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動き出すウーマノミクス、主婦には逆風-安倍首相「配偶者控除見直し」

成長戦略の一環として女性の労働力 を積極的に活用する「ウーマノミクス」が動き始める。減少傾向にある 労働力人口維持のため専業主婦を優遇している「所得税配偶者控除」の 見直しを安倍晋三首相が指示した。既婚女性の就労拡大を後押しする一 方で、専業主婦にとっては逆風となる。

1961年に創設された配偶者所得控除は、専業主婦のパートタイムの 給与収入が年間103万円以下の場合、夫の所得税から38万円の控除が受 けられる制度。女性の就労を抑制して共働きに不利な税制だとし、見直 しを求める指摘が出ていた。財務省によると2014年度の対象人数は 約1400万人に上り、年間約6000億円の税収減につながっている。

総務省によると2013年の女性就業者数は前年比47万人増と91年以来 の伸びを示し、過去最多の2701万人となった。専業主婦の割合も4.3% 減の1592万人と最大の減少幅を示した。97年以降は共働き世帯が専業主 婦世帯を上回っており、配偶者所得控除の見直し議論が始まる。

野村証券の木下智夫チーフエコノミストは、アベノミクスで景気が 良くなり人手を要する小売りや介護などで女性の雇用者が増えたとしな がら、その多くが「非正規だった」と述べた。正規雇用への流れをつく るためにも「100万円超のところで税制面で差をつけるのは不公平だ。 改革は方向性としてはあるべき姿だ」と話した。

安倍首相は先月19日、「女性の就労拡大を抑制している税・社会保 障制度の見直しを検討してほしい」と述べ、配偶者控除などの見直しを 指示。民間議員も労働力人口の減少を最小限に食い止めるため、女性の 労働参加を阻害する制度見直しを提唱。政府税制調査会は14日に総会を 開き、中長期的な視点から税制面での議論を開始する。

労働力減

三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは 「夫が外で稼ぎ、妻が家を守るという古来からの伝統が揺らいでいる。 労働力人口減少に伴い、移民や女性に働いてもらわなければならない背 景もある」と安倍首相が控除見直しに踏み切った理由を説明する。

政府は25-44歳の女性就業率を13年の69.5%から20年に73%まで引 き上げる目標を掲げている。昨年6月に閣議決定した日本再興戦略でも 「女性の活躍推進」を示し、その環境整備の一環として「中立的な税 制・社会保障制度の検討」を明記していた。

99年のリポートでウーマノミクスの概念を掲げたゴールドマン・サ ックス証券のチーフ日本株ストラテジスト、キャシー・松井氏は「女性 の労働参加によって家計所得の増加から消費増につながり、GDPを底 上げする」と指摘。その上で、「家にとどまる選択をした家庭で失われ る税控除の恩恵を補って余りある」と主張する。

控除縮小、厳しい

一方で千葉県に住む堀香さん(47)は「控除が縮小されると厳し い」と語る。17歳と15歳の子供がいる堀さんは1日約5時間で週5日働 いている。「教育費もかかるため、もう少し働きたいが、配偶者控除の 限度額を超えると逆に損をするという話を聞くので踏み切れない」と述 べた。現在は年収を103万円以下に抑えるため、休暇で調整している。

アイデム人と仕事研究所の「パートタイマー白書」(2013年)によ ると、企業のパート・アルバイトの74%が主婦で、年収103万円以下の 主婦パートの67%が配偶者控除を意識して就労制限をしている。パート のメリットについて既婚女性の48%が「扶養の範囲内で働ける」と回 答。正規雇用を将来希望する女性も未婚42%に対し既婚は30%と低い。

同研究所の古橋孝美研究員は「育児や家事の負担がある主婦が融通 のきく時間に働くと、だいたい年収100万円を少し上回る程度になり、 企業側のニーズと合致する」と指摘。配偶者控除の見直しは就労意欲の 高い主婦の正規雇用につながる一方で、逆に「ほどほどに働きたい主婦 の就労意欲を抑える働きがあるかも知れない」とみる。

主婦反発に配慮

自民党は昨年の参院選時の政権公約で「社会の基本は自助にあり、 家族の助け合いの役割も正しく評価されなければならない」とし、配偶 者控除の維持を明記している。麻生太郎首相も「夫婦が生活の基本的単 位である点や伝統的な家族観を重視して見直しに慎重な意見もある」と し、実質負担増となる主婦層からの反発に配慮した。

宅森氏は「社会保障、待機児童、高齢者介護などの制度がしっかり していない中、簡単に税金の話ではなく、幅広い視点での国民的な合意 がなければ難しい」と指摘。自民党は民主党時代の児童手当導入に伴い 廃止された年少扶養控除の復活を併せて掲げている。

木下氏は配偶者控除の見直しによって「負担が増すという懸念はか なり大きく出る。タイミングとしては消費増税と同時期にやることは避 けるべきだ。15年度に消費税率を10%まで引き上げた後の16年度以降で なければ国民が受け入れづらい」とみている。

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