首相:集団的自衛権行使の限定的容認、憲法解釈変更で研究進める

安倍晋三首相は15日夕の記者会見 で、これまで政府が憲法解釈で禁じてきた集団的自衛権の行使の限定的 な容認について政府として研究を進める考えを示した。与党とも協議を 開始し、必要なら憲法解釈の変更を閣議決定し、法整備を行う。ただ、 憲法解釈変更には自民党と連立政権を組む公明党が慎重姿勢を示してお り、来週から始まる与党内調整が今後の焦点となる。

自身の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談 会」(安保法制懇、座長・柳井俊二元駐米大使)が、集団的自衛権の行 使容認は憲法改正によらず、解釈変更によって可能とする報告書を提出 したのを受け、会見した。

首相は、今後の安全保障政策について「国民の命と暮らしを守るた めの法整備が、これまでの憲法解釈のままで十分にできるのか、さらな る検討が必要」と表明。内閣法制局の意見や与党協議の結果を踏まえて 憲法解釈の変更が必要と判断すれば、それも含めた「改正すべき法制の 基本的方向」を閣議決定し、国会で議論を進めるとの考えも示した。

森本敏拓殖大学特任教授(前防衛相)は12日、自民党本部での講演 後の質疑で日本の集団的自衛権行使を可能とするための憲法解釈の変更 は、「米国をこの地域に引き留めておくためにどうしても日本が自主的 に解決しなければならない極めて重要な安全保障課題」と語った。

報告書は個別的か集団的かを問わず、「自衛のための武力行使は禁 じられていない」と指摘。軍事的措置を伴う国連の集団的安全保障措置 への参加に「憲法上の制約はない」との見解も示した。

これに対し、首相は会見で「憲法は、こうした活動のすべてを許し ているとは考えない」と述べ、現行憲法下で容認できる集団的自衛権行 使や集団安全保障措置は限定的なものになるとの認識を示した。「自衛 隊が、武力行使を目的として湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加する ようなことは、これからも決してない」とも語った。

公明党

自民党は2012年の衆院選で掲げた政権公約で「集団的自衛権の行使 を可能とする」と言及。その後、誕生した第2次安倍政権は、これまで 以上に世界の平和と安定に役割を果たす「積極的平和主義」を掲げ、国 家安全保障会議(NSC)の設置、武器輸出3原則の見直しにも踏み切 った。集団的自衛権の行使容認も、こうした安全保障政策の改革の一環 として今後、政府・与党内での検討が進められる。

自民党の高村正彦副総裁は14日の講演で、集団的自衛権の問題など に関する公明党との協議を20日に開催するとの見通しを示している。公 明党の北側一雄副代表は、4月26日付の公明新聞のインタビューで、現 在の安全保障上の課題は現行法制でも対応可能である可能性があると し、「すぐに集団的自衛権の行使容認をする必要性は感じない」と語っ た。同氏の発言は公明党がウェブサイトに掲載した。

政府見解

2013年度の防衛白書は集団的自衛権を「自国と密接な関係にある外 国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、 実力をもって阻止する権利」と定義。その上で、日本はその権利を有し ているものの、行使については「憲法第9条のもとで許容される実力の 行使の範囲を超えるものであり、許されない」とするこれまでの政府見 解を紹介している。

「安保法制懇」は第1次安倍政権の07年にいったん設置された。08 年にまとめた報告書では、公海における米艦船の防護などで集団的自衛 権の行使を認めるよう政府に提言したが、安倍首相が既に退陣した後だ ったため、その後の政府の検討は進まなかった。

今回の報告書は自衛隊が行使できる「必要最小限度」の措置に集団 的自衛権は含まれないとしてきた従来の憲法解釈は「適当ではない」と 指摘。アジア太平洋地域の緊張が高まっていることなどを挙げ、「今日 の日本の安全が個別的自衛権の行使だけで確保されるとは考えがたい」 との見解を示した。

その上で、集団的自衛権行使が認められるという判断は「政府が適 切な形で新しい解釈を明らかにすることによって可能」との考え方を打 ち出している。

安保法制懇の柳井座長は報告書を提出した後、記者団に対し、憲法 改正ではなく解釈変更を提言した理由について、「改正して明確にする ことは理論的には望ましいが、日本国憲法の改正規定は大変難しくでき ていて、まず現実的には不可能に近い。その間に国際情勢はどんどん厳 しくなっていく」と語った。

グレーゾーン

懇談会では現行法では離島や海上で民間人や船舶に武装集団が不法 行為を行うケースなど、ただちに自衛権発動には至らない「グレーゾー ン」事態への対応についても議論。報告書は、切れ目のない対応をする ための「包括的な措置が必要」と法整備を求めた。

安倍首相は会見で、グレーゾーン事態について「対処を一層強化す る」と言明。国連平和維持活動や後方支援など「国際社会の平和と安定 に一層貢献していく」とも述べた。

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