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野村HDの収益に陰り、アベノミクス相場の息切れで

この4月に始まった野村ホールディ ングスの収益は悪化することになりそうだ。2014年3月期の通期純利益 を8年ぶりの高水準に押し上げたアベノミクス相場が息切れしているた めだ。

野村が30日発表した14年3月期の通期純利益は、前年同期のほぼ2 倍の2136億円と06年3月期(3043億円)に次ぐ高水準を確保した。しか し、四半期でみると1-3月期は前年同期比で12年4-6月期以来の減 益。投資銀行業務やトレーディング収益は増加したが、個人向け(リテ ール)部門で株式委託や投信販売手数料が落ち込んだ。

安倍晋三政権発足後の13年の日本の株式相場は主要国市場中でベス トパフォーマーだったが、ことしは年初来でワーストだ。野村の収益構 造は前期の税前利益の半分以上を営業部門が占めるなどリテール中心。 アベノミクス効果が薄れる中で、野村も携わったジャパンディスプレイ や西武ホールディングスの上場に対する投資家の関心は低かった。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真最高経営責任者は 野村など国内証券の収益見通しについて「政府が外国人投資家に評価さ れるような追加の成長戦略を出すなどしない限り、このままでは厳しい だろう」とみる。現段階では「個人投資家のリスク許容度は高くなく、 売買代金が低調なままでは、大型IPOやPOなどディールがなかなか さばけない」と投資銀行業務にも影響が及ぶ可能性を指摘した。

野村の1-3月(第4四半期)の連結純利益は前年同期比26%減 の613億円だった。投信販売や株式委託手数料が減少したが、米資産運 用会社フォートレス株の売却益などが寄与し、ブルームバーグ・ニュー スが集計したアナリスト11人の予想平均値410億円を50%上回った。

収益予想、株主還元

ドイツ証券の村木正雄アナリストは、決算発表後の30日付リポート で、野村の2015年3月期の通期純利益予想を前年同期比16%減の1788億 円とした。野村は会社として業績予想を公表していない。

野村は前期の好決算に伴う利益を株主に還元する。決算と合わせ て30日には、発行済み株式の2.6%に当たる1億株を上限とした自社株 買いと年間配当を17円(その前の期は8円)とする増配を発表した。大 和も大幅増配を発表した。

野村HDの30日の株価終値は588円と年初から27%下落し、ことし の安値を記録していた。大和証券グループ本社の株価も同様に27%下げ ていた。1日終値は野村が前日比37円(6.3%)高の625円、大和株は24 円(3.1%)高の789円となった。この日の東証の業種別株価指数は、証 券・商品先物取引業者が4.7%高だった。

ドイツ証の村木氏は野村の株価が証券セクター全体の上昇を上回っ たことについて、「自社株買いの規模が想定を上回り、業績と期末配当 が予想より良かったため」と分析。一方で「長期的には収益環境が好転 しない限り、証券株は買いづらいだろう」と述べた。

大和証Gが30日発表した連結純利益は、第4四半期が32%減の332 億円だった。営業収益は15%減で投信販売や株式売買手数料など個人向 け(リテール)部門に加え、法人部門の収益も減少し、四半期ベースの 前年同期比では11年10-12月期以来、9四半期ぶりの減益となった。

鈍化する景気回復

日本の景気回復は勢いを失いつつある。消費増税の影響で消費者心 理が冷え込んでいるほか、為替市場で円安傾向が止まり輸出企業が受け てきた円安メリットも薄れてきているためだ。日銀は30日、実質国内総 生産(GDP)成長率見通しについて、13年度を2.7%増から2.2%増 に、14年度も1.4%増から1.1%増に下方修正した。

株式市況の低迷は、企業の新規株式公開(IPO)に影響を及ぼし 始めている。鉄道やホテルを運営する西武HD株式の上場では、売り出 し株数が当初計画より大幅に減少した。ジャパンディスプレイは3月の 上場以来、株価が公開価格から約30%下落した。野村は両社の引き受け 業務に携わっていた。

野村の1-3月の収益合計は前年同期比37%減の4508億円だった。 委託・投信募集手数料が29%減の899億円となった。一方、投資銀行業 務手数料は24%増の272億円、トレーディング損益が21%増の1292億円 となった。

パイプライン

柏木茂介財務統括責任者(CFO)は30日夜、アナリストとの電話 会議で、投資銀行業務について「パイプラインはある。ECM案件は多 いし、クロスボーダーの案件も持っている」と述べた。ただ、「強かっ た」と認識している1-3月の水準を今期以降も継続するのは「ちょっ と難しい」と見通した。

機関投資家や企業向け取引を軸としたグローバル・マーケッツ部門 について柏木CFOは、4月以降はフィクストインカム、エクイティと もに「低調なスタート」だったと述べた。前期の国内営業部門について 「非常にしんどい」収益だったと総括し、「顧客の信頼を取り戻すた め、不退転の決意で臨む」と強調した。

永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)はリテール営業につい て、取引量に依存した手数料収入を中心としたビジネスモデルから、顧 客資産の管理により生み出される収益構造への転換に力を入れている。 野村は16年3月までに顧客資産残高を90兆円とする目標を達成、新た に100兆円を掲げている。

--取材協力:河元伸吾.

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