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ベテラン「あまちゃん」観光立国へ一役、成長切り札に地方自治体一歩

三重県の志摩半島南端に位置する人 口約5万5000人の志摩市。若者が離れ、過疎化が進む中、海女の山下真 千代さん(64)は旬の食材を新鮮に提供することで地元の良さをアピー ルしなくてはと思っている。

山下さんは町の食事処で1時間前に採ってきたばかりのアワビを調 理し、観光客に提供している。「旬を迎えた本物は安くておいしいとお 客さんに知ってもらいたい」。3月9日の昼の献立はアワビとアオサの 天丼にワカメのスープ。いずれも早朝に海に潜って見つけた食材だ。

志摩半島はミキモトが真珠の養殖を始める前は海女が真珠を採って いたことで有名で、多くの観光客を引き付けている。人口減少が止まら ない町の財政にとっても重要な産業だ。安倍晋三首相が成長戦略に「観 光立国」を盛り込んだことから、地方銀行や自治体は活性化に向けて前 例のない一歩を踏み出そうとしている。

隣接する和歌山県に本社を置く紀陽銀行経営企画部の橋本信貴部長 代理は「観光はこれまで銀行として手を付けにくかった分野」としなが らも、「和歌山も観光分野に力を入れているが、人口減、県の経済縮小 に抵抗するのは難しい。総力を挙げていかないと」と語る。

紀陽銀行は今年1月、官民ファンドの地域経済活性化支援機構と地 域の観光業を手助けする共同基金を設立した。投資上限は10億円で、投 資期間は8年。現在、出資先を探している。

同行は機構の専門知識やネットワークを活かし、山や滝、100を超 える寺院などの観光資源が豊富な和歌山への観光客の誘致を強化する。 安倍政権は昨年3月、日本航空などの企業再生を支援してきた企業再生 支援機構を地域経済の下支えを目的として現機構に改編した。

成長産業

「観光は成長産業として大きく変化している」言うコモンズ投信株 式会社の伊井哲郎代表取締役は、観光を一つの切り口で銘柄を選んだ初 めてのファンドを年末に立ち上げた。2020年までに成長分野で活躍する 様々な50企業に投資する。

観光産業は成長に向けた可能性を秘めている。日本政府観光局によ ると昨年の訪日外国人数は約1036万人と過去最高を記録したが、シンガ ポールに比べて3割程度少ない。人気の地域は東京、大阪、札幌だ。

日本は20年に開かれる東京五輪の開催も念頭に2030年までに訪日外 国人数を年間3000万人に増やす目標を掲げている。SMBC日興証券の 末沢豪謙金融財政アナリストは「観光は少子高齢化、グローバル化が進 む中で極めて重要だ」と指摘。観光産業がなければ成り立たない地方自 治体が増えていくと見ている。

人口減

各自治体の財政基盤の維持を目的とした過去15年間の「平成の大合 併」で地方の自治体数はほぼ半減した。志摩市は志摩町など5町が合併 して「市」となった04年以降、人口が18%減少した。

厚生労働省によると日本の人口は7年連続で減少し、13年に24 万4000人減と過去最大の減少を記録した。総人口は約1億2700万人だ。

かつお節はじめ水産物の加工品を製造販売する「まるてん」(志摩 市)の天白幸明代表取締役は350年前から受け継がれている伝統的なか つお節の製法を観光客に紹介したいと思っている。

「ビジネスとしてだけでなく、文化に触れてもらうことが一番い い。地域を考えてもらうきっかけにもなる」と、地域からの情報発信に 意欲を示している。

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