威厳と透明な美しさ持つNYのランドマーク-新生国連ビル

世界平和の実現を希求するならここ を訪れるべきだろう。ニューヨークにある国際連合本部ビルだ。

国連本部ビルは国連安全保障理事会などが開かれる低層の理事会議 場ビルや円形ドームのある総会議場ビルなど複数の構造物から成る。だ が何と言ってもイースト川沿いにそびえ立つ64年前に建築された高層の 事務局棟こそ、マンハッタンのスカイラインを引き立てる建造物だ。ブ ルームバーグ・マーケッツ誌別冊の高級ライフスタイル誌「ブルームバ ーグ・パースーツ」2014年春号が報じた。

北欧の滝のようにきらめく青緑色の窓ガラスは信頼性と新しさを兼 ね備えている。ファサード(建物の正面)は米同時多発テロ後に保護膜 でカバーされる前の状態と見分けがつかないほどながら、爆風に耐えエ ネルギー効率が高く、非常に透明なものに改修された。マンハッタンの 空に屹立(きつりつ)する姿は、まるで超高精細テレビの画像を見てい るかのように鮮やかに輝いている。

新しさと古さを併せ持つ外観は、ほぼ完了した大規模改修の成果の 一部で、老朽化した建物内に優雅な美しさが戻ってきた。改修の予算 は21億ドル(約2130億円)で、国連に加盟する193カ国全てが負担し た。

改修された国連ビルはどこを見てもビンテージカーや申し分のない 服装の人物が登場する時代の映画のような外観だ。職員は安保理で60年 間使われてきた椅子を人工皮革に張り替え、大理石などで作られたパネ ルの水垢をこすり落とし、壁掛けを修復。数十年にわたって蓄積したニ コチンも除去した。事務局棟ロビーの壁際の見事な緑の大理石の灰皿は スチール製プレートで覆われている。ニューヨーク市の法律はここでは 適用されないが、公共施設での禁煙を義務付けるニューヨーク市の規制 に国連が2008年に自主的に対応した。

モダニズム建築

今回のお化粧直しは、老朽化したモダニズム建築のランドマークを 救出するための危険を伴う作業の総仕上げだ。事務局棟のガラス製間仕 切りの撤去を始めた作業員は、ガラスが辛うじてつり下げられている状 況を発見。「ひどい嵐が来ればいつか窓枠は落ち始めていただろう」 と、大改修の責任者、マイケル・アドラースタイン氏は振り返る。アス ベストもあちこちに使われていた。

アドラースタイン氏ら関係者はもっと恐ろしいリスクにも対応を迫 られた。ナイジェリアにある国連ビルで11年に自動車爆弾が爆発した事 件を受け、高速道路の上にカンチレバー構造で張り出している理事会議 場ビルをさらに鋼板で強化するようセキュリティーの専門家に要求され たのだ。会議場は攻撃を受けやすい場所から遠ざけられたため、新たな ラウンジや装飾の余地が生まれた。こうしたスペースの1つはカタール が資金を拠出したもので、ドーハの高級ホテルのロビーに似た雰囲気 だ。その後12年10月にハリケーン「サンディ」がニューヨークに大きな 打撃を与えた際には、設置したばかりのエアコン装置が故障し1億5000 万ドルの被害が出た。

透明性という表現

施設全体を取り壊してゼロから建て直した方が簡単で、恐らく低コ ストだったかもしれない。しかし、あらゆる友好関係の礎として象徴的 意義を持つ組織である国連としては、その建築の歴史的意味は今なお共 感を呼ぶ。

戦後に国連ビルの建設に当たった世界の建築家チームは純粋で余分 な飾りのない透明性という国際的な表現を採用することで一致した。チ ームにはスイス生まれでフランスで活躍した建築家ル・コルビュジエや ニューヨークの建築家ウォーレス・ハリソン、ブラジルのオスカー・ニ ーマイヤーが参加した。

このクールな美しさは本来の威厳あるイメージと衝突したため、当 初は容易には受け入れられなかった。米国が総会議場ビルのために資金 を出すのであれば、ビルにはドームを置かねばならないとバーモント州 選出のウォーレン・オースティン上院議員が横やりを入れたため、ニー マイヤーは屋根に半分埋め込んだような浅い円形ドームを設置した。ア ルダースタイン氏率いる改修チームはその後、銅の被膜を取り、総会議 場ビルの半円ドームに柔らかな光と威厳を取り戻した。

厳かな過去と実用を重視する現在との駆け引きは絶妙な地点で決着 し得る。例えば会議場の演壇は現在、身体に障害のある話者でも国連の 伝統的な威光を醸し出せるよう手が届く高さにすることが求められてい る。たばこと同じ運命をたどった古い慣行もある。発言許可を求める 際、以前は机上のネームプレートを垂直に立てていたが、現在では各国 代表はボタンを押し、それが静かに議長の画面に表示される方法になっ た。このため議長はこれまで以上に巧みに無視する可能性がある。

(デービッドソン氏はニューヨーク誌で建築やクラシック音楽の評 論を執筆しています。この記事の内容は同氏自身の見解です)

原題:Nation Building(抜粋)

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