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【コラム】「黒田プット」に落とし穴はないか-Wペセック

かなり前に「グリーンスパン・プッ ト」という言葉を世界の市場でよく耳にしたものだが、日銀総裁が近く 実施するかもしれない「黒田プット」には世界の市場はまだなじみがな いだろう。

15日に発表された日本の1-3月実質GDP(国内総生産)の劇的 な数字は無視しよう。デフレに苦しむ経済状況下で17年ぶりに消費税を 引き上げるとなれば、駆け込みで買い物をする消費者が急増する。前期 比年率での5.9%成長の理由はそこにある。しかし、統計発表後の黒田 東彦日銀総裁のコメントは注目に値する。成長力を引き上げる緊急性が 高まっているということだ。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のチーフ・グローバ ル・エコノミスト、ポール・シェアード氏は日銀が既に巨大な規模の金 融緩和を近く「倍賭け、あるいは3倍賭け」に打って出る可能性がある と考えている。日本株が今年に入って下落していることに自民党はいら 立っており、黒田総裁に1年前の緩和策以上のことを求める圧力がかか っている。こうしたことから黒田プットがささやかれている。

こうしたプットの概念が市場で広まったのはアラン・グリーンスパ ン氏が米連邦準備制度理事会(FRB)の議長を務めた時代だ。日銀が これまで講じてきた市場支援策の多くは国債の買い入れなどだ。

信用創造

これが変わろうとしている。日銀の緩和は望んだほど信用創造を押 し上げていない。融資の伸びの勢いが衰え、株式投資のリターンが低下 する中、大手邦銀3グループはいずれも2015年3月期は減益になるとの 見通しを示した。

黒田総裁はデフレ脱却に全てを挙げて取り組む評価の高いエコノミ ストだ。安倍晋三首相は消費者需要と企業の信頼感を押し上げるための 構造改革についてまだ答えを出していない。不公平なことだが、そのた めに黒田氏が重荷を背負わされている。日銀が大きな追加刺激策を実施 した場合、債券トレーダーはおとなしく傍観するだろうか。そんなこと は分からない。

ワイマール共和国

黒田総裁にとって難問の一つはイエレン議長率いるFRBがつくり 出しつつあるとみられる隙間を埋めることだ。FRBが刺激策の縮小に 動く中で、日銀は世界の流動性の喪失を相殺する必要性を感じる可能性 がある。最大の顧客である中国の需要に打撃を与えれば特にそうだろ う。日本で大きなインフレ問題が持ち上がるとの見込みは低い。急速な 高齢化や中国の景気減速はデフレ圧力を高めるだけかもしれない。だが 問題は債券夜警団がどう動くかだ。

日本が世界で最も重い債務負担をしのいでいるのは、政府債務 の90%以上が国内で保有されているからだ。だからといって日銀がワイ マール共和国がたどった道を行くと不安に思えば、銀行や年金基金、保 険会社、退職者がおとなしく傍観しているという保証はない。黒田プッ トが世界市場の静けさを保てるかどうかは時間だけが教えてくれる。 (ウィリアム・ペセック)

(ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニストです。コラ ム内容は同氏自身の見解です。同氏のツイッターは@williampesek)

原題:Today’s Good Growth News From Japan Is Terrible: William Pesek(抜粋)

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