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マフラー音にときめく、アバルトへ乗り換え-小型輸入車が好調

松倉太一さん(42歳)は2月、8年 間乗っていたホンダのSUV「CR-V」から、イタリアの小型車「ア バルト595C」のコンバーチブルタイプに乗り換えた。インターネット で見ているうちに欲しくなり、販売店で試乗して「心を奪われた」とい う。

「一番どきどきしたのはマフラーのサウンド。ゲロゲロって音がし て、ずっと乗っていたいと思った」-。インテリアの色使いを含め、イ タリアらしいところが良いと松倉さんは興奮気味に魅力を語った。「国 産車は故障がなくて安心だったが、所有する喜びは輸入車が高い」と指 摘。アバルトの価格(消費増税後は約358万円)はホンダCR-V(同 約257万円から)と比べ、「大きな抵抗はなかった」という。

輸入車の販売台数は、小型車のラインアップ拡充に伴い2009年以 後、毎年伸びている。日本自動車輸入組合が発表した13年度の外国メー カー車新規登録台数は30万2018台で、国内登録車市場に占める外国メー カー車の割合は過去最高の8.8%となった。

日本自動車輸入組合理事長で、メルセデス・ベンツ日本社長の上野 金太郎氏は、世界的なダウンサイジングの流れから海外メーカー各社 が200万-300万円台の小型車を相次ぎ投入していることに触れ、「大き い」「高い」という理由で輸入車を敬遠してきた消費者が関心を持ち始 めていると語った。

小型車戦略

メルセデス・ベンツの日本販売台数は13年、前年比で28%増えた。 貢献したのは13年1月に発売した新型Aクラスなどの小型車だ。上野社 長は「28%増は通常販売に小型分が乗っかった形」であり、新規購入者 の5割程度は他ブランドからの乗り換えだったと述べた。

メルセデスは12年に小型車の新型Bクラスを投入した際、日本のタ ワー駐車場にも適応できるよう車高が20ミリ低くなるサスペンションを 装着するなど、日本市場での利便性を意識してきた。世界市場でも15年 までに小型5車種を開発・展開する計画を進めており、小型嗜好の日本 市場と世界のトレンドが合致している形だ。

国内自動車市場では13年度に軽自動車の比率が約40%に上った。登 録車の販売ランキングでも、トヨタ自動車の「アクア」やホンダの「フ ィット」など小型車が上位を占めている。一方、輸入車の名前が国内販 売ランキングに掲載されることはほとんどなかった。

輸入車が国内で最も上位に食い込んだのは独フォルクス・ワーゲン のゴルフ・シリーズで、13年は2万3858台を販売し、登録車市場で29位 となった。新型ゴルフは「2013-14 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を 輸入車として初めて受賞するなど国内市場で認知度が高まっている。

批判から適応へ

欧州の自動車メーカーだけでなく、米国勢も国内小型車市場への適 応を始めている。米フォード・モーターは昨年、小型車「フォーカス」 を日本に投入。今年はさらに小型の「フィエスタ」の販売も開始した。 同社のアラン・ムラリー最高経営責任者(CEO)は、日本が独自の軽 自動車規格を維持していることなどから、「世界で最も閉鎖的な市場」 と批判を繰り返していたが、小型車戦略を進める方向へ舵を切った。

小型車だけでなく、高級車にも追い風が吹いている。アベノミクス 効果もあり、企業の経営環境が好転し、株価は上昇。メルセデス、 BMW、アウディなど欧州ブランド車が販売を伸ばしているほか、1000 万円超の価格帯では伊マセラティの13年販売が前年比58%増、英マクラ ーレンが同2倍となった。

メルセデスの上野社長は、世界金融危機のあった08年ごろの日本に ついて「輸入車メーカーの中では、日本は高いものは売れない、お金を かける市場ではないという認識だった」と振り返った。その後、「震災 もあって日本経済は伸び悩むだろうという決めつけの中、実際は11年に 対前年超えの販売となり、今ではメルセデスの中で日本はトップ10の市 場となった」と語った。

経済回復の影響は小型車を得意とする海外メーカー販売店でも感じ ている。東京都町田市で伊フィアットやアバルトを扱うディーラーの渡 邊芳仁取締役は、今年の正月明けの開店に「あまりに多くのお客さんが 来てびっくりした」と振り返った。例年は「本当に車好きの方がぱらぱ ら来る程度」だったという。

プリウスから輸入車へ

渡邊氏は、販売が12年から13年にかけ3割ほど増え、国産車からの 乗り換えは2割程度増えたと感じている。特にプリウスからの乗り換え が多いことに触れ、「一時期、エコ意識が高まってプリウスに乗ってい た人たちが、やはり走りを楽しんだり、かっこいい車に乗りたくなるケ ースが多いようだ」と語った。

この販売店でアバルト595Cを買った松倉さんも、アベノミクスが 遠因で輸入車購入に踏み切った。飲食店の店舗を設計する仕事に携わっ ており、昨年あたりから受注件数は例年の3割ほど増えている。「アベ ノミクスでお金ができて買うのではなく、アベノミクスで忙しすぎて、 楽しみを求めて輸入車を買ったパターンです」と語り、週末には早速、 チューンアップして運転を楽しむつもりだと販売店を後にした。

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