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フラジャイル・ファイブ脱却の夢を乗せて巨大空港の建設進む

トルコ経済は2011年までの10年間、 ほぼ毎年拡大を続け、10、11年は約9%成長に加速した。しかしその 後、成長率は約半分に鈍化し、ブルームバーグがまとめたエコノミスト 予想の中央値によれば、2014年には2.6%まで落ち込む見通しだ。

さらに経常赤字の国内総生産(GDP)比率は約8%に上昇。モル ガン・スタンレーが新興市場国の中で世界的な金利上昇で特に大きな打 撃を受けると見込む「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」の1 つとされた。

この1年の間にトルコは反政府デモや政治の不透明感、大規模な汚 職スキャンダルに加えて、米金融緩和の縮小という打撃にも直面し、投 資家離れが起きている。ブルームバーグ・マーケッツ誌6月号が報じ た。

エルドアン政権への全国的な抗議行動が始まった昨年5月30日から 今年3月30日までの間、トルコ株の指標であるイスタンブール100指数 は21%下落。通貨トルコ・リラも14%下げた。トルコ中央銀行のデータ によれば、13年5月30日から14年2月末の間に海外投資家のトルコ株投 資は5億ドル(約510億円)の売り越しとなり、トルコ債券の売り越し 額は28億ドルに達した。

投資家を一時引き付けた同国の野心と、裏に潜んだ危険な政治・経 済上の対立を理解しようと思うなら、現在同国が推し進めている巨大建 設プロジェクトを見る必要がある。同国のGDPに占める建設支出の割 合はエルドアン首相率いる公正発展党が与党となった2002年には3.5% だったが、13年には2倍の7%に達した。ガランティ銀行の推定によれ ば、政府が契約したインフラプロジェクトのうち約1000億ドル相当が向 こう5年の間に完了する見通しだ。

巨大プロジェクト

自らの大きな野望を反映するかのように、エルドアン首相はボスポ ラス海峡に架かるつり橋など巨大プロジェクトを好んできた。19年まで の開業を予定するイスタンブールの空港も建設予算140億ドルで敷地面 積はマンハッタンよりも広く、年間1億5000万人の利用者を見込む。リ マク・ホールディングなど5社から成る企業連合が222億ユーロ(約3 兆1200億円)で落札した。

この巨大な空港建設は商業上の必要性というよりも国家の威信発揚 が目的ではないかとの批判もある。英王立国際問題研究所のトルコ問題 専門家、ファディ・ハクラ氏は「この種のプロジェクトは事実上、高慢 さの産物だ」と指摘した。

逆張り

海外投資家が資産をトルコから避難させる中、一部の逆張り投資家 は倍賭けを行った。ブラックロックの欧州新興国投資信託のロンドン在 勤運用担当者、デービッド・リード氏は「われわれは概して、ほかの人 たちがおじけづく時に危険に挑みたくなる」と述べた。昨年12月半ば以 後、トルコのポジションを積み増してきた同氏は、銀行業界など一部セ クターのバリュエーション(株価評価)は09年以降で最も妙味があると 説明した。

ロンドンに拠点を置き、260億ポンド(約4兆4700億円)相当の資 産を運用するエルメス・ファンド・マネジャーズの新興市場担当運用担 当者、ゲーリー・グリーンバーグ氏もトルコへの投資配分を増やした。 「同国の絶好の地理的位置と、欧州連合(EU)との関税同盟が今も競 争上の強みになっている」と述べ、「引き続き労働力の面でも欧州と比 べて極めて競争力がある」と付け加えた。

最近の動きはこうした逆張り投資家の見通しの一部が正しかったこ とを証明している。4月24日時点でイスタンブール100指数は3月3日 の安値から25%上げた。同期間のMSCI新興市場指数の上昇率 は5.6%にとどまっている。

同国では家計消費が伸びており、GDPに占める割合は現在67%。 消費者は多額の借り入れで支出を賄っている。家計債務の可処分所得比 率は02年時点では4.7%だったが、現在は50%を超えた。世界銀行によ れば、国内貯蓄のGDP比率は1990年代の23%から2010年には12.7% と、1980年代以来の低水準となっている。

国際収支危機

トルコ経済に関する投資家の懸念を一言で表すとしたら、経常赤字 ということになる。経常赤字を埋めるためには借り入れが必要であり、 債務が増えれば増えるほど通貨への下押し圧力が高まる。場合によって は、通貨急落で経済が大打撃を被る国際収支危機に至る恐れがある。

トルコ中銀は通貨防衛でドル売り介入を実施した1月以降、国際収 支危機の回避に努めてきた。同中銀は1月28日の臨時会合で、主要政策 金利である1週間物レポ金利を4.5%から10%に引き上げ、翌日物貸出 金利も7.75%から12%に上げた。エルドアン首相からは低金利を維持す るよう政治的圧力がかかっていたが、同中銀は利上げに踏み切った。

ただ、同中銀がリラ防衛の闘いで敗北するとの見方もある。50億ド ル相当の資産を運用するヘッジファンド会社エマージング・ソブリン・ グループは1月の投資家向けリポートで、「トルコは典型的な国際収支 危機の要因が全てそろっており、われわれが予想した通りの急展開を見 せている」と分析した。しかしその後、トルコの貿易赤字は予想を下回 り、リラは安定してきている。

楽観派はこの極めて厳しい時期の終わりが近づいていると考えてい る。一方、底はまだ見えないというのが悲観派の見方だ。

原題:World’s Largest Airport Rises as Turkey Flies to Fragile Five(抜粋)

--取材協力:Taylan Bilgic、Ercan Ersoy、Benjamin Harvey.

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