日銀木内氏:技術的に可能でも妥当ではない-長期国債購入ペース倍増

日本銀行の木内登英審議委員は19日 午後、大津市内で会見し、日銀保有額を年間50兆円増加させるペースで 行っている長期国債の買い入れを100兆円に倍増させることについて、 技術的には可能でも、副作用が効果を上回るして「妥当ではない」との 見方を示した。

木内委員は「われわれが考えなければならないのは、政策効果がど れくらいあるかということだけでなく、政策効果と副作用を差し引きし て見た場合、日本経済にとってプラスかどうかという判断だ」と指摘。 その上で「長期国債の買い入れを2倍にすることが技術的にはできるか もしれない。その結果、追加の効果はあるかもしれないが、追加の効果 を追加の副作用が上回るのであれば、そうした政策は妥当ではない」と 語った。

安倍首相のブレーンである浜田宏一内閣府官房参与(米エール大名 誉教授)は14日、ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、日銀は 長期国債の買い入れペースを100兆円に倍増し、新規に発行された長期 国債を全て買い入れることも可能との見方を示した。

木内委員は浜田氏の指摘について「一時的には金融市場の良好な反 応などを得て、経済・物価にプラスの影響を与えるかもしれないが、物 価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資するというわれ われの最終目標は、もう少し中長期的な概念だ。そこまで踏まえた上 で、効果が副作用を上回る追加策というのは、難しいのではないか」と 述べた。

昨年4月の効果上回ることは非常に困難

木内委員はまた、追加緩和について、昨年4月4日に日銀が導入し た量的・質的金融緩和は「戦力の逐次投入はしないという考えの下に、 最大限積極策を実施した。そういう考え方に基づくと、日銀が示してい る見通しを下振れたから追加緩和をしなければならないということには ならない」と指摘。「そもそも、2年程度で2%の物価目標達成が難し くなったら追加緩和をするという考え方を私はしていない」と述べた。

追加緩和の効果についても、昨年4月の量的・質的金融緩和と比較 して、「どれくらいの規模で実施するかによるが、追加策でこれを上回 る効果を上げるのは非常に難しい」と言明。一方で、「追加策には副作 用を伴う。たとえば長期国債の買い増しであれば、金融市場の機能を損 ない、それを通じて金融機関の財務体質をぜい弱にさせる。それから財 政ファイナンスのリスクを高めてしまう。そして、将来、金融政策を正 常化するときに難しくなる。特に金融市場を安定化しながら円滑な正常 化を図ることがより難しくなる」と述べた。

木内委員は「こういった副作用を考えると、なかなか追加策を正当 化させるインベントはよっぽど大きなショックということなのかなと思 う。私自身は、追加緩和が正当化される条件は非常にハードルが高いの ではないかと思う」と語った。

金融システム不安なら追加緩和あり得る

その一方で、「追加策が必要になるような局面はあり得ると思う。 特に、金融システムに不安が生じる局面では、われわれの今のマネタリ ーベースの目標にこだわらずに、一時的に大量に短期資金を供給するこ とで金融システムを安定化させるという緊急策も、取れる余地はあると 思うし、そういう局面では当然実施すべきだ」と述べた。

木内委員は同日午前に行った講演で、日銀が掲げる物価安定目標の 2%という水準について「少なくとも現時点では、2%という水準は日 本経済の実力をかなり上回っている」と指摘。「将来的には2%という 『物価安定の目標』の水準を再検討する余地もある」と語った。

会見で望ましい物価上昇率について問われ、「現状でどの水準かピ タリと言い当てることはできないが、各種のアンケート調査、あるいは 市場に織り込まれている中長期、たとえば5年、10年のインフレ率の期 待値から、消費増税の影響を取り除くと、おおむね1%か1%強くらい が、いわゆる実力に合った物価安定の状況ではないか」と述べた。

木内委員はその上で「それが妥当でない高過ぎる目標であった場 合、そこにまい進することで、量的・質的金融緩和が非常に長期化して しまったり、あるいは追加措置が取られることになり、副作用が非常に 積み上がってしまう可能性がある」と語った。

さらに円安進むと副作用大きくなる

為替相場については「物価が過去1年上がってきた大きな理由とし ては為替の影響が大きいのではないか。円高が修正されたことで日本経 済にプラスの影響を相応に与えたと思うが、一方でコストアップや生活 費の上昇などマイナス面もある。さらに円安が進むとき、そういった副 作用の方がより大きくなることも可能性としてはある」と述べた。

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