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与党議連:6000億円の日露ガスパイプライン計画-領土交渉切り札

与党議員33人で構成される日露天然 ガスパイプライン推進議員連盟は、露サハリンから首都圏まで天然ガス を輸送するパイプラインの建設計画実現に向けて動き出している。

原子力発電所事故以降、原発に代わるエネルギー源の調達が急増す るなかで、できるだけ安価に発電用の燃料を調達する必要に迫られてい るためだ。ロシアから長期契約に基づいて天然ガスを購入することで、 北方領土を巡る交渉のカードにする狙いもある。同議連の竹本直一事務 局長(自民党衆院議員)がブルームバーグとのインタビューで話した。

竹本氏によると、日露間のガスパイプライン構想と議連の発足は10 年以上前にさかのぼる。しかし、当時は電力各社などの間に「ぜひとも 欲しいという需要の声がそれほど強くなかった」ことから構想は中断。 しかし原発事故以降、安い価格での燃料確保が急務になったことから、 露サハリンからの天然ガスパイプラインの実現を目指し、2013年5月に 与党議員が新たに議連を設立した。

LNGは天然ガスを液化するための設備の建設に数兆円規模の莫大 な投資が必要になる。そのコストは液化費用として価格に上乗せされて いる。さらに、LNGを運ぶためのタンカーの費用も必要。竹本氏は 「天然ガスを生で持ってくればコストは半分以下になる」と話す。安価 な輸入ルートの構築により、他のプロジェクトからのLNG調達交渉時 に有利な条件で価格交渉を進めることができるメリットもあるという。

天然ガス価格は、シェールガス革命の余波で米国では100万BTU (英国単位熱量)あたり4ドル台で推移しており、欧州での価格も同7 ドル台だ。一方で、経済産業省が発表した4月に日本に到着したスポッ トのLNG調達価格は18ドルと、LNG依存の高まる日本と欧米の取引 価格の間には開きがある。貿易赤字の拡大に歯止めをかけるため、発電 量構成比で最大のLNGをいかに安く調達するかが課題となっている。

来日時にプーチン氏に提案

竹本氏によると、議連は関係省庁とパイプライン構想についての調 整をすでに進めているという。今秋に予定されているプーチン大統領の 来日に合わせてロシア側に正式に計画を提案できるよう、安倍晋三首相 や米国側の理解獲得を目指している。

同氏は、70年近く続く北方領土問題の解決を目指す安倍首相にとっ ても、ロシアから天然ガス購入に繋がるこのパイプライン構想は「北方 領土返還の交渉材料になる」と考えている。ウクライナ情勢の緊迫化で プーチン氏の訪日は流動的との見方も浮上しているが、菅義偉官房長官 は26日の会見で、訪日時期について「2月の首脳会談で合意したものに ついて現時点では何ら変更はない」と話した。

ウクライナ情勢

一方、ウクライナ問題をめぐり米国や欧州連合(EU)との関係が 悪化しているロシアは、中国に目を向けた。ロシアと中国は10年以上の 交渉の末、40兆円規模の天然ガス取引で先週合意。ロシア国営ガス会社 ガスプロムは、シベリア東部に巨大ガス田を開発し、パイプラインを通 じて380億立方メートルの天然ガスを30年間中国に販売する。

FEアソシエイツの石油エコノミスト、藤沢治氏は「ロシアは販路 を広げたい。この前は中国に売って、今度は日本。そうすれば欧州に頼 らなくていい」と指摘。他方の欧州側は、ロシア依存脱却のため、米国 からシェールガスの購入を検討している。

日本側もエネルギーの供給源多様化と価格低減の一環として、電力 各社やガス会社などを中心に米国から安価なシェールガスLNGを輸入 する計画が複数進行している。竹本氏は、天然ガスをLNG化して輸出 すると米国との「コスト競争には勝てない」恐れがあり、パイプライン でガスを供給することはロシア側にとってもメリットがあると述べた。

5年で開通可能

同議連は、2月にまとめた提言書で事業実施計画の骨子を示してお り、総事業費を最大6000億円と試算し、準備開始から5年以内で開通が 可能と予想する。サハリン島南端から北海道、東北を経て、茨城県日立 市まで総延長1350キロメートルのパイプラインを敷設し、天然ガスを沿 線の電力各社に供給する。

海峡部分は海底を通るが漁業権のない地域を経由するために補償問 題がなく、陸上部分では道路など既存のインフラを活用して地下に埋設 することで環境問題もないとしている。輸送量は年200億立方メート ル、LNG換算では年1500万トンと見積もっている。これは昨年度の LNG輸入量の約2割に相当する。

竹本氏は、同事業は公共施設の建設や運営に民間の資金や経営能力 を活用するPFI事業として「十分成り立つ」と述べ、東電や東北電 力、北海道電力などからの天然ガス託送収入から、出融資を受けた民間 の投資家や事業会社、金融機関への利息配当支払いと弁済を行う形式を 想定している。

--取材協力:高橋舞子.

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