西武ホールディングス(HD)は 約10年の非上場期間を経て、前身の西武鉄道からホテル・レジャー、不 動産事業などを含む総合企業に生まれ変わり、株式市場に復帰する。最 近の2件の新規株式公開(IPO)の厳しい結果を受け慎重になってい る投資家を納得させる課題に後藤高志社長は直面する。

筆頭株主の米投資ファンド、サーべラス・グループが保有株の売り 出しを9日に撤回したことから、西武HDは当初計画の発行済み総数の 約24%の売り出しを約8%程度に減らすことになる。株価の仮条件も想 定から下がり、市場からの資金吸収は当初予定から7割を超える縮小と なる。国内IPOでは、3月に東証に新規上場したジャパンディスプレ イと日立マクセルが公募価格割れとなったばかり。

みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)出身の後藤社長(65) は、先週までアジアや欧州、米国を巡り投資家説明会を繰り返したと、 事情に詳しい複数の関係者が述べた。説明会では、将来性の見込めるホ テル・レジャー事業や不動産関連事業に力点が置かれたという。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「現在の相場 環境では無難な上場は少し難しい」と言う。「いま、日本市場では個別 の会社に関係なく、投資家はマーケット全体を覆う空気を感じ取ろうと している。上場には地合いが悪い時期だ」と述べた。

23日上場へ

西武HDの主要株主は上場により、仮条件で1株当り1600円か ら1800円の売り出しで最大約500億円を市場から吸収する計算。当初の 想定価格は2300円だった。新株発行による資金調達は行わず、サーベラ スを除く、日本政策投資銀行や農林中央金庫などが保有株式を売却する 予定。今後、需要動向を探るブックビルディング期間を経て14日に正式 な売り出し価格が発表され、西武HDは23日に上場する計画。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真最高経営責任者は 「ジャパンディスプレイほどではないが、上場は成功ディールとはいか ないだろう。上場初日までに神風が吹き、日経平均を1万5000円以上に 上昇させるようなことが起きない限り、初日に公募価格を大きく上回る ことは考えにくい」と語った。日経平均は11日、一時1万4000円を割り 込み、半年ぶりの安値を付けた。

BNPパリバの杉村康晴シニアアナリストは「一般的に鉄道会社は 優良資産として土地や建物を保有していることが多い」という。不動産 市況がいいときに外国人投資家は鉄道会社を「不動産銘柄としての側面 を評価する傾向が強まる」と述べた。国土交通省が先月発表した公示価 格によると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の地価はリーマンショッ ク以降、6年ぶりに上昇に転じた

都心の資産

西武HDの有価証券報告書によると、東京23区に約46万平方メート ル、全国では1億3600万平方メートルを超える土地を保有している。東 京23区の資産をみると私鉄では突出しており、各社の有価証券報告によ ると、西武に次ぐ小田急電鉄が約9万2000平方メートル、3位の東京急 行電鉄は8万9000平方メートルだ。

「不動産事業とホテル・レジャー事業の収益面での構成比が高いの が西武HDの特徴」とバークレイズ証券の姫野良太シニア・アナリスト は言う。バリューサーチ投資顧問の松野実社長は1600円から1800円の株 価を「保有資産や将来的な事業の発展性を精査すれば適正」と述べた。

サーベラスは06年に1000億円を投入して資本参加した。当初は友好 的な関係だったが12年、鉄道の一部路線廃止やプロ野球球団の売却など の検討を求めて対立。昨年3月にサーベラスが1株当たり1400円で株式 公開買い付け(TOB)を実施したが、約3%の追加取得にとどまり、 目標に届かなかった。

関係改善

両者はその後関係が改善し、サーベラスは保有株の売却を撤回した が、9日の有価証券報告書によると、西武HDの「事業計画を支持」し ているとしている。

早稲田大学で企業統治が専門の宮島英昭教授は西武HDとサーベラ スについて「消費者相手のビジネスゆえに評判を下げれば悪影響を及ぼ す。両者ともそれは避けたいはず」という。「成長性や株主リターン、 ガバナンス」を注目していると述べた。

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