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特ダネに「決定した事実ない」はご法度―東証、情報開示を強化

国内上場企業の情報開示が改善して いる。株価に影響するメディア報道に対して「当社から発表したもので はない」、「決定した事実はない」など肯定とも否定とも取れる短いコ メントの排除を目指す東京証券取引所の取り組みを反映したもので、投 資家にとってはこれまでより正確で詳しい情報を得られることになる。

上場企業に適切な情報開示を指導する立場にある東証上場部の丸尾 泰介ディスクロージャー企画グループ・課長は4日の都内でのインタビ ューで、企業側がスクープ報道を受けてのコメントで慣習的に用いてき たこうした表現について、事実上「ノーコメントに近い」とし、東証の 指導もあり、昨年夏以降ごろからは合併・買収(M&A)や増資など 「投資判断上重要なものではほとんどない」と話した。

東証では上場企業に対し、重要な案件についてはなるべく踏み込ん だ表現を使うよう指導してきたほか、企業側が情報開示までに時間を要 したり開示する情報が限られる場合、投資家に対して不明確な情報の存 在を周知する新たな注意喚起制度を5月をめどに導入する。スクープ報 道など投資判断に重要な影響を与える可能性がある情報が存在し、その 内容が不明確である場合に取引参加者へ通知や東証のホームページへの 掲載で明示する。

丸尾氏によると、昨年の川崎重工業と三井造船との統合報道を受け て川重側が否定コメントを約2カ月後に訂正した問題などを受け、東証 では企業側により積極的な情報開示を促すための取り組みを進めてき た。

だんだん紋切型に

丸尾氏はこうした表現について、「昔はちゃんとした開示だった」 と指摘。1998年に不確定情報の存在による売買停止措置の解除期間が1 日からコメント開示後90分に短縮されて以降、企業側が停止措置解除の ために開示を急ぐようになり、「だんだん紋切型になってきた」とい う。コメントの文章表現については「投資判断上有用なコメントではな くなってきた」と述べた。

過去半年ほどの間でも、シャープは昨年9月に増資報道を受けて発 表したコメントでは「公募増資や資本提携に係る交渉など様々な検討を 行っておりますが、具体的に決定した事実はありません」と増資を検討 していることを認めている。今年3月にはオリックスが米ハートフォー ド生命の買収報道を受けて、「本件買収について協議していることは事 実」と買収協議を認めるコメントを出した。

丸尾氏は東証の取り組みもあって、上場企業の開示の在り方は改善 されてきているとした上で、今後の実務を通じてコメントの望ましい表 現を積み上げ、将来的には上場企業の広報担当者がプレスリリース作成 の参考にできるような事例集のようなものを作成する可能性があるとも 話した。

富国生命投資顧問の奥本郷司社長は日本企業が用いてきた紋切型の コメントは、「木で鼻をくくったような対応」で、市場の公平性の観点 からは好ましくなく「もともと違和感があった」と指摘した上で、東証 の対応は「前進であると思う」と評価した。さらに、全てのニュースを 開示させることには疑問があるとし、どのような場合に開示を求めるべ きかを判断するための「事例を積み上げていくことが重要になってく る」と話した。

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