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【クレジット市場】黒田日銀効果は薄れる、スワップ金利と株価が示唆

リスク資産への投資を再び活発化さ せ、インフレ基調を維持するためには、日本銀行は一段の金融緩和策が 必要だ、と金利スワップ市場や株式市場がサインを送っている。

円建ての金利スワップ相場では、10年物のスワップレートが一時

0.75%前後と昨年11月以来の低水準を付けた。投資家が先行きの経済指 標の悪化に備え、受け取り金利の目減りを回避する動きに出ていること がうかがえる。日経平均株価も年初来14%近く下落している。

黒田東彦日銀総裁は、4月の消費税率引き上げ後の駆け込み需要の 反動は「想定内」であり、物価は2015年度を中心とする期間に2%の目 標に達する可能性が高いと表明している。一方、エコノミスト32人を対 象にブルームバーグ・ニュースが2-8日に実施した調査では、29人が 日銀は15年度中に物価目標2%を達成できないと予想している。21人が 日銀は長期国債買い入れを増額するとみている。

BNPパリバ証券の藤木智久チーフ債券ストラテジストは、「日銀 にとって一番の目標はインフレの達成。それが覆されるような指標が確 認できなければ、日銀にとっては今すぐ動くということにはならない」 としながらも、追加緩和の実施は早ければ4-6月期の国内総生産(G DP)を見て、7月以降にも観測が強まると予想している。

10年物のスワップレートは、同年限の国債利回りを約17ベーシスポ イント(bp、1bp=0.01%)上回る水準で推移している。同水準は 2月に22bp程度の場面もあった。

UBS証券の井川雄亮債券ストラテジストは、スワップレートと国 債利回りの格差に変化が起きている背景について、「銀行勢が国債保有 リスクを減らしているので、日銀以外の国債の買い手はあまりいない」 と指摘した上で、市場では「国債保有からスワップで取る流れがある」 と言う。

日銀は、4月30日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)」で、2016年度の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI )は前年比2.1%上昇(消費税率引き上げの影響を除く)と、昨年4月 に掲げた2%の目標に向けて安定的に持続する見通しを示した。

スワップ市場

日銀は、国債の最大の買い手となり、長期国債の保有残高が年間約 50兆円ペースで増加するよう買い入れを実施している。これは今年度の 国債発行計画の約42%に相当する。

10年物のスワップレートは足元で0.755%前後と、1年前の0.9%台 半ばから低下。長期金利の指標である新発10年債利回りは0.580%と、 前年比で26bp近く低下し、世界最低水準を維持している。

長期のスワップレートと国債利回りの格差は、円相場や株価に連動 する仕組債の販売状況が反映されているとの声も聞かれる。株価や円相 場の動向により変化する金利リスクを回避するため、スワップ取引が使 われるという。

みずほ証券の末広徹マーケットエコノミストは、「一般的に長期や 超長期のスワップスプレッドにはデリバティブ商品のヘッジニースが反 映されやすいと言われている」と指摘。「例えば、株安になれば、スワ ップの受けが増え、現物とのスプレッドが縮小しそうだということを見 越して投資する人も実需の他にいるだろう」と続けた。

追加緩和を促す要因

円相場は、昨年18%下落し、全国コアCPIを昨年12月に前年比

1.3%上昇と5年ぶりの高水準に押し上げる要因となった。半面、今年 に入ってからの円相場は3%を超える上昇、全国コアCPIは頭打ち状 態だ。日経平均株価は、先進国の代表的な指数の中で最悪のパフォーマ ンスとなっている。昨年は57%上昇し、約40年ぶりの大幅高を記録して いた。

黒田総裁は15日、参院財政金融委員会で、金融政策について、「株 式市場の動向は注意してみていく。物価目標への道筋外れる懸念あれば ちゅうちょなく調整を行う」と発言した。

日本の1-3月期の実質GDPは前期比1.5%増加、年率5.9%増加 となり、市場予想(前期比1.0%増、年率4.2%増)を上回った。消費増 税前の駆け込み需要により、個人消費の伸びが、全体を押し上げた。一 方、ブルームバーグ予測調査によると、4-6月期の実質GDPは年率

3.3%減少と約3年ぶりの大幅なマイナス成長が見込まれている。

SMBC日興証券の野地慎シニア金利ストラテジストは、日銀の目 指す物価目標について、「物価が上昇しないわけではないだろうが、期 限内に2%目標を達成するのは難しいだろう」と言う。

ブルームバーグデータによると、国債のボラティリティ(変動率、 60日)は前日、1.07%と12年12月以来の低水準を付けた。「もともと海 外勢の間では、現金が必要な現物よりもスワップレート取引の方が盛ん だったが、日銀の異次元緩和で国債の流動性が枯渇してしまった今、海 外勢にとって現物取引はますます手掛けにくくなってしまった」、と三 菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケット・エ コノミストは語った。

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