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日本を守る、夢追う防衛大生-安倍政権下で受験者が1万5000人突破

防衛大学校(神奈川県横須賀市)の 4年、飯田睦さん(22)の一日は、寝泊りする「学生舎」のスピーカーか ら鳴り響く午前6時の起床ラッパの音で始まる。消灯時間の午後10時30 分まで勉強、スポーツ、そして自衛隊幹部候補生としての基礎的な訓 練。男子学生と同じ、分刻みのスケジュールだ。

防大を選んだのは海上自衛隊の幹部になることを志望したから。 「日本は島国なので、そういった環境下では一番最先端で国防で携われ る道かな、ということ。そういった現場で働きたい」と話す飯田さん。 夢は護衛艦の仕事に就くことだ。

自衛隊の活動を拡大する「積極的平和主義」を掲げる第2次安倍晋 三政権が誕生してから約1年5カ月。今年は過去5番目に多い571人の 若者が防大に入学した。受験者数もここ2年増加。今年入校した62期の 受験者数は1万5428人と4年前の58期に比べ約2000人増加している。

2011年の東日本大震災などでの災害救助への国民からの称賛や、尖 閣諸島をめぐる中国との対立などで自衛隊の活動が報道されることが多 くなった。安倍首相は15日の記者会見で、積極的平和主義の考え方は欧 米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国から「高い支持」を得て おり、「世界が日本の役割に期待している」と語った。

世論調査

平和主義を掲げた憲法と第2次世界大戦の旧軍への反感から、自衛 隊員は社会から隔離された存在とみなされがちだった。

12年に就任した国分良成学長は、欧米では軍人も一般の市民社会の 1人として扱われるが、日本では長くそういう風に扱われてこなかった と指摘する。「なんとなく遠くみられて、少しある種の偏見まであった と思う。それが今変わってきている」と話す。

政府が12年に行った世論調査では、自衛隊に「良い印象を持ってい る」と回答した人が90%を超えた。1991年には67.5%だった。これとは 別に防衛省が自衛隊志願者の男性に毎年行っている調査では、志望動機 に「国のため」を挙げた人は2012年で約30%に達している。

リーダーシップ

一般の大学生も学ぶ教養、専門などのほか、独自の科目である「防 衛学」、銃を分解して組み立て直す技術や隊列を組んで歩く訓練もこな す。食事は2000人が入るホールで取り、授業が終わると剣道、柔道、相 撲などを含めた運動部の活動で汗を流す。

1983年に卒業した海上幕僚幹部の大塚海夫指揮通信情報部長(海将 補)は、防大で叩き込まれたリーダーシップに関する技術は自分の仕事 に役立っているという。時間をもてあますこともなく、普通の大学に行 くよりいい教育が受けられたと若き日を振り返る。

平和憲法

第2次世界大戦の敗戦で旧軍が解体された日本。自衛隊は戦後に警 察予備隊、保安隊を経て1954年に発足した。米国が原案を作った日本国 憲法によってその活動は制限され、約60年間にわたって自衛官は戦場で 一発の銃弾も撃ったことはない。

ただ、尖閣諸島をめぐる中国との緊張は高まっており、中国の飛行 機に対する航空自衛隊機の緊急発進(スクランブル)は14年3月までの 1年間で415回を記録した。安倍政権はこれまでの政府の憲法解釈で禁 止されてきた集団的自衛権行使を限定的に容認する問題などについて与 党との協議を開始する。自衛隊の役割はこれまで以上に拡大する見通し だ。

新入生の中には防大での新生活への驚きと将来への不安を口にする 学生も。北海道から来た割方誠一さん(18)は「すごいところに来てしま った」と話す。入校前から防衛大学校の生活の話を聞かされていたもの の、「それをはるかに上回る過酷さというか生活の厳しさ、規律の厳格 さで驚きっぱなし」という。

北朝鮮の核、弾道ミサイル開発や中国の尖閣諸島周辺での活動など 日本を取り巻く安全保障環境は近年、厳しさを増している。割方さんは 「あまりしたくはない話」としながらも、「将来、私が任官してから、 戦争になってしまうとかそういうことになった時に果たして本当に自分 は命のやり取りができるのか」と悩みを打ち明けてみせた。

--取材協力:広川高史、高橋舞子、谷合謙三.

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