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孫ソフトバンク社長は「アジアのバフェット」-アリババIPO

中国のアリババ・グループ・ホール ディングの上場による最大の勝者は、アリババを創業したジャック・マ (馬雲)会長ではなく、株式の3割余りを保有するソフトバンクの孫正 義社長ということになりそうだ。

ソフトバンクは2000年、海外の投資家とともに2000万ドル(約20億 円)でアリババの未公開株を取得した。当時、無名だったアリババは中 国最大の電子商取引運営会社に成長し、ソフトバンクの保有株式の現在 の価値は600億ドル(約6兆円)以上と見積もられている。

アリババ上場に伴う利益は、孫社長の投資家としての手腕をさらに 際立たせることになる。孫社長は買収した米通信会社3位のスプリント に加え、同4位のTモバイルUS買収にも意欲を見せているほか、フラ ンスのメディア企業ビベンディ傘下のユニバーサル・ミュージック・グ ループ(UMG)を85億ドルで買収することを提案するなど、規模拡大 に躍起だ。

クロスパシフィック・キャピタル(米カリフォルニア州)のマネー ジング・パートナー、グレッグ・タール氏は孫社長を「アジアのウォー レン・バフェット」と評する。バフェット氏は米投資・保険会社バーク シャー・ハサウェイを率いる著名投資家で、長期投資手法を取ることで 知られる。タール氏によれば、ベンチャーキャピタル投資の成否は、当 初の投資額に対し、どれぐらいのリターンを得られたかで決まるが、ア リババのように価値が膨らむ投資となることはまれだ。

こういったベンチャーへの投資に加え、ソフトバンクは外部からの 資金調達による買収で、自社を進化させてきた。1981年、パソコン用パ ッケージソフトの流通事業会社として創業した同社だが、現在は、日米 の携帯通信会社のほか、ゲーム会社ガンホー・オンライン・エンターテ イメントや検索サイト国内最大手ヤフー・ジャパンなど1300社超のグル ープ企業を抱える。

負債で規模拡大

ソフトバンクが保有するのはアリババ株の約34%。アリババのマ (馬雲)会長はソフトバンクの取締役を務めている。

SMBC日興証券の菊池悟アナリストは、上場によりアリババ株が 市場で売却しやすくなることで担保としての価値が上がり、ソフトバン クとしては資金調達がしやすくなると指摘。借金をして企業買収しビジ ネス機会を増やしてきたソフトバンクにとって、「借金ができればでき るほどよい」と話した。

ソフトバンクは06年には1兆2800億円を借り入れ、ボーダフォン日 本法人を買収。孫社長の下で改革を行い、ソフトバンクの発表資料によ ると、昨年4-12月期の携帯電話事業からの営業利益は、買収前の9倍 に達している。

昨年7月のスプリント買収をめぐっても総額約1兆2900億円の借り 入れを実行した。Tモバイルの買収に関しても、孫社長がゴールドマ ン・サックス・グループやみずほ銀行など複数の銀行に接触し、買収資 金調達について協議していることを、複数の関係者が明らかにしてい る。

財務に懸念も

SMBCの菊池氏は、次の投資対象としてインターネット関連やゲ ーム分野などを挙げる。ソフトバンクの知名度が世界的に高まった結 果、多くの案件が寄せられることで、「これまでよりも成功するチャン スは高まるかもしれない」と同氏は述べた。

一方で財務状況を懸念する声も根強い。スプリント買収を受け、同 社の有利子負債は12月末で9兆2000億円に到達。長期債の格付けはスタ ンダード&プアーズ(S&P)がBB+、ムーディーズがBa1ととも に投機的水準(ジャンク級)だ。

BGCパートナーズ の日本株セールス担当マネジャー、アミー ル・アンバーザデ氏(シンガポール在勤)は「負債のレベルは天文学的 だ」と説明した上で、「ソフトバンクは世界中で最もレバレッジの高い 会社の一つだ」と話す。SMBC日興証券の菊池氏も、市場がリーマン ショック時のように崩れた場合は、借金をして事業を拡大するソフトバ ンク流が「逆に回転することもある」と、債務拡大の危険性を指摘して いる。

ソフトバンクはスプリント買収に続いてTモバイルの買収も目指し ている。しかし、関係者によれば、米規制当局はソフトバンクがTモバ イルを傘下に収めれば大手携帯通信事業者は3社に減ることになり、競 争が損なわれるとみている。

孫社長は3月、米PBSのテレビ番組「チャーリー・ローズ」に出 演し、Tモバイルの買収が実現すれば、米市場に「大胆な価格競争」を 持ち込むと述べた。4月15日にもブルームバーグ・ニュースなどの取材 に米での競争は事実上、寡占化されているとして、「構造問題の議論を 進めていきたい」と意欲を見せた。

エース経済研究所の安田秀樹アナリストは、Tモバイル買収が不調 に終わった場合の代替策として、孫社長が欧州各国の携帯通信会社の 「2番手や3番手」の買収を念頭に置いているとみる。日本のシェアは 改善して上限が見えており「考えているのは世界的なシェア拡大だ」と 話した。

岩井コスモ証券の川崎朝映アナリストも、Tモバイル買収が進展し ない場合、アリババ上場により余裕ができた資金で、ヨーロッパの携帯 電話会社に出資する可能性もある、と分析している。

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