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【クレジット市場】世界一割高な日本国債、GPIF改革で急落懸念も

経済活性化策「アベノミクス」によ る景気回復と物価上昇にもかかわらず低金利が続く日本国債。ドイツ銀 行は世界で最も割高だと指摘し、BNPパリバは年金積立金管理運用独 立行政法人(GPIF)の資産構成見直しなどをめぐり、来月にも急落 しかねないと読む。

ブルームバーグ/EFFAS指数によると、残存期間1年超の日本 国債は直近半年間の投資収益がドルベースでマイナス0.7%と、世界25 カ国・地域で最も低い。長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは 足元で0.6%を割り、米国債の2.51%を大きく下回る。ドイツ銀行のス トラテジストらは9日付のリポートで「日本国債は世界一割高な債券市 場」と記した。

BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストは、このと ころの海外金利の低下やドル安・円高、国内株安は国債相場に追い風だ が、GPIFによる資産構成見直し方針の明確化などをきっかけに「早 ければ6月にかけても大きな動きがあり得る」と言う。

日本銀行の黒田東彦総裁が2%の物価目標を掲げる中、GPIFは 金利上昇で評価損を被りかねない国内債の比率引き下げと収益向上を求 める圧力に直面している。政府はGPIFの資産構成や組織の改革を含 む成長戦略の改定版を来月まとめる方針だ。

長期金利の上振れ

ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、「物価の先行き に関する日銀と債券トレーダーらの見解には隔たりがあるが、いずれ米 国金利の反転や為替相場、国内景気と賃金で埋められる」と言い、幅広 い分野での賃上げや物価上昇が続けば「デフレとは言えなくなる」と語 った。

市場関係者は日銀による巨額の国債買い入れで世界最低に抑えられ ている10年債利回りが来年6月末には0.90%に上昇するとみている。ド イツ証の山下氏は内外景気の回復や物価・賃金上昇の見通に基づくと、 10年債利回りが「年度内に1.5%程度まで上昇してもおかしくない」と 指摘する。

自民党の日本経済再生本部で事務局長を務める山本幸三衆院議員は 20日のインタビューで、GPIFの抜本的な組織改革案を提示。6、7 人の理事による合議制の理事会の下に投資、リスク管理、ガバナンスの 3委員会を設置し、理事長とは別に業務執行責任者ら執行役員を置くと 語った。株式運用はGPIFが直接行えるよう改めると言い、政府と最 低収益目標に関する協定を締結する仕組みも検討中だと話した。

アナウンスメント効果

政府の有識者会議は昨年11月、日本銀行とゆうちょ銀行に次いで国 債保有が多いGPIFに国内債偏重の見直しやリスク資産の拡大検討、 ガバナンス(組織統治)改革などを求める提言をまとめた。権限・責任 が理事長1人に集中する独任制の下では十分な機能発揮が期待できない 場合もあり得ると指摘していた。

安倍内閣の成長戦略改定に向けて自民党の日本経済再生本部が検討 している提言案には、GPIF改革について「強固なガバナンス体制の 構築が急がれ、政府における法改正の必要性を含めた検討の加速を要請 する」との文言が盛り込まれた。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、GPI Fの国内債削減と日本株増加は「金額は大幅には変えられないかもしれ ないが、方向性やアナウンスメント効果が重要だ」と指摘。外国人投資 家の反応が焦点になると述べた。

安倍首相は1月、スイスの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会 議)の基調講演で、GPIFの資産構成の見直しに言及。今月1日には ロンドンで、GPIFの運用改革を訴えた。麻生太郎財務相は先月16日 、GPIFの動きが6月以降に出てくるので外国人投資家が動く可能性 が高まると発言。翌17日にはGPIFの運用のあり方を6月までの成長 戦略の改定作業で検討していくとした。

日銀が手薄なゾーン

GPIFの資産構成比率を定めた基本ポートフォリオは、国内債が 60%、国内株が12%、外国債券が11%、外国株が12%となっており、資 産ごとにある一定の乖離(かいり)幅が許容されている。昨年末時点で は国内債が55.2%と06年度の設立以降で最低となる一方、国内株は17.2 %と07年12月末以来の高水準を記録した。GPIFが注視する年金特別 会計分も含めた実績は国内債が53.4%、国内株は16.7%だった。

JPモルガン・アセット・マネジメントの塚谷厳治債券運用部長は 、日銀による巨額の国債買い入れが続く限り「金利は上がらないので、 債券は黙って持っておくのが良い」と話す。低金利の中でも投資妙味が 残っている年限は「日銀があまり買っていないゾーン、保有比率が低い ゾーンだ」と言い、償還まで6-9年や15-20年の国債が割安に映ると 指摘した。

日銀は2%の物価目標を2年程度で達成するため、経済全体に供給 する通貨量を示すマネタリーベースを倍増させる「量的・質的金融緩和 」を昨年4月に導入。月6兆-8兆円に及ぶ長期国債の買い入れ規模は 、政府が今年度に入札を通じて機関投資家に販売する国債の市中発行額

155.1兆円の半分を上回る。

物価と経済成長

前例のない金融緩和は円安・株高を通じて景気回復を促し、消費者 物価指数(生鮮食品を除く全国)を押し上げている。発表済みの最新の 統計では、3月が前年比1.3%上昇となり、昨年12月に付けた08年10月 以来の高い伸びに4カ月連続で並んだ。

日銀は先月末に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート )で、4月からの消費増税の直接的な影響を除いても、今年度後半から 再び上昇傾向をたどり、16年度までの「見通し期間の中盤頃に2%程度 に達する可能性が高い」との見通しを示した。

10年債と20年債の利回り格差は昨日時点で87ベーシスポイント(b p、1bp=0.01%)。量的・質的緩和が始まった昨年4月には65bp 程度まで縮小する局面があった。外国為替市場では、円がドルに対して 安倍内閣が発足した12年末から18%前後まで下落し、企業収益や輸入物 価の押し上げ要因となっている。

17年ぶりの消費増税の直前に当たる1-3月期の国内総生産(GD P)速報値は実質成長率が前期比年率5.9%と2年半ぶりの高い伸びを 記録した。個人消費と設備投資がけん引役となった。設備投資に半年程 度先行する機械受注は3月に前月比19.1%と1996年以来の大幅増。消費 増税直後となる4-6月期の受注予測も前期比0.4%と増勢を維持する 見通しとなった。市場関係者は実質成長率が4-6月期にマイナス3.4 %に落ち込んだ後、7-9月期は2%に回復するとみている。

--取材協力:近藤雅岐.

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