世界最大の年金基金、年金積立金管 理運用独立行政法人(GPIF)は国内株式での資産運用で、新株価指 数の採用や「スマートベータ型」アクティブ運用、J-REIT(不動 産投資信託)投資などに踏み切った。7年ぶりに委託先を見直し、ゴー ルドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを採用した。

国内株22.1兆円を抱えるGPIFは4日、インデックス運用を広範 に活用する方針を公表。TOPIXだけだったパッシブ運用でJPX日 経インデックス400など3指数を追加した。アクティブ運用では超過収 益を得られる運用指標に基づき中長期的に効率的な収益確保を目指すス マートベータ型を、従来型とは別枠で開始。新インデックス採用を通じ アクティブ運用、パッシブ運用ともにJ-REITへの投資も始めた。

GPIFの清水時彦調査室長は4日のインタビューで、国内株の運 用委託先の見直しについて「今回はかなりメリハリを付けた。どういう スタンスで株式運用を目指しているかという雰囲気が分かる『質的な変 革』を目指した」と語った。

今回の見直しは、日本経済の活性化を目指す安倍晋三内閣からの運 用改善要求に沿った内容だ。日本銀行の黒田東彦総裁が2%の物価目標 を掲げ、デフレ脱却と将来的な金利上昇が見込まれる中、GPIFは国 内債券の比率引き下げと収益向上を求める圧力に直面。昨年11月には政 府の有識者会議(座長:伊藤隆敏東大大学院教授)が国内債偏重の見直 しや新たなリスク資産の検討などを求める提言をまとめた。

ガバナンスと収益向上

所管官庁である厚生労働省は先月10日の報告書で、5年に1度の公 的年金制度の財政検証に向け、GPIFにあらかじめ国内債券中心の運 用を求めない方針を示した。GPIFは昨年末、物価が上がると元本と 利払いが増える物価連動国債を今月以降に購入すると発表。先月25日に は物価連動債のアクティブファンドを設定した。2月末には海外インフ ラ投資の検討も発表。三谷隆博理事長は2日の衆院厚生労働委員会で、 インフラ投資でそれなりの利回りを取れると答弁した。

アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパンの寺尾和之最 高投資責任者は、GPIFの資産運用は「いろいろと変わってきてい る。少なくとも変えようとしている」と評価。JPX日経400の採用に 関しては、自己資本利益率(ROE)が高い銘柄に投資することで「市 場の力を使ってガバナンス(企業統治)を変えていこうという発想と、 リターンを高める狙いの両方がある」との見方を示した。

GPIFは2007年以来の運用受託機関の見直しで、アクティブ運用 に14ファンド、パッシブ運用には10ファンドを選定。うち16ファンドを 新たに採用した。アクティブ運用の一部ファンドに実績連動報酬を導 入。国内株の運用委託先に12年度支払った手数料率は0.04%だった。

スマートベータ型に3社

アクティブ運用で新たに始めるスマートベータ型の委託先は3社。 ゴールドマンは運用指標に「S&P GIVI Japan」、野村ファ ンド・リサーチ・アンド・テクノロジーは「MSCI Japan S mall」、野村アセットマネジメントは「Nomura RAFI 基準インデックス」をそれぞれ採用する。伝統的なアクティブ運用の委 託先では、日興アセットマネジメントやフィデリティ投信、みずほ投信 投資顧問などが新たに選ばれた。

パッシブ運用ではJPX日経400のほか、「MSCI Japa n」、「Russell Nomura Prime」を新たに採用。 JPX日経400型の運用にはDIAMアセットマネジメント、三井住友 信託銀行、三菱UFJ信託銀行の3社、MSCIジャパンはブラックロ ック・ジャパン、ラッセル野村プライムにはみずほ信託銀行をそれぞれ 委託先に選んだ。

厚生年金と国民年金の積立金128.6兆円を抱えるGPIFの資産構 成比率を定めた基本ポートフォリオは国内債が60%、国内株は12%な ど。昨年末の運用実績は国内債が55.22%と06年度の設立以降で最低と なる一方、国内株は17.22%と07年12月末以来の高水準を記録した。 GPIFが注視する年金特別会計分も含めた実績は国内債が53.4%、国 内株は16.66%。

資産構成比率からの乖離(かいり)許容幅は国内債が上下8%ず つ、国内株は6%など。GPIFは1日公表した平成26年度計画で、乖 離許容幅について「次期中期計画の基本ポートフォリオ見直しに着手す ることから、運用委員会の意見を聴きつつ、弾力的に適用する」と表 明。構成比率と乖離許容幅は据え置いた。

国内株価は3月下旬まで約2カ月にわたって下落。日経400は年初 から先週末まで6.3%下げたが、1780銘柄からなるTOPIXの下落率 は6.6%、日経平均株価は同7.5%だった。アリアンツの寺尾氏は、これ までは「一緒くたに買われていた」銘柄が投資家の取捨選択に直面する と予想。政府もガバナンス(企業統治)や利益率の向上を望んでいるた め、金融市場の発展につながり得ると語った。

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