安倍政権:プーチン・習接近で戦略立て直し-クリミア重し

安倍晋三政権は、対中関係の緊張が 高まる中、もう一つの隣国であるロシアとの間で70年近く続いてきた北 方領土問題を解決しようと尽力してきた。クリミア問題が発生したのは ちょうどその成果が出ようとしていた矢先だった。

現在、安倍首相は米国が主導する対ロシア制裁措置を支持し、ロシ アのプーチン大統領は中国との接近を図っている。中ロは今週、上海で 首脳会談を開き、尖閣諸島に近い東シナ海では合同軍事演習を実施。そ の急速な接近は安倍政権に外交戦略の立て直しを迫っている。

安倍首相は2012年の就任以来、一貫してロシアとの信頼関係の構築 に尽力してきた。プーチン大統領とはすでに5回会談。他の欧米諸国が 欠席したソチ五輪の開会式にも参加した。ロシアがクリミア編入後の3 月27日に収録・放映されたFMラジオ局のインタビューでも「確かにこ うした問題が起こっているが、日ロ関係の重要性は変わりはない」と発 言していた。

外交問題評議会のシ-ラ・スミス日本担当シニア・フェローは、安 倍首相の対ロ外交をめぐる努力について「日本が北東アジアでの孤立か ら抜け出すための大きなチャンスだった」と指摘。「中ロ両国と同時に 戦略的な関係を築くことは非常に困難で、片方を選ぶことは理にかなっ ていた」とも話した。

日ロ蜜月

13年の日ロ間の貿易額は過去最高となる348億ドル(約3兆5000億 円)を記録。昨年11月には、「日ロ外務・防衛閣僚協議(2プラス 2)」の初会合が東京で開催された。日本にとっては米国と豪州に次ぐ 3例目で、ロシアにとってはアジア諸国で初の相手国となった。一方、 中国や韓国との単独首脳会談はいまだ開催のめどが立たない。

安倍首相が対ロ外交を重視する背景には、エネルギー政策も関係し ている。自民党の木原誠二外務政務官はインタビューで、エネルギー供 給源の「分散化」は必要で、「だからこそ首相は地球儀外交をしてい る」と指摘。ロシアを「依然として一つの有望なパートナー」と位置付 けた。

ウクライナ

ウクライナをめぐり、日本はロシアに制裁を課すG7と足並みをそ ろえ、日ロ関係は停滞した。岸田文雄外相はロシア訪問を取りやめ、政 府は23人のロシア政府関係者の査証(ビザ)発給を停止。秋に予定され ているプーチン大統領の訪日が実現するかはいまだ不透明だ。

国際社会がロシアへの批判を強めるなか、接近を図っているのが中 国だ。20日の中ロ首脳会談後から始まった両国の合同軍事演習は尖閣諸 島に近い東シナ海で実施されている。日本は22日、奄美群島で陸海空の 自衛隊による離島防衛・奪還訓練を実施する。

ロシア軍による日本への挑発行動は新しい現象ではない。防衛省に よると、ロシア機が日本の領海に近づいたとして自衛隊の戦闘機が出動 した回数は13年度の1年間で359回にのぼる。先月は、ロシアの爆撃機 が2機、日本の周辺を飛行した。

菅義偉官房長官は22日午後の記者会見で、奄美群島での自衛隊訓練 について「特定の国や地域を想定して行うものではなく、自衛隊の統合 運営能力の向上を図るためのものだ」と説明した。

共同声明

21日付の産経新聞(電子版)によると、上海で開催された中ロ首脳 会談後に発表された共同声明は、ウクライナ情勢に関連し、「内政干 渉」や「一方的な制裁」への反対を表明。歴史問題では、第2次世界大 戦の終戦70周年に当たる来年に記念行事を合同開催することについて、 「ドイツのファシズムと日本軍国主義」への勝利を祝うものであると日 本を名指しした。

一方、日米両政府が先月発表した共同声明では、尖閣には日米安保 が適用されると記した。

関係改善

前衆院議員で新党大地代表の鈴木宗男氏は、日本はロシアとの関係 を悪化させるわけにはいかないと話す。事務所には2000年に特使として 訪ロしたときに撮影したプーチン氏と握手する自らの大きな写真が飾っ てあった。

鈴木氏は19日のインタビューで、中国は「日本にはアメリカ側にく っついてほしいと思っている」と指摘。日ロ関係が崩れると「中ロ同盟 というのが出てくる」と分析し、日本は米ロの「真ん中にいればいい」 と話した。さらに鈴木氏は、来月ロシアのセルゲイ・ナルイシキン下院 議長が来日する際、安倍首相と面会すべきだとも主張。秋のプーチン氏 来日に道筋をつけることへの期待感を示した。

上智大学国際教養学部のバレット・ティナ助教は、インタビューに 電子メールで回答し、「日本が欧米との架け橋となってくれるのであれ ば、ロシアにとって日本との友好関係を維持することは意義がある」と 指摘。「独立を保つため、ロシアはさまざまな問題について複数の国々 とパートナーシップを維持しなければならない」とし、「そうしなけれ ばロシアは中国の属国になるリスクがある」との見解を示した。

(更新前の記事は上智大学のティナ氏の肩書を訂正済みです)

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