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安倍首相、ノーベル経済学賞米シラー氏の助言仰ぐ-萎縮マインドに活

17年ぶりの消費税率引き上げを3週 間後に控えた安倍晋三首相は、経済革命に不可欠な要素を立て直すため 米国のノーベル経済学賞受賞者ロバート・シラー氏に助言を求めた。そ れは楽観主義だ。

安倍首相は3月10日に都内でエール大学のシラー教授と会談し、15 年に及ぶデフレで陥った日本の「萎縮マインド」を反転させるにはどう したらよいか話し合った。安倍首相は約100人の広報チーム、テレビ番 組への出演、アベノミクスのようなキーワードを動員して、賃上げ、投 資、支出を促すリスクを取る精神の復活を図ろうとしている。

2009年に共著「アニマルスピリッツ」を出版したシラー教授は、 「革命のような響きを持つことが重要だ」と話し、「アニマルスピリッ ツを起こすことは大衆の精神をつかむことだ。それは時代精神だ」と指 摘した。

アベノミクスによって消費者物価、信頼感は上昇したが、4月から の消費税引き上げで企業や家計の心理は落ち込んだ。安倍政権はこれを 一時的なものに終らせることが使命だ。6月に発表する成長戦略改訂版 がアベノミクスの次の試金石になっている。

シラー教授によると、安倍首相との会談では財政支出、金融緩和に 続く「第3の矢」について話し合われた。第1の矢と第2の矢では、消 費税増税の影響を打ち消し、賃上げや投資の動きを促進するまでには至 っていない。

心理を鼓舞

独立行政法人・経済産業研究所(RIETI)の上席研究員、関沢 洋一氏はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、アベノミクス の主要な部分は心理学との見解を示した。安倍首相のテレビ番組での発 言を見ると、自分がポジティブな気持ちでいることによって、人々の気 持ちを変えていくということを考えているのではないかとみている。

安倍首相は3月21日のフジテレビの番組「笑っていいとも!」で、 「私がマイナス志向になると、日本全体にも影響していく可能性があ る。その意味においても気持ちを明るくしている」と述べた。

内閣府によると、安倍首相が12年12月に就任して以来、消費者態度 指数は上昇し、国民の現在の生活に対する満足度は18年ぶりに70%を超 えた。アベノミクスは昨年、グーグル・ジャパンの定義や意味を調べる 検索急上昇ランキングで1位となった。

しかし、心理を改善させるというアベノミクスの初期の成功は昨年 下半期に、株高の勢いが止まった上に消費税引き上げを控えていたこと もあって色あせ始めた。

消費者態度指数は昨年5月に6年ぶりの高水準を付けたが、今年4 月は消費税引き上げを受けて11年8月以来の低水準となった。15年3月 期の大企業の設備投資計画は前期比0.1%増にとどまっている。

ドンペリニヨン

高級クラブ「稲葉」など銀座で4店を経営する白坂亜紀さん(47) はアベノミクス効果について、10万円以上の「ドンペリニヨンがポンポ ンと出た。去年はそういう抜きものが増えたと思う。ちょっと気分でワ インを抜いてもいいよという感じになった」と述べた。

白坂さんは景気実感について、「給料が上がるところまでは行って いないと思う。売り上げが上がっても今までのマイナスを補充するのに いっぱいいっぱいで、女の子の給料を上げるところまではいっていな い」と漏らした。

日本総合研究所の副理事長、湯元健治氏は「大多数の人は、期待は 芽生えているけど、自分が行動しようかというところまでは行っていな いというのが今の状況」と指摘した上で、「そういう意味で今年が正念 場」という。

安倍政権は6月に取りまとめが予定されている成長戦略改訂版で、 法人税の引き下げや、規制を大幅に緩和した国家戦略特別区域の詳細な どを盛り込む見通し。

シラー教授は「第3の矢には労働市場の硬直性の緩和が盛り込ま れ、企業が従業員を解雇しやすくなるかもしれない」との見通しを示し た。一方で、アベノミクスで出てきたポジティブなムードが失われるこ とを懸念し「桶の水といっしょに赤ん坊を流さないように注意する必要 がある」と述べた。

ドジョウ

安倍首相の態度は、自分をドジョウに例え汗を流して地道に政策を 進める方針を示した野田佳彦前首相と好対照をなしている。ジャーナリ スト出身の谷口智彦内閣官房参与は、悲観的に見せることは日本人の趣 味のようなもので一国のリーダーは応援団長のように振る舞うべきだと 述べた。

安倍首相が日銀総裁に起用した黒田東彦氏は3月のロンドンで講演 で、26回にわたって人々の期待に言及した。黒田総裁は3月15日、都内 で講演し、「われわれが目指すのはアニマルスピリッツを復活させるこ とだ。成長期待や成長力を高めるための一つの重要なピースだ」と述べ た。

賃金のベースアップと規制や投資分野での目に見えた改革がないと 国民が忍耐を失いつつある兆しが出ている。

タクシー運転手の川崎一慶さん(27)はアベノミクスについて「こ うだよ、こうだよと言って国としては好景気なのかとマインドコントロ ールされつつある。実際問題、お客さんの大半は口だけじゃないかと言 っている。下まで単純に降りてこない」と述べた。

15日に発表された1-3月の国内総生産(GDP)速報は前期比年 率で5.9%増と6四半期で連続でプラス成長となった。4月の消費税率 引き上げ前の駆け込み需要で個人消費が好調だったためだが、安倍政権 はこの勢いを今年下半期以降も維持する必要がある。

甲南大学経済学部特任教授の筒井義郎氏(行動経済学会常任理事) は、アベノミクスについて「口先だけでやれることはかなりやってい る。実体経済がやっぱり動いてくれないと」と話した。

原題:Abe Taps Nobel Laureate Shiller to Expand Japan’s Shrunken Minds(抜粋)

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