度のみ。

経済産業省製造産業局の山下隆一鉄鋼課長は「日本は鉄鋼業の競争 力が高く、ユーザーの要求が非常に厳しいため一般的には海外からなか なか入りにくい傾向」と指摘。「韓国材の品質が向上していることもあ るが、こんなに輸入が急増する状況を自分は知らない」として輸入動向 を監視していると述べた。

韓国2位の現代製鉄は昨年9月に第3高炉を稼働し、粗鋼生産能力 を1.5倍の年1200万トンに拡大。同国最大のポスコも生産能力を増強し た。過剰設備が指摘される中国では3月に単月の粗鋼生産が過去最高を 記録。友野会長は「新興国での需要は鈍化している」として、韓国や中 国での余剰生産分が日本に流入する傾向は続くと見る。

想定外の鋼材需給緩和

13年度の国内の粗鋼生産量は1億1151万トンと6年ぶりの高水準だ った。国内需要はアベノミクスに伴う円高是正などで自動車生産が息を 吹き返し、東日本大震災からの復興需要もあり堅調。鉄鋼各社はほぼフ ル操業の状況で、需給ひっ迫感を背景に輸入が増え始めた。

ところが年初以降の輸入量は関係者の想定を上回る事態に。大和証 券の五百旗頭治郎シニアアナリストは「ひっ迫感のあった鋼材需給の軟 化は想定外」と指摘する。国内鉄鋼メーカーによる値下げの動きは今の ところ表面化していないが、上昇基調にあった鋼材販売価格には下押し 圧力が強まっていると見る。

株価にも影響は及んでいる。時価総額で昨年6月から鉄鋼業界で世 界首位の座を維持してきた新日鉄住金だが、2月に世界最大手の欧州ア ルセロール・ミタルに抜かれ、3月にはポスコにも逆転された。足元で は再度首位を奪還したものの、年初以降の株価は約2割下落しており TOPIXを下回る。五百旗頭氏は国内鋼材需給の軟化が株価低迷の 「最大の要因」と分析する。JFEホールディングスや神戸製鋼所の株 価も同様に下落している。

鋼材輸入の監視を強化

鉄連では鉄鋼メーカーの役員らで構成する公正貿易委員会が鋼材輸 入の監視を強化し、貿易統計などを詳細に分析している。友野会長は先 月の会見で「政府とも相談しながら反ダンピング措置を打つ手も選択肢 としては持っている」との認識も示した。

経産省の山下鉄鋼課長も「4月以降も高水準の輸入が続き、韓国内 での販売価格よりも不当に安い価格で日本に輸出されているのであれ ば、鉄鋼業界も反ダンピング課税措置の提訴を当然視野に入れるのでは ないか」と語る。

鉄連が29日発表した4月の鋼材輸入速報は前年同月比19%増の42万 トンだった。4月としては9年ぶりの高水準。韓国からの輸入は同18% 増の28万トンだった。

ポスコ広報担当のカン・ミンソク氏は日本向けの鋼材輸出や価格に ついてのコメントを控えた。

--取材協力:Heesu Lee.

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