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日銀が突き付けた「挑戦状」、エコノミストなお懐疑的-サーベイ(訂正)

日本銀行の黒田東彦総裁は2%の物 価安定目標の実現に向けて自信満々だが、なお民間エコノミストを納得 させるには至っていないことがブルームバーグ・ニュースの調査で明ら かになった。

黒田総裁は先月30日の会見で、生鮮食品を除く消費者物価指数(コ アCPI)の前年比上昇率(消費増税の影響を除く)が2015年度を中心 とする期間に「2%の目標に達する可能性が高い」と表明した。しか し、エコノミスト32人を対象に2日から8日にかけて行った調査で は、29人がこうした見通しは「実現しない」と回答した。

黒田総裁はCNBCのインタビューで「民間エコノミストはこれま で一貫して間違ってきた」と述べた。もし、同総裁の見通しが正しけれ ば、日本経済が15年間にわたり苦しんできたデフレを脱却させた功績に 新たな勲章が加わることになるが、仮にその見通しが誤っていれば、金 融市場の信認を維持する上で、多くの困難に直面することになる。

JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミストは「黒田総裁は民 間エコノミストに対して挑戦状を突き付けた」と話す。日銀はコア CPI前年比が「しばらくの間、1%台前半で推移する」としている が、菅野氏は「為替と原油価格が現状並みで推移すると、8月は1%割 れとなる可能性が高いので、この辺りで『日銀と民間エコノミストの予 測の妥当性』がまず明らかになるだろう」という。

元チーフエコノミストは日銀に軍配

かつて日銀のチーフエコノミストで、現在は富士通総研エグゼクテ ィブ・フェローである早川英男氏は2日のインタビューで、日本経済の 潜在成長率が低下する中で、「既に完全雇用であり、人手不足による賃 金上昇が今後起きて、物価は来年度の終わりころには2%には近づいて くる」と指摘。「物価だけに限って言えば日銀の勝ちだ」と述べた。

早川氏は具体的には「コアCPI前年比が日銀の見通しである15年 度プラス1.9%になるためには、14年度末には2%に近づいていないと いけないが、ちょっとそれはつらいと思う。日銀が考えているよりは少 しは遅れるが、恐らく民間が考えているより早いだろう」という。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所 長は「日銀短観(14年3月調査)の雇用・設備加重平均DIから計測さ れたマクロの需給ギャップの締まり方や、実際のコアCPIの推移をみ れば、『2年で2%』のインフレ目標の達成は十分可能」との見方だ。

2%は依然として不透明

一方、日本総合研究所の山田久チーフエコノミストは8日の記者勉 強会で、早川氏と同様、「リーマンショック以降、日本経済の『縮み志 向』が一段と強まる下で、潜在成長率の低下が進行していた」と指摘。 「予想外に早くボトルネック(低い経済成長の天井)に直面する可能 性」があるとして、早晩デフレは脱却できる公算が大きいと述べた。

もっとも、「過去の関係からすれば、安定的にインフレ率が2%を 達成するためには名目賃金が3%程度上昇する必要がある」が、1997年 の前回消費税率引き上げ以降、日本経済は「労働需給がタイト化しても 賃金、とりわけ所定内給与が上昇しづらい構造」になっているため、日 銀が目標としている物価2%の達成は「不透明」との見方を示した。

大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは目先の景気動向につい て「消費増税前後の需要の振幅が大きく、景気の基調が読みにくい時間 帯に入るが、物価は当面、おおむね日銀の想定通りのパスをたどる公算 が大きい」と指摘する。

ただ、コアCPI前年比については「一段の円安進行がなければ、 年後半以降に2%に向けて再加速する可能性は小さい、との見方を維持 している。10-12月ごろには目標からのかい離が鮮明化し、日銀は追加 措置を打たざるを得なくなるとの予想は変わらない」という。

緩和時期は7月最多も前回から低下

ブルームバーグ・ニュースの調査では、全員が日銀が20、21日に開 く金融政策決定会合で現状維持を決定すると予想した。追加緩和予想時 期については、7月との見方が12人(38%)と最多だったが、前回 (43%)からは低下した。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「消費増税に よる反動減により景気は減速し、物価も伸び悩むだろう。また、政府が 本年末に消費税率の再引き上げを決断するためには第3四半期のGDP 成長率の数値が重要となる」と指摘。「日銀はそのことも念頭に入れた 上で、6、7月ころに追加緩和を実施する」と予想する。

一方、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「消 費増税後の景気下振れリスクへの対応(政府との連携)が主因で日銀が 追加緩和に動かざるを得なくなる場合は、7月が軸」とする一方、「2 年程度での物価上昇2%達成公約が困難と認めざるを得なくなる場合は 展望リポートが出る10月が軸になる」と指摘。

その上で「これまでのところ景気腰折れ的な動きが観察されていな いため、現時点では追加緩和時期として最も可能性が高いのは10月前後 となる」としている。

日銀ウオッチャーを対象にしたアンケート調査の回答期限は8日午 前8時。調査項目は今会合での金融政策予想、追加緩和時期と手段や量 的・質的金融緩和の縮小時期および「2年で2%物価目標」実現の可能 性と目標修正の可能性、日銀当座預金の超過準備に対する付利金利(現 在0.1%)予想、コメント--の4つ。

1)日銀はいつ追加緩和に踏み切るか?
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調査機関数                        32     100%
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A) 5月                           0        -
B) 6月                           2       6%
C) 7月                          12      38%
D) 8月                           0        -
E) 9日                           1       3%
F) 10月7日                     1       3%
G) 10月31日                   8      25%
H) 11月                         0        -
I) 12月                         0        -
J) 来年1月                       1       3%
K) 来年2月                       0        -
L) 来年3月                       0        -
M) 来年4月以降                   2       6%
N) 追加緩和なし                    5      16%

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2)追加緩和の具体的な手段  
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調査機関数                 
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A) マネタリーベースの拡大         20
B) 長期国債の買い増し             21
C) ETFの買い増し                 26
D) REITの買い増し                 14
E) 付利の引き下げ                 1
F)その他                           8
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3)日銀が2%の「物価安定の目標」が安定的に持続すると判断し、
量的・質的金融緩和の縮小を開始する時期はいつ?
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調査機関数                        28
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A) 2014年上期                      0
B) 2014年下期                      0
C) 2015年上期                      0
D) 2015年下期                      0
E) 2016年上期                      3
F) 2016年下期                      3
G) 2017年上期                      3
H) 2017年下期                      0
I) 2018年以降                      7
J) 見通せず                       12
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4)日銀は生鮮食品を除く消費者物価(コアCPI、消費増税の影響を
除く)前年比が2016年度の「見通し期間の中盤頃に2%程度に達する
可能性が高い」としてますが、この見通しは実現しますか。
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                               はい    いいえ
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見通しが実現する                   2       29
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5)②13年度、14年度、15年度、16年度の実質GDP成長率と
コアCPI(消費増税の影響除く)の見通しをお示しください。
します。【エコノミストの見通し(※日銀の見通しではありません)】
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予想中央値                    13年度   14年度   15年度   16年度
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実質GDP成長率              2.2      0.8      1.2      1        
コアCPI                    0.8      1        1.1      1.2      
(消費増税の影響除く)       
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--取材協力:藤岡徹

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