「いいね!」日本株に陰り、1-3月最下位-景気、政策懸念

先進国株式市場の中で、昨年のトッ プパフォーマーから1-3月はワーストパフォーマーに転落した日本 株。国内外経済の先行きに不安が生じ、利益確定の対象になりやすかっ た上、歴史的株高の原動力だった海外投資家はアベノミクスの陶酔から 目覚め始めた。日本株再起へ政策当局、企業は実行力を問われている。

ことし前半の横ばいを予想していたDIAMアセットマネジメント の岩間恒シニアポートフォリオマネジャーは、「グローバル景気の回復 シナリオが米国の天気で台無しになり、中国に近く、アジアビジネスの ウエートが大きい影響を受けた」と年初来の日本株低迷を振り返った。 投資家らは、「昨年末には日本株に対し為替の円安などで『いいね!』 と思っていたが、さまざまな要因から『そうでもないね!』に変わっ た」と言う。

TOPIXは2013年に51%高と1999年以来の上昇率を記録した。安 倍政権、日本銀行の政策でデフレ脱却期待が高まり、為替の円安進行に よる景況感、企業業績の改善が評価されたためだ。しかし、1-3月は 先進24カ国でワーストパフォーマーとなり、2番目に悪い香港ハンセン 指数と比べても下落率は突出している。米国を襲った寒波、中国景気の 減速で海外マクロ経済に不透明感が広がり、ウクライナの緊張など地政 学リスクも浮上。投資家のリスク回避で円安の勢いは止まり、消費税率 が上がる4月が迫り、国内景気の先行きも不安視された。

3月4週(24-28日)のTOPIXは週間で3.5%高の1186.52と3 週ぶりに反発したが、5年ぶりの高値となった昨年末に比べ8.9%安い 水準にある。MSCI世界指数の27日までの年初来騰落は0.5%安、米 S&P500種株価指数はほぼ変わらずで、日本株の弱さが際立つ。

「暗黒の木曜日」以来の売り越し

東京証券取引所によると、海外投資家は13年に日本株を前の年に比 べ5.3倍の15兆1196億円買い越し、過去最大の年間買越額を記録した。 この流れがことしに入り一変、3月2週には9753億円売り越し、1987 年10月のブラックマンデー以来の週間売越額を記録。年初から3月3週 までで累計1兆9644億円を売り越している。

SMBC日興キャピタル・マーケッツのストラテジスト、ジョナサ ン・アラム氏(ロンドン在住)は日本株市場が「13年以来、モメンタム (勢い)取引を行う大きなマクロヘッジファンドに乗っ取られている」 と指摘。モメンタム取引は上下両方向に働くため、「悲しい真実は日本 が為替市場の付属物になったことだ」と話した。

ことしの為替市場では、27日までに円が対ドルで3%上昇。昨 年21%下落した円安の反動に加え、中国景気・金融システムへの懸念な どを背景にしたリスク回避の動きも影響を与えている。日本株に対する 海外勢の投資姿勢変化、円安の一服は株高期待の後退につながり、今 月17日には市場全体の売買代金に占める空売り比率が36%と、東証が08 年10月にデータ公表を開始して以来、最高となった。

言うはやすし、行うは難し

「安倍政権は、日本経済に生気を吹き込もうと頑張っている。しか し『言うはやすく、行うは難し』だ」と話すのは、アバディーン・アセ ット・マネジメントのアジア太平洋戦略責任者、ピーター・エルストン 氏だ。1年ほど前に日本株に織り込まれた「高い期待は現実化してな い。貧弱な昨年10-12月国内総生産(GDP)を見れば、明らかだ」と 期待と実態の乖離(かいり)を同氏は指摘する。10-12月の実質GDP は、前期比年率0.7%増と速報値の1%増から下方修正された。

