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ニッケル鉱石急騰、インドネシア禁輸で代替先争奪

フィリピンのニッケル鉱石の価格が 昨秋に比べて約2倍に急騰している。世界最大のニッケル鉱石産出国の インドネシアが禁輸を実施したことで、代替調達先としての注目が集ま った。フィリピンからの調達を拡大している日本の非鉄製錬各社にとっ ては原料コストの負担増につながる。

フェロニッケル国内3位の日本冶金工業で原料鉱石部を担当する長 谷川正常務執行役員は「フィリピンの鉱石価格が高騰しており、調達コ ストは非常に厳しい状態」と語る。昨年10月には1トン当たり30-35ド ルだったニッケル鉱石(品位1.8%)のスポット価格は3月には50-55 ドル、足元では60-65ドルへと上昇しているという。

ロンドン金属取引所(LME)のニッケル地金価格の昨年10月から の上昇率は3割。フィリピンの鉱石価格の上げ幅は製品価格の指標とな るLMEニッケル価格を大きく上回る。

ニッケル分約20%を含む鉄との合金であるフェロニッケルはステン レス鋼の原料に使用される。ニッケル鉱石の主要調達先であるインドネ シアが1月12日から禁輸を実施。日本のフェロニッケルメーカーはフィ リピンやニューカレドニアから調達を増やすことで対応している。

主要調達先失う

財務省貿易統計によると、2月のフィリピンからのニッケル鉱石の 輸入量は23万トンと1月と比べ75%増えた。ニッケル鉱石はこれまでイ ンドネシアとフィリピン、ニューカレドニアの3カ国に依存。昨年は輸 入量の5割をインドネシアが占めており、日本は主要調達先を失った。

住友金属鉱山ニッケル営業・原料部の肥後亨部長は「調達リスクが 顕在化した」と語る。インドネシアの禁輸で日本のほか大量にニッケル 鉱石を輸入している中国もフィリピンからの調達を増やすことが見込ま れる。「輸送船の滞船や天候による遅れなど今まで以上に状況は厳し い」といい、「欲しいタイミングで欲しい鉱石が手に入るかどうかは難 しく、操業リスクになっている」と懸念を示す。

鉱石品位の問題もある。住友鉱の肥後部長によると、インドネシア のニッケル鉱石の品位は平均で2%超あるのに対して、フィリピンで 2%の鉱石を探すのは難しいという。品位が低ければ、より多量の鉱石 が必要となるため、フェロニッケル生産の減産につながりかねない。

フェロニッケル国内最大手、大平洋金属の小出啓一取締役上席執行 役員鉱石部長は「既存の調達先に加えて新たに取り始めたところもあ り、インドネシアの不足分はカバーできる」と指摘。「長年の取引先と の関係を強化して調達を続け、新規の調達先もできるだけ確保してい く」という。

日本冶金では大江山製造所(京都府)で設備投資を計画しており、 多様な品質の鉱石を処理できるようにする。これまで安定的に調達して いたインドネシア産と異なり、フィリピン産の鉱石は品質にばらつきが あることから対策を進める。

中国の統計によると、同国が昨年輸入したニッケル鉱石は7118万ト ンと日本の14倍。そのうち4111万トンをインドネシアから調達した。2 月の輸入量は310万トンと1月に比べて約半減。3月は91万トンまで減 少した。昨年末にかけて積み上げた在庫を使用しているとみられるが、 在庫減少に伴いフィリピンから調達を増やす公算が大きい。

需給ひっ迫

シティグループ証券の越智達郎アナリストは「インドネシアの禁輸 は鉱石需給のタイト化要因としては非常に大きい。供給能力の問題もあ り、中国がフィリピンからの輸入を増やすことでインドネシアの穴を埋 めるのは難しい」と、需給ひっ迫が強まるとの見方を示した。

国内製錬会社が使うニッケル鉱石はサプロライト鉱と呼ばれる高品 位の鉱石。ブラジルやキューバといった南米でも採掘されるというが、 輸送距離が長く、輸入するには採算が合わない。インドネシアは単純な 鉱石輸出ではなく、高付加価値の製品を国内で生産することを目的に禁 輸に踏み切った。同様の動きがフィリピンなど他国に広がることも懸念 されている。

日本鉄鋼連盟の友野宏会長(新日鉄住金副会長)は23日の記者会見 で、ステンレスメーカーへの影響について「ニッケルの手当てができ ず、生産に支障が出ているという話は聞いてない」と説明。ただ、 LMEのニッケル地金価格が上昇していることから「短期的には収益に インパクトがある」として、採算面での悪影響に懸念を示した。

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