女子会変貌の株式セミナー、優待など興味-「株女」育成課題

肥後知歩さん(36)が講師を務める 株式投資セミナーは、女性が平均で1クラス全体の4割を占め、妊娠中 の女性も熱心に耳を傾けている。肥後さんの目にかつて映った「男子高 校さながら」の授業風景は、今やすっかり様変わりした。

「6年くらい前は男性ばかり集まり、女性がいても、1人教室に紛 れ込んだようだった」--。お金に関するスクールやセミナーを運営す る日本ファイナンシャルアカデミーのマネーマネジメントコーチ、肥後 さんはこう振り返り、現在は男性が6割にとどまる印象と言う。

講座によっては「女性ばかりの女子高みたい」なケースもあり、株 式投資に貪欲になり始めた女性心理を肥後さんは「貯蓄も大切だが、全 部貯蓄で持っていても老後が過ごせないと気付いている」と分析した。

男性のイメージが強かった日本の株式市場における個人投資家像が 変貌しつつある背景には、女性の就業者数増加や晩婚化といった社会構 造の変化に加え、貯蓄から投資への動きを加速させようとする政府、取 引所の努力もある。

日本取引所グループが2月に東京で開いた東証IRフェスタ2014で は、「東証女子株会」と題する女性向けのイベントを新設した。資産運 用アドバイザーの木村佳子氏が、「配当と優待をもらいながら、ゆっく り値上がりするのを待つ」などと女性目線の投資法を伝授。定員30人に 対し、20代から70代まで幅広い年齢層の200人から申し込みがあり、会 場には立ち見まで出た。

優待活用し家族でステーキも

女子株会に参加した会社員の橘田亜希子さん(34)は、株主優待銘 柄や高配当利回り銘柄を対象に5-6年前から株式投資を行っている。 「銀行金利が低いため、長期的な資産形成が目的。安定している大企業 で、配当利回りが高い銘柄に注目している」と話した。

立ち見で参加した主婦の大波和子さん(61)は、「最近は株主優待 がマスコミに取り上げられることが多くなっている」とし、手ごろな値 段で株式優待制度がある企業に投資中だ。保有するコロワイド株の優待 を使って、「家族と一緒にステーキ店を利用している」と言う。

日本取引所では、個人投資家層の裾野拡大を目指す一環で、女子株 会のような女性をターゲットにした取り組みを行っている。同社の吉松 和彦報道・IR課長は、「日本の個人投資家層の中でも女性の若・中年 層の投資比率は飛び抜けて低い」と、背景を説明する。

父親に連れられIRフェスタを訪れた会社員の小堀綾子さん(24) も、株式投資に興味がない1人。多くの個人投資家が売買に利用するイ ンターネットも好まず、「株式投資は難しそうで、損をしそう」と不安 を口にした。小堀さんの知人にも株式投資を行う女性は見当たらず、 「皆趣味にお金を使っている。生活がぎりぎりの人もいる」と語る。

株式知らない若い世代

日本取引所が昨年7月に発表した個人投資家調査によると、「知ら ない」「名前は知っているが具体的なことは分からない」と答えた人を 除いた株式認知率は全体で40%、30-40代男性で46%だったのに対 し、30-40代女性は22%にとどまった。同じ女性でも、50代以上は43% で、若い世代の低さが際立つ。

「バブル以降の日本経済が悪かった中で成功体験を生まず、若い人 たちの関心を削いでしまった」と同社の吉松氏。特に女性の場合、お金 を無駄なく使うという生活面での意識が強い結果、資産運用という株式 投資への関心のなさに拍車が掛かっている、と見る。

今後、全体の6割以上の金融資産を持つ50-60代から若・中年層へ の資産移転が見込まれる中、「将来の日本企業を支えてくれる投資家を 育てるため、特に関心が薄れている女性は資金の出し手として伸びしろ が大きい」と、吉松氏は指摘した。

野村アセットマネジメントは1月、投資の経験はないが、少額投資 非課税制度(NISA)に関心がある20-50代の男女を対象にグループ インタビュー調査を行った。住田友男主任研究員は、「性別の違いなの か、将来に対する考え方の違いなのか、女性の方が少額投資という言葉 に響いてより身近なもの、自分の財布の中で使える自分のための制度だ という印象を受けているようだ」と総括する。

新規口座、女性の比率が初の30%台

証券口座の開設状況からも、女性の株式市場への関心の高まりは顕 著だ。オンライン証券の松井証券では、新規口座開設における女性の比 率が2013年度に31%と、初めて30%に乗せた。最も古いデータの1999年 度は12%。新規開設者のうち、年度内に売買を行った比率は男性の場合 は全体の43%に対し、女性は46%とやや上回った。同社のこれまでの全 口座に占める女性比率は24%となっている。

同証営業推進部の松井亮副部長は、「新規開設では女性比率が徐々 に高まっている。従来と比べ13年度は20-30代が増え、取引に意欲を持 って開設されている」と説明。アベノミクスにより「週刊誌やテレビで 株式市場が取り上げられ、女性の目に触れる機会が増え、NISAによ って投資経験が浅い投資家が入ってきている」との認識を示した。

野村アセットの住田氏は、共働き世帯が過半数になるにもかかわら ず、「明治時代以降の標準世帯が政策のフレームワークになっていて、 生活と制度との乖離(かいり)が生じている」と分析。現実と政策のず れで不安が生じやすい中、社会進出で就業機会を得た女性は資産運用の 問題意識を持ちやすい、と言う。

女性就業者数、初婚年齢が最高水準

総務省の労働力調査によると、昨年の女性の就業率は47.1%と13年 ぶりの高水準となり、女性全体の就業者数は4701万人と6年ぶりに過去 最高を記録した。一方、厚生労働省の調べでは、女性の初婚年齢は12年 に29.2歳と過去最高だった。

野村総合研究所研究創発センターの大崎貞和主席研究員は、「女性 の就業率が上昇し、晩婚化も進んでいるため、女性が自分で自由に動か せる資金が増えている」と指摘。昔は投資セミナーや投資相談に来る個 人投資家は男性が多かったが、「可処分所得の増加により、女性の株式 に対する関心は今後高まってくる可能性がある」と予測する。

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