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「零戦」生んだ防衛産業、武器輸出解禁でもビジネス効果は未知数

旧海軍の主力戦闘機「零式艦上戦闘 機」(零戦)を設計した堀越二郎氏の半生をモデルに描いたアニメ映画 「風立ちぬ」(宮崎駿監督)。日本映画製作者連盟が発表した全国映画 概況では、興行収入で2013年度の邦画部門第1位となる大ヒット作とな った。

安倍晋三政権は4月、武器輸出を例外を除いて禁止してきた「武器 輸出3原則」の見直しに踏み切った。堀越氏が勤めていた三菱重工など 日本の防衛産業には追い風だが、国民には武器輸出への抵抗も残ってい るほか、防衛産業全体の国際競争力の問題もあり、実際のビジネス効果 は未知数だ。

防衛省の公表資料によると、同省の契約高上位には三菱重工業を筆 頭に、日本電気、川崎重工業など第2次世界大戦前から続く大企業の名 前が並ぶ。同省の別の公表資料によると、11年度の日本の防衛産業の規 模は約2.1兆円で工業生産額全体の約0.77%。

自民党国防部会・防衛政策検討小委員会(佐藤正久・小委員長)は 4月21日、小野寺五典防衛相に提出した提言で、防衛装備品の輸出は 「将来性が不透明であることからも、積極的に進出する企業はそう多く はない」と指摘。「防衛装備の海外移転促進」などを図るための強固な 組織を「庁」として早期に防衛省の下に設置するよう求めた。

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「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など防衛産 業に関する2冊の著作があるジャーナリストの桜林美佐氏は、日本の防 衛産業は開発・生産を主導する個々の大企業にとっては一部門にすぎ ず、輸出が認められるようになっても「大きなビジネスになるという判 断はしづらい世界」とみる。「そうそう大喜びでやろうというところは 非常に少ないと言ってしまってもいい」と話す。

防衛省の防衛生産・技術基盤研究会委員の経験がある桜林氏はその 背景として、価格競争になっている世界の武器市場に「いきなり参入し て勝負するには覚悟がいる」と指摘。「日本の場合は軍事や兵器を作っ ているということは非常にイメージが悪いので企業はなるべく目立たせ たくない分野」でもあることを挙げた。

安倍晋三政権は4月1日、武器や関連技術の輸出を制限してきた武 器輸出3原則に代わり、国際協力などを目的とした武器輸出を円滑に行 えるようにする「防衛装備移転3原則」を閣議決定した。日本が締結し た条約その他の国際約束、国連安全保障理事会の決議に基づく義務に違 反したり、紛争当事国への移転となったりする場合などは引き続き輸出 を禁止している。

菅義偉官房長官は閣議決定後の会見で、新原則について「防衛装備 の移転に係る手続きや歯止めを今まで以上に明確化し、透明化した」と 訴えるが、世論の理解は進んでいない。

世論

共同通信が2月23日に記事配信した世論調査では、武器や関連技術 の 輸出を原則的に禁じてきた「武器輸出3原則」の緩和に反対すると の回答は66.8%に上った。朝日新聞は4月3日付の社説で「平和主義が 崩れていく」と新3原則決定を批判する見解を掲載。近隣諸国からも中 国の新華社通信が3原則見直しは地域の平和と安定にとって有害と指摘 する記事を配信するなど反発が出ている。

三菱重工は1日、新3原則の閣議決定を受けて「日本の国際的プレ ゼンスの向上や防衛生産・技術基盤の強化等にもつながるものと認識」 しているとのコメントを発表。今後も、政府の方針に従って防衛装備の 国際共同開発・生産や輸出、技術移転などで「可能な貢献」に努める、 との方針を示した。

川崎重工も30日、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、「わが 国の行う平和貢献・国際協力ならびにわが国の安全保障に資する防衛装 備移転につき、政府の方針に従って貢献できるよう努める所存です」と 電子メールで回答した。

部品輸出

米国のノースロップ、レイセオン、英国のBAEシステムズなど米 国や欧州の軍事産業は80%以上を軍事部門で稼ぐが、日本で防衛部門に 参入している大企業の売り上げ全体に占める同部門の割合は小さい。最 大手の三菱重工で宇宙関係と合わせた「防衛・宇宙」部門の比率は2014 年3月期連結決算の4-12月期の累計でみると、受注高で11%、売上高 では13%となっている。

防衛省は別の公表資料で、防衛産業全体の平均で売り上げに占める 依存度は4%程度にすぎず、「多くの企業では防衛事業が主要収益源と はなっていない状況」と分析している。経済産業省の風木淳・安全保障 貿易管理課長は3月31日、新原則によって最も恩恵を受けるのは部品の 開発や製造に関わる分野との見方を記者団に示している。

三菱重工には地対空ミサイル「パトリオット2(PAC2)」を自 衛隊向けに生産しているが、ライセンス元であるレイセオン社から部品 の一部を輸出するよう打診がきていると、小野寺防衛相が4月18日の閣 議後会見で明らかにした。同社自身は17日にウェブサイトで、現時点で 決定した事実はないとの見解を発表している。

欧州

小野寺氏は18日の会見で、今後の対応について「具体的に三菱重工 業から米国への輸出申請があった場合、私どもとして新移転三原則に基 づいて、適正な検討を行って、その海外移転の可否を判断したい」とも 発言している。

防衛省が5月中にまとめる予定の防衛生産・技術基盤強化のための 新戦略の案によれば、英国、フランスなど欧州主要国との協力関係の構 築を今後取り組む「施策例」として挙げている。英国とは化学防護服の 共同研究で合意。フランスとは1月の外務・防衛閣僚協議(2プラス 2)で輸出管理及び防衛装備品協力に関する委員会の設置で一致した。

安倍首相は4月28日から5月8日まで英仏独など欧州各国を歴訪し ている。4日から6日までを予定しているフランス訪問では防衛装備協 力の促進も首脳会談のテーマの1つとなる見通し。

--取材協力:James Mayger、Go Onomitsu.

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