消費税の引き上げを前にした景気の先行き不安も、日本株低迷の一 因だ。みずほ投信投資顧問の青木隆シニアファンドマネジャーは、2月 景気ウオッチャー調査で、先行き判断DIが1月の悪化から回復せず、 「年初からパフォーマンスが一番悪い日本株の下げがこのまま戻らない かもしれない、という不安感を決定的にした」とみる。

4月以降は増税前の駆け込み需要の反動減が表面化し、景気回復を 確認するには時間がかかると青木氏。「もし政策による対応がなけれ ば、4-6月は今と同様のボックス相場」と予想する。

GDPは、増税前の1-3月に4.4%増が予想される半面、消費税 が5%から8%に引き上げられた4-6月は3.5%減へ落ち込む見通 し。消費税を3%から5%に上げた1997年4月時は、GDPは4-6月 に3.9%減と失速。7-9月は1.7%増と一時盛り返したが、金融危機の 影響もあり、その後3四半期にわたりマイナス成長が続いた。

業績上振れ力は随一、4月買い場の見方も

足元はさえない日本株も、企業業績や投資指標面から見たバリュエ ーションの割安感、為替の円安見通しなどを背景に、相場反転の可能性 を指摘する声もある。ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株スト ラテジスト、キャシー・松井氏は「日本は収益予想修正モメンタムの上 方修正を楽しんでいるグローバルで唯一の主要市場だ」とみている。

同証は昨年、アベノミクスの着実な進展などを理由に日本株の目標 値を6度にわたり引き上げた。3月に入り、TOPIXの今後3カ月目 標水準を従来の1350ポイントから1200、6カ月目標を1375から1300へ下 方修正したが、今後12カ月目標は1450を維持。堅調な企業収益にもかか わらず、予想平均PERは過去最低の11.7倍に近づくなどバリュエーシ ョンは低下し、中期的な上昇余地は不変としている。

気にし過ぎ

シティグループ証券の阿部健児ストラテジストも、「日本株のアン ダーパフォームは消費税引き上げ前の不透明感が大きいが、私のような 楽観的な立場からみると、気にし過ぎだ」と言う。消費税増税の影響は 出るものの、「景気後退で14年度の企業業績が減益になる可能性は低 い。賃金の引き上げや政府の財政政策、金融緩和の実施、円安で景気回 復は止まらない」と予想。その上で、「4月の日銀会合で追加緩和が行 われず、一部で失望売りが出たときが買い場」との見方を示した。

JPモルガン・アセット・マネジメントでは、安倍晋三首相がこれ 以上の株価下落を無視できないと予想、日本株を買い増している。香港 在勤のグローバル・マーケット・ストラテジスト、グレース・タム氏は 「改革を実行する証拠を持っているのではなく、単なる希望だが、それ ができなければ、投資家は日本に対する確信を失う。故に、安倍首相は もっと上手に何かを実行しなければならない」と強調した。

一方、三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミス トは昨年末時点で、消費税増税を行う4月前後に日経平均が1万4000円 まで下がると予想し、年初からの下げも想定通りとしている。その宅森 氏も、「企業は在庫を慎重にコントロールしており、鉱工業生産の在庫 率は低下している。4月以降は在庫調整の可能性が低く、景気は大丈 夫」との見立てだ。

年末の日経平均1万8000円の見方も

経済指標の悪化が一時的と分かり、ボーナスの持ち直しも加わる6 -7月にかけての株価上昇を予測。足元は、短期で行き過ぎた円安の調 整局面とみる為替も、年後半は日米金融政策の方向性の違いで1ドル =100円台後半に向かうとし、日経平均の年末値を1万8000円とみる。

31日の東京株市場は米国の個人消費の改善や為替の円弱含みを好感 し、TOPIXの午前終値は先週末比0.6%高の1193.38ポイントとなっ た。きょうの取引をこのままプラスで終了すれば6連騰となり、昨年4 月の8連騰以来の連続記録となる見込み。

--取材協力:竹生悠子.

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