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パパよ休みを取ろう、育児分担で女性の活躍後押し-安倍成長戦略

「管理職にはなりたいけど、夫の協 力なしでは絶対無理」。東証1部上場企業に勤務する長井裕子さんは、 4歳児を育てながらフルタイムで働いている。夫はインターネットメデ ィア企業の管理職で多忙を極め、毎晩帰宅は午前零時過ぎ。長井さんは 「年10日でいいから国は有休取得を義務付けてほしい」と訴える。

女性就業率(25-54歳)で経済協力開発機構(OECD)加盟30カ 国中22位と、下位にとどまる日本。少子化で労働力不足が予想される 中、安倍政権は成長促進には女性労働力が欠かせないとして、女性の雇 用促進に本腰を入れ始めた。その鍵を握るのは、男性が仕事偏重から脱 却し、育児を妻と分担する「イクメン」の普及だ。

OECDの調査によると、日本人の家事・育児時間は女性が1日平 均269分とほぼ平均並みなのに対し、男性はわずか59分と平均の半分以 下。労働政策研究・研修機構の調査では、年休でさえ取り残す理由は1 位の「病気や急用に備え取っておく」を除くと、「周りが取らないので 取りにくい」、「上司がいい顔をしない」、「勤務評価等への影響が心 配」などが上位を占め、職場環境が理由だ。

お茶の水女子大学大学院の石井クンツ昌子教授は、「男性が育児に 参加すると女性の継続就労率は高くなる」と指摘。男性の意識は変わっ ては来ているが、「行動も一緒に変えていかないと、なかなか育児参加 にはつながらない」との見方を示した。

男性の育児休暇

安倍政権は成長戦略として、社会のあらゆる分野で20年までに女性 が指導的地位に占める割合を30%以上とする目標を掲げた。4月からは 育児給付率を休業前賃金の50%から半年間に限り67%に引き上げ、収入 低下から育休に消極的な男性に取得を促す。共働き夫婦が半年ずつ育休 を取得すれば合計で1年間増額する仕組みだ。

女性は第一子出産前後で約6割が離職してしまうため、政府は20年 までに離職率を45%にとどめる目標を設定した。ゴールドマン・サック ス証券のキャシー松井氏はリポートで、日本の女性の就業率が現在の 約60%から男性並みの約80%に上昇すれば、労働人口は800万人増え、 国内総生産(GDP)を最大14%押し上げると分析する。

女性が働き続けるには「男性が協力することだ」と森まさこ男女共 同参画担当相は話す。内閣府のワーク・ライフ・バランス推進のための 行動指針では、20年までに有休取得率を47.1%(12年)から70%、男性 の育児休暇取得率を1.89%(12年度)から13%、6歳未満の子供を持つ 夫の育児・家事時間を67分(11年)から2時間半への向上を目指す。

上司や男性が育児休暇を取得することで、女性への理解が進めば働 きやすい環境につながるとして、女性比率の高い保険業界では男性の育 児参加を推進する会社もある。

お互いさま

「まさか男性が育児休暇を取れると思わなかった。制度をよくみた ら書いてあった」。日本生命保険総合企画部の塩田一貴さんは、結婚記 念日と重なる13年7月に1週間の育休を取得、妻や1歳の子供と1泊2 日の旅に出かけ、丸1日は1人で子供の面倒を見た。

育休を経験し、「1つ1つならどうってことないことも、ご飯を作 りながら子供をあやしたりと子育てはマルチタスク」と大変さが身に染 みたという。塩田さんは「取得に向けた周りのサポートなどを考えると 現実的なのは1週間。子供は日々成長している。許されるならもう少し 長期でもとってみたい」と語る。

日生は13年4月から、男性の育休取得率100%を目標に掲げ、今年 3月には目標を達成。人事部・輝き推進室の中倉京美氏は、たとえ1週 間程度でも、しっかりと続けて男性の育休取得を「当たり前の風土に変 えていくことが課題」と話す。育児に限らず介護も含め「お互いさまの 風土を根付かせて貴重な戦力に働き続けてもらう」と、女性の就業定着 を目指す。

生産性向上

休暇取得には生産性向上が必要になる。生産性本部がまとめた日本 の時間当たりの労働生産性は41.6ドルと、OECD加盟34カ国中19位に とどまっている。日生では昨年度から働き方の変革として、休暇取得促 進、会議時間の削減を掲げており、中倉氏は「それらも相まって残業圧 縮にはつながっている」という。

東レ経営研究所・ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部の 塚越学シニアコンサルタントは、男性が育休を取り、子供への責任感や 妻に対するパートナーシップが向上すると、「今までのように無制限に 仕事をしようという発想は生まれなくなる」と、効率アップに寄与する とみる。同氏自身も長男と次男の誕生で育休を計3カ月取った経験があ り、近く生まれる第3子については夏から8カ月取得する予定だ。

育ボス

明治安田生命保険は、休暇を取得しやすい雰囲気作りが必要と、12 年度から職員の休暇取得を管理職の評価に取り入れた。人事部・ダイバ ーシティ推進室の淡路なな恵氏(3月末時点)は、「自分の評価のため に休暇を取るのは男性の中では美しい姿には映らない」とし、休暇取得 が「所属組織への貢献につながるという仕組み」作りを工夫した。

具体的には男性が連続5日以上育休を取得すると、1人10点加算す る一方、無届けで午後7時半を過ぎる残業をした場合や午後9時以降に 退社した場合は5点減点する。得点は所属別に開示される。結果として 営業職員を除いた職員の平均勤続年数(12年度)が男性で前年度比1カ 月延び19年7カ月、女性は同8カ月延び15年2カ月となった。

政府も育休取得の環境づくりが必要だとして、管理職を教育する「 育ボス」政策を進めている。森担当相は、「みんなボスの顔色をうかが って仕事しているわけだから、会社全体に制度があっても、育児休暇を 取りますなんて言えない」とし、上司が部下の育休取得を促す必要があ ると強調した。

高度経済成長時代の戦略として男女の役割は分けられ、女性は専業 主婦、男性は仕事だけやってきたと、東レ経営研究所の塚越氏は話す。 このため、同氏は「育児をしながら出世する男性のロールモデルが不足 している」と指摘。管理職にも今後は離職率の低さや、育休から復帰し た人が活躍しているかなどが新たな評価として求められると、課題を挙 げる。

--取材協力:高橋舞子、Isabel Reynolds.

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