日本企業の海外M&Aブームに勢い-リーマン後の忍耐で強い財務力

日本企業による海外企業の買収・合 併(M&A)の勢いが止まらない。今年はサントリーホールディングス による160億ドル(約1兆6700億円)の米ビーム社買収で幕を開け、ほ かにも大型案件が目白押しだ。背景には強くなった企業財務力と好転し た資金調達環境がある。

アジア最大のアパレルチェーンのファーストリテイリング。衣料品 で世界首位を目指し米国展開を加速させる中、米衣料小売りチェーンの Jクルー・グループの買収に向けた協議に入っている。関係者による と、日本たばこ産業(JT)は新興市場で買収先を模索している。

昨年5360億円でタイの大手アユタヤ銀行を買収した三菱UFJフィ ナンシャル・グループ(MUFG)は、北米での買収を検討する一方、 インドネシアやフィリピンでも候補を探っていることを関係者が明らか にしている。

リーマン危機後、日本企業は忍耐経営に徹し、内部留保を積み増し て設備投資を抑制した結果、財務基盤を示す指標が改善。資金調達を取 り巻く環境にも追い風が吹く。超低金利を背景に邦銀はM&Aに対する 貸し出しに積極的だ。2012年に1040億ドル(約10兆7000億円)と過去最 高を記録した日本企業による海外企業の買収総額を上回る条件は整って きている。

戦略コンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーのパートナ ー、奥野慎太郎氏は、少子高齢化に伴う内需成長の鈍化と供給過剰の中 で、市場や多くの企業には潤沢な遊休資本が存在し、中長期的に海外 M&Aを増加させる要因につながると指摘する。奥野氏は、3-5年の スパンで買収を継続的に行いリターンを伸ばす企業は増え、M&Aの可 能性を積極的に追求する企業は概ね増加していくとみている。

財務改善、金利低下

企業財務の健全性を示す負債資本比率は、日経平均株価を構成す る225社の直近決算短信の平均でみると、2000年以来の水準に低下。日 銀の資金循環統計によると、13年9月末現在の企業の内部留保は224兆 円と過去最高となっている。デフレ脱却を目指す安倍晋三政権の下で日 銀が大規模な金融緩和を継続する中、昨年の銀行の貸出金利は過去最低 となり、1月の平均貸出金利も0.887%と、最低値の0.821%に近い水 準。

日本企業の海外企業買収に当たって、メガバンクの証券部門と銀行 部門の連携が奏功するケースもある。サントリーのビーム社買収では、 交渉チームが約2カ月という比較的短い期間で合意に漕ぎつけた。合意 発表時までに同社は、三菱東京UFJ銀行から125億ドル相当のつなぎ 融資を受ける約束を取り付け、サントリー側には三菱東京UFJモルガ ン・スタンレー証券がアドバイザーとして起用されている。

メーンバンクの役割

「メーンバンクはもはや昔ながらの銀行ではない。メーンバンクが グループとしてM&Aに大きく関わっていく状況は今後も続く」と、ド イツ証券の山田能伸アナリストは話す。メガバングはバブル崩壊以降、 不良債権処理を進め財務内容を改善してきており、「企業のクロスボー ダーM&Aに対する貸し出しを伸ばしていく上で、資本の問題は全くな い」と山田氏はみる。

大型買収でビジネスの拡大を図るソフトバンク。昨年、米携帯電話 3位のスプリントを傘下に収め、同4位のTモバイルUSの買収を検討 している。孫正義社長は12日、米PBSのテレビ番組「チャーリー・ロ ーズ」に出演し、Tモバイルの買収が実現すれば、米市場に「大胆な価 格競争」を持ち込むと話した。

小売りや食品、飲料など消費動向に敏感な業界は、少子高齢化と人 口減少による内需の成長鈍化の影響を受けやすい。ニッセイ基礎研究所 の矢嶋康次チーフエコノミストは、4月からの消費税増税で国内消費が 鈍る可能性を指摘し、「日本企業は買収のターゲットを見つけたら今ま で以上に迅速に動く。良いものは早く獲っていこうとする企業経営陣の 考えが助長されている」と述べた。

忍耐を経て

フロンティア・マネジメント常務執行役員の光沢利幸氏は、北米の 有力ブランドは日本の大手小売りや食品、飲料メーカーには魅力的に映 るだろうと話す。日本企業はリーマンショックに懲り忍耐経営を続けて きたが、「業績の回復が出始めてきた今年、企業経営層はより自信をも って、今まで検討してきた海外企業や資産の買収案を実現化させるだろ う」と語る。

震災復興や少子高齢化、年金問題、エネルギー政策と課題が山積す る中、安倍政権は、成長戦略と財政再建の両立で日本復活を目指す。企 業経営では、海外企業の買収や提携を通じてグローバル化を進められる かが発展を左右する。

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