国土交通省が18日発表した公示地価 (2014年1月1日時点)によると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の 地価はリーマンショック発生時以来、6年ぶりに上昇に転じた。デフレ 脱却を目指す安倍晋三政権下の大胆な金融緩和や景気回復で、不動産投 資や住宅取得の需要が高まっていることが背景にある。

三大都市圏の公示地価は住宅地が前年比0.5%上昇(前年0.6%下 落)に対し、商業地は同1.6%上昇(同0.5%下落)と、商業地の上昇が より鮮明になっている。全用途は同0.7%の上昇(同0.6%下落)だっ た。

森トラストの森章社長は三大都市圏の商業地が上昇に転じたことに ついて「上昇傾向は鮮明となった」とのコメントを発表。その理由とし て、「世界の投資家からも、日本の不動産の上昇余地や低金利を評価す る動きが強く、国内だけでなく海外からの資金流入が拡大している」と の見方を示した。

昨年4月の日本銀行の異次元緩和を背景に、日本版不動産投資信託 (Jリート)など不動産投資市場に資金が流入。不動産証券化協会によ ると、13年のJリートによる資産取得額(引渡日ベース)は前年比3倍 弱の2兆2330億円と過去最高を記録、商業地の上昇をけん引した。

また、アベノミクス効果で円安・株高が進み、輸出産業を中心に業 績が上向いた結果、トヨタ関連の会社が拠点を構える愛知県名古屋市 (商業地3.7%)や西三河地域の上昇が目立つ。本社移転や事業スペー ス拡大も活発化し、都心5区のオフィス空室率(三鬼商事調べ)は2 月、7.01%と約5年ぶりの低水準まで改善した。

全国の商業地で最も高額の中央区銀座の山野楽器銀座本店は1平方 メートル当り2960万円(坪換算で約9770万円、9.6%上昇)と、09年以 来の坪1億円に迫っている。

株高と五輪効果

住宅ローンの低金利やローン減税に支えられて、住宅需要も堅調。 不動産経済研究所の調査では、昨年の首都圏のマンション発売戸数も前 年比24%増の5万6500戸と07年以来の高水準だった。

また、株高による資産効果などで高級住宅地の地価は急上昇。全国 一高かったのは千代田区六番町(1平方メートル当たり296万円)だっ た。同研究所によると、販売価格が1億円を超える「億ション」の供給 戸数は昨年、前年のほぼ2倍の1504戸と、バブル末期の91年(1572戸) 以来最多。

昨年9月に2020年五輪の東京開催が決まったのを契機に、開催地周 辺地域は再開発が進むとの期待から地価が押し上げられた。マンション 用地として需要が高まっている中央区勝どき駅周辺は約11%上昇した。

まだバブルではない

地価は90年代のバブル崩壊以降、値下がりが続いていたが、07年か ら08年にかけて外資などの投資マネーの流入でミニバブルが発生。08年 9月のリーマンショックを契機に資金流入が細り、再び地価は下落して いた。

みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリストは、「今後2年程度 は大都市圏を中心に地価は値上がりが続く」と語ったが、市場関係者の 間では今の地価上昇ペースに対する警戒感は出ていない。JPモルガン 証券の穴井宏和アナリストは、「年率で10%くらいの上昇が数年間続い て、はじめてバブルといえるだろう」と指摘した。

野村証券の福島大輔アナリストは、現在の地価上昇について「オフ ィス賃料上昇などファンダメンタルズの改善を反映したものだ」と分析 している。

一方、地方の平均地価(全用途)はマイナス1.7%と22年連続で下 落した。国交省土地鑑定委員会の石橋勲常勤委員は、「大都市圏に人や 経済が集約化する一方、地方は経済衰退で住宅需要の低下は顕在化して いる」と指摘。大都市圏と地方の格差は縮まらないとの見方を示した。

東日本大震災の被災地の地価は回復傾向にあり、住宅の高台移転や 復旧事業で上昇が目立ってきた。宮城県は住宅地は上昇率が2.5%と都 道府県別で1位、商業地は同4位だった。全国の上昇率上位10位までの うち、住宅地は1-8位が宮城県と福島県で9位と10位が東京都中央区 の湾岸エリアだった。

今回の公示地価は全国2万3380の調査地点が対象で、福島県内の17 地点は調査を休止している。

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