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神話とタブー克服へ開かれた重い扉、改革の旗手に試練か

集会の会場に到着したメキシコのペ ニャニエト大統領(47)は、ロックスター並みの熱烈歓迎を受けた。

メキシコ東部のベラクルス州で3月18日に開催された年に一度の記 念集会には、地元住民やメキシコ国営石油会社(ペメックス)の従業員 数百人が集まり、1938年の政府による外国企業からの油井収用とペメッ クスの創業を祝った。男性従業員が着ているシャツにはペメックスのロ ゴ。集まった人々は大統領に少しでも近づこうと腰までの高さの柵から 体を乗り出した。ブルームバーグ・マーケッツ誌6月号が報じている。

部外者がこの様子を目にしたら、ペニャニエト大統領がわずか3カ 月前に、ペメックスの強力な労働組合と政界の労組支援者らが数十年間 にわたって反対してきた同社に関連する憲法改正案に署名したなどと は、決して想像できなかっただろう。その改正は、76年ぶりにメキシコ の石油・天然ガス資源への外国と民間からの投資に道を開くものだ。

「将来への大いなる飛躍に向け、神話とタブーを打ち破ることを決 断した。メキシコの新たな歴史が始まる」。昨年12月20日に改正法案に 署名した後、同大統領は国民に対してこう宣言した。

それでも大統領は、ぺメックスの従業員約15万3000人の誰一人とし て職を失うことはないと請け合うことを通じ、3月のこの集会で大いに 喝采を浴びたのだ。

格付け引き上げ

ペメックスは常に国家の主要な力の源泉となってきた。メキシコ最 大の企業であり、最大の納税主体でもある。2013年10-12月(第4四半 期)には売上高の50%に当たる160億ドル(約1兆6200億円)を連邦政 府に納税した。一方で、同四半期に58億ドルの損失を計上。13年の通期 損失は130億ドルに膨らんだ。14年1-3月(第1四半期)の損失は27 億4000万ドル。

憲法改正を受け、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サ ービスは2月に、成長率押し上げ効果が期待できるとして、メキシコの 信用格付けを1段階引き上げ、 「A3」とした。

ぺメックスにとってこの改正は、原油の増産に向けて必要としてい た支援が受けられることを意味する。同社の原油生産は9年連続で減少 し、月間産油量は3月末には1995年以来の低水準まで落ち込んだ。

また、米シェブロンやエクソンモービル、英・オランダ系ロイヤ ル・ダッチ・シェルなどの外国の石油大手は、未開発の原油へのアクセ スが可能となる。ぺメックスによると、メキシコ湾の深海に眠る266億 バレルを含め、未開発の原油は計1130億バレルに達する可能性がある。 これは、現在の相場で換算すると11兆ドルに相当する。メキシコ政府 は、外国からの投資に加え、ぺメックスの老朽化したインフラを刷新す ることにより、今年3月末時点で日量247万バレルだった産油量が2025 年までに同400万バレルに増加すると予想している。

ハンディキャップ

ただ、ぺメックスの将来にとって重要な課題は人材の確保だ。ぺメ ックスの元ディレクター、マルセロ・メレレス氏によると、同社は終身 雇用が保証されている未熟練労働者が過剰な一方、エンジニアや熟練労 働者が不足している。

「ぺメックスは引き続き企業文化の面で大きなハンディキャップを 抱えている。政府は同社を極めて官僚的な組織にしてしまった。政府機 関のように運営されており、国際的な石油会社のようには見えない」と メレレス氏は指摘する。メキシコの教育制度の欠陥も、ペメックスが外 国企業と競争していく能力を損なうだろう。

シェール層に熱い視線

掘削を担当するのが誰であっても、メキシコにとって最も有望な開 発分野の一つはシェール鉱床だ。米格付け会社スタンダード・アンド・ プアーズ(S&P)の中南米担当マネジングディレクター、ビクトル・ エレラ氏によると、メキシコのエネルギー改革においてシェールオイル は大きな努力をしなくても「容易に達成できる目標」で、今年下期(7 -12月)にも新たに探査が始まる見込みだ。

「米テキサス州から多くの投資が急速に流入しそうだ」と同氏は語 る。メキシコ北部の未探査のシェール層の一つは、豊富な埋蔵量を誇る テキサス州のイーグルフォード・シェール層から国境を越えて広がって いる。

ぺメックス幹部らは、ガス田探査には外からの支援が欠かせないと 指摘する。メキシコは深海掘削でも外部の専門技術を必要としている。 石油サービス会社の米ベーカー・ヒューズによれば、ぺメックスがメキ シコ湾で保有する深海プラットフォームは4基と、米国側の53基を大幅 に下回る。

ペニャニエト大統領は3月の集会でぺメックスの従業員たちに対し 「今回のエネルギー改革はメキシコにとって過去50年で最も重要な経済 面での変革だ」と語り掛けた。

その成否はぺメックス自体がどのくらい早くエネルギー改革の恩恵 を受けられるかにかかっている。

原題:Mexico Oil Opening May Be Foreigners’ Gusher as Pemex Struggles(抜粋)

--取材協力:Carlos Manuel Rodriguez.

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