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法人税下げ、中小企業への税負担増大が焦点に-外形標準拡大

安倍晋三首相が成長戦略の柱の1つ として掲げた法人税実効税率引き下げをめぐり、日本企業の99%超を占 める中小企業への税負担の増大が焦点となっている。政府は赤字企業が 多く、法人税の納税率が低い中小企業への課税を促すことで財源の捻出 を狙うが、経営圧迫につながるとして賛否が分かれている。

政府税制調査会の法人税改革を扱う専門部会では4月24日、資本金 1億円超の大企業が対象となっている法人事業税(地方税)の外形標準 課税を1億円以下の中小企業に拡大する案が取り上げられた。所得にか かる法人税と違って事業規模や人件費にかかることから安定的な財源に なるとの意見がある一方で、負担増を懸念する指摘も相次いだ。

中小企業への負担増を求める背景には、法人税のいびつな税収構造 がある。国税庁の会社標本調査(2012年度)によると、資本金1億円以 下の企業約250万社の約7割が法人税を払っていない。一方で全体の 1%に満たない資本金1億円以上の大企業では6割強が払っており、法 人税収8.9兆円のうち65%を納付している。

専門部会の大田弘子座長は「長引く景気低迷のなかで収益を上げら れない企業がしっかりと収益を上げて法人税を払えるようにする構造改 革の1つが法人税の引き下げだ」と述べた。さらに、個人が経費を認め られる法人を設立し税負担の軽減などの調整を行う「法人成り」を低い 法人税負担率の一因として挙げ、見直す考えを示した。

特別委員を務める佐々木則夫経団連副会長は「もともと頑張ってい る中小企業とタックスプランニングをしている法人成り企業を分けて考 えなければならない。外形標準課税は赤字企業からも取る。規模の小さ な企業にとっては厳しい」との見解だ。

成長戦略に明記

安倍首相は1月のダボス会議で、法人税実効税率の引き下げの検討 を表明。一方で、税収の大幅減が想定されることから税率引き下げに慎 重な麻生太郎財務相は「財源確保が前提」との立場だ。専門部会では、 課税ベースの拡大によって税率引き下げによる減収分を穴埋めする「税 収中立」を前提に税率引き下げの議論を開始した。

西村康稔内閣府副大臣は4月30日、ニューヨークで行われたブルー ムバーグ・ニュースとのインタビューで、日本の競争力を高め景気回復 を後押しするため、政府が15年4月までに法人税実効税率の引き下げに 着手するとした上で、今年6月の成長戦略に概要を示すことを明らかに した。税率は韓国の約24%や英国の約23%を意識し、現行の約36%か ら30%を下回る水準に近付くよう工程表をまとめたいと述べた。

株価が一時期に比べて低迷している背景には、アベノミクスの第3 の矢と位置づけられた成長戦略への失望感があるとの見方が市場で出て いる。株価の動向を注視している官邸にとって、国内の企業活動を活性 化し対日投資を促進する切り札として、法人税実効税率の引き下げを6 月にもまとめる成長戦略の改訂版に明記することが命題だ。

慎重な自民党税調

日銀の資金循環統計によると、日本の企業は222兆円(昨年12月 末)の現金・預金を保有している。安倍政権は税率引き下げによって企 業の内部留保を国内への投資に振り向ける方針だ。一方で、対日直接投 資残高は08年の18.5兆円をピークに12年は17.8兆円と縮小傾向にあり、 海外から国内への投資増加にも期待がかかる。

経済財政諮問会議の民間議員は法人税率が1ポイント引き下げられ ると対内直接投資額は2-4%増加するとし、アジア近隣諸国並み の25%程度にするよう提言している。民間議員も務める佐々木氏は来年 度から2-3ポイントの引き下げは可能と述べている。企業収益の改善 により法人税収が上振れるため、税収の減収分を補えるとしている。

一方、税制改正を実際に取り仕切る自民党税制調査会は麻生財務相 と同様、財源確保は不可欠として慎重だ。野村証券の尾畑秀一シニアエ コノミストらは先月25日のレポートで、政府は6月にまとめる成長戦略 に法人税実効税率の引き下げ時期や幅を明記することを目指すものの、 「自民税調の説得には時間を要する」とみている。

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