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NISA人気が持続、口座開設増え日本株刺激-恒久化課題も

満開の桜が濡れる雨模様にもかかわ らず、東京・日本橋の野村証券本店で3日夜に開かれた少額投資非課税 制度(NISA)のセミナーには、100人以上が参加した。聴衆はうな ずいたり、パンフレットを凝視したりと、さまざまな反応を見せた。

東京駅前で配られていたチラシを受け取り、会場に足を運んだのは 会社員の永浜哲人さん(39)だ。自社で加入した確定拠出年金(日本 版401kプラン)が積み立てたままの状態で、最近のパフォーマンスは マイナス圏に落ち込んでいる上、「預金をしていても年率は良くない。 いずれにしろ、投資について勉強していかないといけない」と言う。

NISAは、個人投資家が年間元本100万円までの株式や投資信託 を新規購入した際、譲渡益や配当が5年間非課税になる制度。株価低迷 への対策として2003年に導入された証券優遇税制が昨年末に終了、こと しから株式などの売却益、配当金への税率が10%から本則の20%に戻っ たタイミングに合わせ、年初から導入された。

滑り出しは「非常に順調」と語るのは、オンライン証券大手の SBI証券の小川裕之経営企画部長だ。現状は株式投資の方が多いが、 「投信で積み立てる顧客が増えてきている」とし、分散・長期投資を意 識した個人参加の兆しを指摘した。同証でのNISA口座の開設数は、 昨年12月末時点の25万口座から3月末には41万6000口座に増えた。

同証がウェブサイトで毎週公表しているNISAの保有残高ランキ ングによれば、4日時点で株式の上位5社は武田薬品工業、キヤノン、 みずほフィナンシャルグループ、イオン、三菱UFJフィナンシャル・ グループ。投信では、「損保J日本興亜-好配当グローバルREITプ レミアム・ファンド」「楽天USリート・トリプルエンジン」、国際投 信投資顧問の「ワールド・リート・オープン」が上位で、好配当、利回 りを意識した銘柄、商品が人気だ。

資産形成制度の先輩抜く

国税庁によると、NISAの利用に必要な専用口座の開設数は昨年 末時点で約475万件。申請件数は、複数の金融機関に申請した重複分を 除き、556万件に及ぶ。野村総合研究所が2月に公表した調査結果で は、NISA口座の開設を金融機関に申し込んだ人数は1月末時点で 約650万人と推計、年内には865万件に達する見込みだ。同総研は、 NISA口座のことしの投資予定額は平均で64万円と分析、年間投資総 額は5兆円を超す可能性もあるとした。

NISAは、個人の自助自立的な資産形成を支援する制度でもあ り、申請件数ベースでは同じような制度の先輩で、01年に始まった日本 版401kの加入者数である約483万人(1月末時点、企業型と個人型)を 上回る。フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は、日本の 社会保障制度が危機的な状況の中、資産形成の議論を一段と真面目に行 う必要があり、「制度の拡大はまだまだできる」と予測。一方で、「制 度の恒久化は最低限必要」などと課題の多さにも触れた。

現行制度では、NISAの非課税期間は最長10年、長期に運用した い個人には使いにくさもある。NISAのモデルとなった英国で1999年 に発足したISA(Individual Savings Account)は、当初10年間の時 限措置だったが、効果検証の結果、08年に恒久化された。英国では対象 となる国民の約4割がISAを利用しており、日本も恒久化の有無が一 層の普及、浸透への鍵を握る要素になる。恒久化の可能性について金融 庁は、円滑に導入され、普及・定着していくかどうかを見極めた上で検 討する姿勢を見せている。

証券会社を通じての投資歴がおよそ5年の会社員、松岡寿巳子さん (37)も野村証のセミナーに参加した1人。周囲でも「NISA、 NISAという流れになってきた」とし、資産運用で「インフレリスク に対応しないといけない」と話す。

個人の変化に高まる期待

東京証券取引所によると、個人投資家は1-3月で日本株を1 兆5000億円買い越し、1月最終週の買越額は6200億円と週間で87年10月 に次ぐ史上2番目の多さだった。優遇税制終了を控える昨年9-12月は 5兆4900億円を売り越しただけに、NISA始動は個人の再参入を促す 一因になった。また、中国やウクライナなど海外情勢に不安材料が増 え、日本株の売買代金シェアでトップの海外投資家が1-3月に1 兆8300億円を売り越しており、個人の買いは相場の緩衝材でもあった。 3月の売買代金シェアは海外勢の66%に対し、個人は23%。

ソシエテ・ジェネラル証券の小原章弘セールス・トレーディング・ グループディレクターは、NISA制度の市場への影響は「海外投資家 の厚みに比べるとまだまだで、相場を押し上げるまでいっていない」と 指摘。これまで、資金を「銀行に預けてた人たちがシフトするのはなか なか難しい」と冷静に見ている。

日本銀行の資金循環統計によれば、13年末時点の家計の金融資産残 高は前年末比6%増の1645兆円。現金・預金は全体の53%を占める874 兆円で、株式・出資金は9.4%の155兆円、投信は4.8%の79兆円に過ぎ ない。そうした中でも、アベノミクス相場以来の株高が寄与し、株式、 投信はそれぞれ前年末から39%、28%増えた。

仏運用会社のコムジェストで、日本株ポートフォリオ・マネジャー を務めるリチャード・ケイ氏も、個人を含む国内投資家の姿勢変化に注 目する。海外投資家が左右する相場では、新興国情勢の不透明感など 「リスクアセット全体から資金を逃げさせる要因は多いが、日本国内で は政策の刺激がある」とし、NISAによる個人資金の流入のほか、公 的年金改革などで「機関投資家の長期にわたる売り越し傾向の変化が期 待されるべき」としている。

毎月NISAセミナーを続けているセゾン投信では、3月末までに 約1万件のNISA口座の申し込みがあり、8000件が開設、ほとんどが 稼働し始めた。中野晴啓社長は、「1人100万円ずつの成長マネーが動 き始めれば、ものすごいインパクトになる。日本の生活者資金の流れを 抜本的に変える」と指摘。アベノミクスでインフレへの意識が出てきた ところでもあり、「タイムリーな政策」と言う。

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